「先日、自分で作った味噌を食べ切ってしまったので、今は伊東四朗さんが手作りしたお味噌をいただいています」(撮影:浅井佳代子)

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いつも笑顔で、年を重ねるごとに輝きを増している羽田美智子さん。しかし、若い頃は不摂生な生活を送り、不調に悩まされ続けてきました。そんな羽田さんのピンチを救った発酵食品の魅力とは――(撮影:浅井佳代子 構成:内山靖子)

【写真】「味噌作りがとても楽しい」という羽田さん

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<前編よりつづく>

手前味噌は口にも体にも合う!?

発酵食品はどれも大好きですが、イチ押しは味噌ですね。これさえあれば生きていけるというくらい(笑)。キュウリなどの野菜にそのままつけたり、おにぎりに塗って食べたりするのも、美味しくて最高です。

お味噌汁は毎食欠かさず作ります。市販の味噌を使うこともありますが、一番美味しいと感じるのは、自分の手で作った手前味噌。

茹でた大豆をつぶして塩を入れ、手でかきまぜて、冷蔵庫に収まるサイズの樽で保存しています。

自分の手にすみついている常在菌が大豆に移って発酵を促し、一口食べると「ああ、美味しい」って体が隅々まで喜ぶんです。自分の菌が交ざった味噌だから、口に合っているのかもしれません。

私は東京と茨城の実家で2拠点生活を送っているので、実家にいる母はもちろん、兄や甥、姪が遊びに来たときに味噌汁や豚汁をふるまうこともありますが、とても好評です。「うまい!」っておかわりしてくれるのが嬉しいですね。

先日、自分で作った味噌を食べ切ってしまったので、今は伊東四朗さんが手作りしたお味噌をいただいています。

食べるのがもったいなかったので自然と《10年熟成味噌》になっていますが、これがまたビックリするほど美味しいんですよ。伊東さんの味わい深い菌に感謝しながら(笑)、ますます味噌活にいそしんでいるところです。

いい発酵調味料で料理上手に

自分の体と向き合うようになって、思わぬ転機も訪れました。食べるものにこだわりたいという思いから、発酵食品をはじめ全国の《体にいいもの》を探し求めるうちに、生産者のみなさんのたゆまぬ努力や食材・商品のすばらしさに気づかされて。

次第に、生産者と消費者の架け橋になりたい、そして多くの人に健康になってほしいと考えるようになりました。

もう一つ、私の心に引っかかっていたのが、実家が営んでいた「羽田甚(はだじん)商店」のこと。「羽田甚」の屋号は、宮大工をしていた高祖父の名前にちなんだものです。

その名を継いでたばこや食料品を扱う商店を営んでいた5代目の父が、高齢ということもあり、2015年に店を畳むことに。2人の兄が違う職に就いていたので仕方ないこととはいえ、150年以上続いてきた屋号を途絶えさせていいのか、という思いを抱えていました。

それらがちょうど重なったことで、私が先祖代々の屋号を継ぎ、オンラインのセレクトショップ「羽田甚商店」を立ち上げようと決めたのです。

店で扱うのは、自分で各地の生産者のもとを訪ね、自信を持ってお届けできると思えた商品だけ。6代目店主として約7年、なんとか頑張っています。

なかでも醤油や味噌、酢など和食に欠かせない発酵調味料はとくにこだわっていて、自分でも愛用中です。

たとえば、福岡県にある、江戸時代から続くお店の酢。先祖代々受け継がれた木の樽を使い、300年前とまったく同じ製法で作っているんです。自然に合わせたペースで原料をゆっくりと発酵させ、樽から一滴一滴抽出しているのですが、酢特有のツーンとする匂いがなく味わいもまろやかです。きっと、木の樽や工房にすみついている菌たちもいい仕事をしてくれているのでしょう。

私、普段から発酵調味料は少しだけ贅沢をすると決めているんです。体が喜ぶだけでなく、風味や味わいがとにかく抜群ですから。

手間のかかる料理をわざわざ作らなくても、調味料一つで美味しさがワンランクアップして、簡単に《料理上手》になれるんです。味がいいと少量でも満足感があって、食べすぎることもなくなりました。

大人になったら、体にいいものを少しだけ。これからも和食を愛でながら、健やかな生活を丁寧に送っていきたいです。