ベネズエラ、イランの次に、アメリカの攻撃対象に選ばれるのは北朝鮮ではないか--こうした憶測が囁かれている中、ジャーナリストの朴承萊氏が“極秘”の外交情報を入手した。これによると、金正恩はトランプ大統領との会談を切望しており、「ハメネイ暗殺」の前日に北朝鮮外交筋がアメリカ大使館に接触していたという。

【画像】トランプ大統領

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ハメネイ死亡の前日に交渉打診

 筆者は数年前から独自のルートを通じ、複数の北朝鮮の消息筋と継続的に接触してきた。今回、朝米間で行われた水面下での交渉内容の一部を入手したが、情報源を危険に晒すことを避けるため詳細なソースを明かせないことをお許し願いたい。

 消息筋によれば、「2月末と4月上旬の2回にわたり、北朝鮮側は秘密裏に第三国の米国大使館関係者と面会し、朝米会談の前提条件を提示するとともに、トランプの意向を確認するよう打診した」という。


金正恩 Ⓒ共同通信社

 北朝鮮側が最初に第三国の米大使館に接触したのは2月27日。ハメネイが亡くなる前日のことだった。まさかその翌日に米国とイスラエルの攻撃でハメネイが死亡するとは想像すらできなかっただろう。

 それにしても、なぜこのタイミングだったのか?

「当初、トランプと習近平国家主席による米中首脳会談は、3月末から4月初めにかけて中国・北京で開催される予定だった。北朝鮮はトランプが北京での米中会談を終えた後、平壌に立ち寄り朝米会談を行うことを望んでいた。これはトランプにとっても好都合だろう、という読みがあった」(同前)

 しかしイランとの戦争が長引く中、米中首脳会談は5月14日、15日に延期された。これを受けて北朝鮮側は「まずは5月の米中首脳会談の直後に、交渉再開後第1回の朝米首脳会談をめざす。それが実現したあかつきには、7〜8月頃に第2回朝米首脳会談を開催したい。開催地としては、日本海に面した大規模開発中の観光地『元山葛麻海岸観光地区』を候補とする」(同前)という作戦に変更したという。

トランプに「親書」を要求

 ここで注目したいのは、北朝鮮側は米国側に対し、朝米会談実現に際して、ある前提条件を提示したことだ。これは先に述べた「核保有国として認めよ」という条件とは別で、消息筋によれば「会談の前に、まずはトランプ大統領から金正恩総書記に親書を送ってほしい」というものだったという。しかも、北朝鮮側は親書の内容まで指定してきた。

「親書の冒頭で『(トランプが)今回は金正恩総書記と個人的な関係として会えると良い』と書いてほしい、と求めた」(同前)

 つまり、お互い国家を代表した立場ではなく、個人として会いたい、というのだ。敵対する国家の首脳同士が会談する際、「個人として会う」という関係が成立するとは思えない。しかし、それでも無理難題を要求した背景には、北朝鮮が置かれた苦しい外交的事情が透けて見える。金正恩は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平、さらにはイランの顔色を窺わざるをえないからだ。

 2022年のウクライナ戦争勃発以来、北朝鮮はロシアへの武器の販売と最前線への兵士の派遣により「北朝鮮史上、最高の輸出利益を生み出している」(別の消息筋)。さらに、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)等で北朝鮮は急速な進歩を遂げているが、これら先端軍事技術はロシアからの支援の賜物だ。米国と急接近することで、ロシアとの関係を悪化させることは避けたい。

※この続きでは、中国やイランなど諸外国と北朝鮮の微妙な関係について解説しています。約7300字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(朴承萊「金正恩『トランプ5月訪朝』極秘交渉」)。

(朴承萊/文藝春秋 2026年6月号)