「症状の改善」でやめるのは落とし穴! “抗生物質”の中断に潜む【危険なリスク】
「症状が楽になったから」と抗生物質の服用を途中でやめてしまう方もいらっしゃいますが、これは思わぬリスクを招く可能性があります。本章では、中途半端な服用が感染症の再燃や耐性菌の発生につながる理由と、服用回数・タイミングなど正しい使い方のポイントについて解説します。処方された抗生物質をきちんと飲みきることの意味を改めて確認していただければと思います。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
抗生物質を飲みきる重要性
抗生物質は医師が指定した期間、指定された量を最後まで飲みきることが極めて重要です。症状が改善したからといって自己判断で中止すると、重大な問題を引き起こす可能性があります。
中途半端な服用がもたらすリスク
抗生物質による治療では、症状が改善しても体内にはまだ細菌が残っていることがあります。治療を途中でやめると、これらの残存細菌が再び増殖し、感染症が再燃する危険があります。さらに深刻な問題は、中途半端な抗生物質曝露により耐性菌が生まれる可能性が高まることです。抗生物質に曝露された細菌の中で、たまたま耐性を持つ変異株や、致死的でない濃度の薬剤に曝露された細菌は、耐性を獲得する機会を得ます。処方された期間をきちんと守ることで、細菌を完全に排除し、耐性菌が生まれる機会を減らすことができるのです。症状が消えたからといって自己判断で治療を中止するのは、表面的な改善に過ぎず、根本的な解決にはならないことを理解する必要があります。
正しい服用方法とタイミング
抗生物質は種類によって適切な服用方法が異なります。食前や食後など指定された服用タイミングを守ることで、薬の吸収や効果が最適化されます。また、1日2回や3回など服用回数が指定されている場合は、できるだけ均等な間隔で服用することが大切です。これにより、血中濃度を一定に保ち、細菌を効果的に抑制できます。飲み忘れた場合は、気づいた時点で速やかに服用しますが、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばし、2回分を一度に服用してはいけません。抗生物質によっては、牛乳や乳製品、特定のサプリメントと一緒に服用すると吸収が阻害されるものもあるため、水または白湯で服用することが推奨されます。不明な点があれば、処方した医師や薬剤師に確認しましょう。
まとめ
抗生物質は細菌感染症の治療に不可欠な医薬品ですが、風邪などのウイルス性疾患には効果がなく、不適切な使用は腸内細菌叢を乱し、薬剤耐性菌を生み出す原因となります。処方された抗生物質は指示通りに最後まで飲みきり、残薬を自己判断で使用しないことが重要です。症状や疑問があれば医師や薬剤師に相談し、抗生物質の適正使用を心がけることで、自分自身の健康と将来世代のために有効な治療手段を守ることができます。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診し、専門家の診断を受けることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」
国立感染症研究所「薬剤耐性菌感染症」
日本化学療法学会「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」
