「あなたなら500万円借りられる、サインして」継母から“借金と自己破産”を迫られ、絶縁を決意…小田切ヒロ(44)が家族と決別した“決定的理由”〉から続く

 数多くの著名人のヘアメイクを手掛け、登録者数165万人超えのYouTubeチャンネル『HIRO BEAUTY CHANNEL』を運営するヘア&メイクアップアーティストの小田切ヒロさん(44)。

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 総フォロワー数390万人(2026年5月時点)を誇り「美のカリスマ」として脚光を浴びる一方、その裏には想像を絶する幼少期があった。

 5歳で両親が離婚。父の再婚後、継母から“洗脳”と虐待を受けて育ったという。自身の過去をYouTubeで公表した動画は、130万回以上再生され大きな反響を呼んだ。なぜ彼は壮絶な過去を語る決断をしたのか。生い立ちに悩む人たちへ、いま伝えたい言葉とは――。(全4回の4回目/1回目から読む)


小田切ヒロさん ©三宅史郎/文藝春秋

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「悲しくなっちゃう」幸せな家族像に対するトラウマ

――小田切さんは美容師から転じてヘア&メイクアップアーティストとして活動するようになったそうですが、どうして美容師を辞めたのでしょうか。

小田切ヒロさん(以下、小田切) ヘアメイクになりたかったというのが1つの目標ではあったんですけれど、美容師をやっていてすごくキツかったのが、家族で来られるお客さんに対して「ウッ」となることがあって。

――それはどういう感情によるものなのでしょう。

小田切 おそらく私のトラウマに由来するのですけれど、なんだか「ゾワッ」としてしまうんです。ご夫婦でいらしたり、お子さんを連れて来られたり、素敵じゃないですか。

 今となっては特に何も思わないのですが、当時は結構きつくて。悲しくなっちゃうというか、やっぱりどこかで「うらやましい」と思っていたかもしれないですね。

――幸せな家族像みたいなものへの抵抗感があったりもしますか。

小田切 すごく円満な家庭の方には、あまり生い立ちの話はしないようにしています。以前、ある女優さんから「親はいつまでも親だよ」と言われたことがあって。その方を含めて4人でご飯を食べていたんですけれど、私以外、全員それに共感していて。3人から「そうだよそうだよ」と攻撃をされているような気持ちになってしまったんです。

「毒親」という言葉を知って、安心した理由

――家族や親というものへの固定観念を感じたというか。

小田切 日本は「家族はこうあるべき」みたいな固定観念が強いのかもしれません。それもしょうがないとは思うんですけれど、「家族には必ず愛があるもの」と決まっちゃってるんだなと。それでちょっとしんどくなったといいますか、拒否反応が起きちゃったんですよね。

――一方で、「毒親」という言葉が出てきたり、家族の問題がクローズアップされるようにもなりました。

小田切 昔はそんな言葉がありませんでしたけれど、初めて「毒親」っていうジャンルを知った時はすごく安心しました。ジャンルがあるということはやっぱり私だけじゃないんだと。私にとっては嫌な言葉ではなくて、救いの言葉みたいな感覚ではありますね。

――ご自身の生い立ちが、今の仕事に与えている影響はあると思いますか。

小田切 私の継母が、とにかく美容とメイクを徹底する人だったんですね。外面がすごく良い人だったので、家の顔と外の顔を完璧に使い分けるために、鎧をまとうかのようにメイクをしているのを幼少期から間近で見ていたことは、今の仕事に大きく影響していると思います。メイクで仮面を作り、人生をコントロールするというのはすごく大きなスキルだと思うんです。

 ヘア&メイクアップアーティストという仕事をする上では、女優さんがどんなに人生のどん底にいてもハッピーに見せなきゃいけない。どんなにひどい表情をしていようが美しく仕上げなければならない、仮面を作らなきゃいけない。そういうメイクのすごさを教えてくれたのは継母かもしれないですね。

「解放されたい気持ちがあった」“毒親育ち”であることを公表した反響

――小田切さんが自身の生い立ちを公表したことで、どんな反響がありましたか。

小田切 最初はYouTubeで、生い立ちについて話した動画の切り抜きがバズったんですよね。それがきっかけで、同じように苦しんでいる若い方やいろいろな方から反応をたくさんいただいたんです。

