モーニング娘。ファンさえ大コケを予感した”問題作”『LOVEマシーン』は、なぜこれほどのスタンダード曲になったのか
モー娘。ファンが悲観した『LOVEマシーン』
この春、スマホ決済「AEON Pay」のCMが大量に流れた。辻希美が夫の杉浦太陽や娘の希空とともに『LOVEマシーン』(モーニング娘。)を踊るCMだ。
『LOVEマシーン』は音楽ストリーミングサービス「Spotify」のCMにも使われている。「Spotify」のCMにはふたつのバージョンがあり、もうひとつのほうで使われているのは嵐の新曲にしてラストシングル『Five』だ。
どちらも国民的アイドルグループの作品だが『LOVEマシーン』がリリースされたのは1999年。そこから27年が過ぎてもなお、こうして歌い継がれ、聴き継がれるスタンダードになっているのである。
しかし、この歌が世に出たとき、ファンの反応はビミョーだった。アイドルグループのシングルとしてはあまりにも奇抜なこと、また、モーニング娘。自体が当時ジリ貧傾向だったことから、大コケするのではと危惧した者もいて、筆者もそのひとりだ。テレビで初めて披露された際、妻と顔を見合わせて、唖然としながら悲観的な感想を共有したことを覚えている。
ではなぜ、これが大コケどころか大当たりして、スタンダードとなったのか。それにはまず、モーニング娘。の成り立ちから振り返る必要がある。
このグループは97年秋、バラエティー番組『ASAYAN』(テレビ東京系)のオーディション企画から生まれた。まずはインディーズシングルの『愛の種』を5日間で5万枚、手売りで完売させるというノルマを課せられ、これを達成したことでメジャーデビューが決定。翌年1月、デビュー曲の『モーニングコーヒー』がリリースされた。
これはオリコンチャートで6位にとどまったが、5人体制から8人体制となった2作目の『サマーナイトタウン』が4位、3作目の『抱いてHOLD ON ME!』が1位になったことで、この年の『NHK紅白歌合戦』に出場するほどの人気グループに成長する。
ただ、4作目の『Memory 青春の光』は2位、福田明日香が卒業して7人体制となった5作目の『真夏の光線』は3位、6作目の『ふるさと』は5位と、99年に入ってからは退潮ムードに。特に『ふるさと』はある「企画」によって負のイメージを背負うものとなった。同じく『ASAYAN』のオーディション企画から生まれた鈴木あみとのシングル同時発売対決が企画され、鈴木の『BE TOGETHER』は堂々の1位、完敗してしまったからだ。
最初は正統派アイドルだった
そんななか、二度目のメンバー追加オーディションが行われ、14歳の後藤真希が加入。再び8人体制となっての『LOVEマシーン』のリリースが決定する。
『ASAYAN』はその制作過程をモーニング娘。の起死回生が成るかいなやという雰囲気で面白おかしく演出した。それまでにない奇抜な作品とあって、レコーディングもダンスレッスンも混乱し、バラエティー的にはおいしい展開だったのだ。
とまあ『愛の種』の手売りにせよ『ふるさと』でのライバル対決にせよ、この時点までのモーニング娘。は『ASAYAN』という番組ありきの存在だった。そのまま、どこか一発屋的な感じで消えていってもおかしくはなかったはずだ。
ところが『LOVEマシーン』の大ヒットにより、モーニング娘。は国民的アイドルグループへと飛躍。その最大の勝因は、キワモノ的な要素を大胆に取り入れたことだろう。
というのも、それまでのモーニング娘。は番組ありきの企画モノでありつつも、アイドルとしてはかなり正統派だった。最初のブレークをもたらした『サマーナイトタウン』と『抱いてHOLD ON ME!』に関しては『ズルい女』(シャ乱Q)のアイドルバージョンというか、要するにつんく♂節全開なのだが、それ以外はキャンディーズや松田聖子といった70年代から80年代にかけてのアイドルポップスをちょっと新しくした、という趣き。
ただ、いくら新しくしたところで、本質的には旧時代のものだ。90年代にアイドルポップスを歌った広末涼子や内田有紀、ともさかりえが一年くらいで失速したように、何年も長続きするほどのパワーはなかった。
ミリオンヒットの立役者となった意外な人物
そこで、モーニング娘。陣営の誰かが目をつけたのがダンス☆マン。当時、洋楽の名曲を空耳っぽく聴こえる日本語詞でカバーするというユニークな作風で注目されていた才人だ。
『LOVEマシーン』の原型自体はシャ乱Qが売れる前から存在していたようだが、このダンス☆マンを「編曲家」として招き、思う存分サウンド的に遊ばせたことで、とんでもない化学変化が起きたのである。
その化学変化とは、アイドルポップスはもとより、Jポップにもなかったような、奇妙で不思議なダンスミュージックの誕生だ。つんく♂もダンス☆マンのはっちゃけぶりに触発されたのか、それまでになかったような奇妙で不思議な詞をつけた。
そのやたらとポジティブで、ともすればやけっぱち気味に盛り上がろうとしているかのような世界観を、ジリ貧傾向だったモーニング娘。が歌い踊りながら体現する。そのあたりがバブル崩壊から世紀末へと突き進んでいた不景気な日本の空気にもハマり、一種の宴会ソングとしてもウケた、というのがミリオンセラーにまでなった理由なのではないか。
・・・・・・
【つづきを読む】『辻希美のCMで再注目の『LOVEマシーン』…この曲が令和まで続く「一億総ダンサー」時代を生んだといえるワケ』
【つづきを読む】辻希美のCMで再注目の『LOVEマシーン』…この曲が令和まで続く「国民総ダンス」ブームを生んだといえるワケ