 その時に思ったのが、私が生い立ちを語ることによって「毒親育ちという境遇なのに成功している人がいるんだったら、私も行けるかも、頑張れるかも」という気持ちになる人もいるんじゃないかと。

――そういう思いで過去のことを発信しているのですね。

小田切 話すことでちょっとマイナスの要素もあるかなとは思っていたんですけれど、自分自身、解放されたいという気持ちがあったんですね。それが結果として誰かの人生の後押しになったのであれば、話してよかったと思っています。

 今は多様性の時代と言っても、それって都市部だけなんですよ。田舎で本当に苦しい思いをしている子どもってたくさんいると思うんです。日本人の9割はまだ「他人と同じことが美徳」という文化や、幸せの形も「こうでなきゃいけない」みたいなフォーマットに縛られているように感じます。

 結婚して、子どもができて、孫の顔が見たくてというのが当たり前で、そこから外れると「外れ者」みたいに思われてしまう。そういう世界に生きていると、何かで成功している人のことを「自分とは違うんだ」と思ってしまうんですね。

トー横キッズの子どもたちを見て、他人事と思えないワケ

――別世界の存在のように思えてしまう。

小田切 そうなんですよ。私自身、二丁目に出入りしていた頃は、やさぐれた人や、道を外している人たちと触れ合って生きてきた過去があるので、トー横キッズの子たちなんかを見ていると他人事に思えないんですね。

 あそこには悪い人たちがいっぱいいて、道を外す場所なのでできる限り行ってほしくない。けれどもああいう場所に行ってしまうということは、導く人がいなかったということなんだと思います。

――道標になるような大人に出会えなかったのかもしれませんよね。

小田切 そういうことですよね。人間ってすごく苦しい時や辛い時に、その状況を美化しようとするんですよ。私自身も「耐えなきゃいけない」と思っていましたし、耐える以外に選択肢がなかったんです。

 だからこそ「耐えている私はえらい」とか「耐えている私はいつか報われる」と思い込んでしまうんですけれど、それは違うと思います。

 耐えることが強さだと思っている方がほとんどだと思いますけれど、私は「逃げるのも強さ」だと思っていて。いくら居心地がよくても、そこから離れることの強さ、勇気というのは絶対に持たなければいけない。

「今どん底にいる人は、光るための準備段階だと思ってほしい」

――小田切さんは逃げたことで、今の自分があると思いますか。

小田切 絶縁って、すごく勇気がいるんですよ。一人で生きていくってものすごく怖いし、いくつになっても人間は未熟ですから、その不安は拭えないと思います。

 でもその一歩が幸せの一歩だと思いますので、今とてもつらい状況にあるのなら、そこから逃げて、自分の力で人生を切り開いていくことをおすすめします。

 厳しいことを言うようですけれども、どういう境遇であろうとも、「こんな傷を負ったからには絶対に負けない」という気持ちを持って、本気で生きようと思っていれば絶対に抜けられると思うんですね。その傷が深ければ深いほど、それは強力なバネになる。

――傷ついて生きてきた人こそ、強く生きていける可能性を秘めているのですね。

小田切 そういう方ほど、おそらく本気で成功できるといいますか、本気で抜け出せる人なんじゃないかなと思います。でも、抜け出すためには導きが必要なんですよね。だからこそ、救いの手を差し伸べる言葉に出会えるかどうかってすごく重要で。

 私がよく言うことなんですけれど、すべてにおいて光るものには、その裏に必ず影があるんです。メイクアップでもそうですが、光を入れると影が出るんですよ。影が強いと光が強くなる。これって本当に人生だなと思っていて。

――ご自身も、暗い過去があったからこそ、光ることができている?

小田切 そうです。だから今どん底にいる人は、暗い影の中にいるかもしれないけれども、それは光るための準備段階だと思ってほしい。

 綺麗事に聞こえるかもしれませんし、今は感じることができないかもしれないけれど、絶対にそうだから。もともと光っているだけの影のない人たちよりも、あなたたちはすごく輝くことができる。今はそのチャンスなんだよ、ということは伝えたいですね。

撮影=三宅史郎/文藝春秋

(吉川 ばんび)