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電気が足りない、足りるのか、これからどうする。世界中でそんな話を聞くようになりました。

AIの計算に膨大な電力が必要となり、データセンターは増え続け、脱炭素のプレッシャーも変わらず重くのしかかります。そりゃあ、昨今の電気代の請求書を見て「うおっ」となるあの感覚も、地球規模で起きているのかもしれませんね。

そんな中、世界では「いやいや、まだ手はあるでしょう」と立ち上がる人々がいます。地球の奥底を掘ったり、雨粒を電気に変えたり、しまいには引退したジェットエンジンを引っ張り出してきたり。なかなかぶっ飛んだ発想を知るだけでも未来がすこし明るくなります。

そこで今回は、ギズモードで最近紹介してきた「次世代の発電・蓄電方式」を6つまとめてご紹介。実証段階のものもありますが、未来の電力地図を塗り替えるかもしれない技術ばかり。さあ、電気式ロマンの旅に出ましょう。

1. 地球の奥底に眠る「8倍の電力」を掘り出す

image: Quaise Energy

まずは地下深くにロマンを求める話から。 MIT発のスタートアップ「Quaise Energy」が挑むのは、最大で地下およそ20キロメートルという、人類がほとんど踏み入れたことのない深さの岩石を活用した発電です。

その深さの場所では温度と圧力がともに極限まで上がり、水が「液体でも気体でもない第三の状態」になるそうで、これが「超臨界水」と呼ばれるもの。普通の熱水の最大5倍のエネルギーを運べると言われています。

そして試算によれば、世界中の超高温岩石のわずか1%を活用できれば最大63テラワット、つまり現在の世界全体の発電量の8倍以上を安定して生み出せるとのこと。じゃあなぜ作られないのかといえば、答えはシンプルで、そんな深さまで掘る方法が確立されていないから。

そこでQuaiseが開発しているのが、高出力ミリ波で岩石を溶かして穴を開けるアプローチ。電子レンジの強化版みたいなビームで岩を溶かし進む、まさにSFのような技術です。天気にも時間にも左右されず、地政学リスクも低い。最後の電力フロンティアは足元に眠っているわけです。

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「まだ誰も使ってないデカい電力」が地球の奥底に眠っている

2. 雨粒1滴を電気に変える「全天候型」太陽光パネル

image: generated at whisk

つづいては、太陽光発電の弱点を逆手に取ったお話。 「雨でも発電できる太陽光パネル」がスペインの研究チームから発表されました。ペロブスカイト太陽電池と摩擦電気ナノ発電機(TENG)を組み合わせたハイブリッド構造です。

TENGは、異なる素材が触れ合うときの摩擦で静電気を起こして発電する装置。下敷きで髪をこすって「パチッ」となる、あの原理を極限まで効率化したもの、と思えばイメージしやすいですかね。

ペロブスカイト太陽電池の表面に厚さ約100ナノメートル(髪の毛の太さの約1000分の1)の保護膜をコーティングしました。この膜に雨粒が当たると1滴あたり最大110ボルトを発生させるといいます。 「雨の日は損」から「雨の日も稼ぐ」へ。100ナノメートルの薄膜が、太陽光発電のルールを書き換えようとしています。

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「雨だから太陽光発電できない」はもう言い訳にならない時代に

3. 地球そのものを「圧力容器」にする原子炉

image: Deep Fission

お次は、原子力発電を「地面にぶっ刺す」という発想。 アメリカのスタートアップ「Deep Fission」が手掛けるのは、地下約1.6キロメートルの掘削孔に小型原子炉を埋め込む発電方法。

ここで大事なのは、なぜ埋めるのかという話です。高さ約9m、直径約0.75m。電柱の見えている部分が全部地中に埋まっているような小ささの加圧水型原子炉(PWR)は、原子炉内のウランの核分裂で発生する熱で水を高圧で沸騰させ、その蒸気でタービンを回します。

この「高圧」を作るために、地上の原子炉では分厚い鋼鉄の圧力容器が必要なのですが、地下1.6キロメートルまで降りると、上に重なる水柱の重さで自然に約160気圧の静水圧が生まれる。これが、PWRの運転に必要な圧力とほぼ一致するというのです。

つまり、巨大で高価な圧力容器も、大規模な格納施設も、地球そのものに置き換わるわけ。さらに周囲の岩盤が放射線を遮る天然の壁にもなります。1基あたり15MWeで、複数基を組み合わせれば最大1.5GWまでスケールできるモジュール式。建設コストは従来型の原子力発電所と比較して70〜80%削減できる可能性があるといい、建設期間は約6カ月とのこと。

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原子力発電を地底にぶっ刺す。これが次世代の発電なの?

4. 地下空洞に空気を詰めた「600MW級バッテリー」

image: Shanghai Electric Equipment

次は発電というより蓄電のお話。風力や太陽光は「天気まかせ」という弱点があるので、発電と同じくらい「貯める技術」が大事になってきます。 中国・江蘇省の淮安市で2026年3月初旬に全面稼働を開始した「淮安塩穴圧縮空気エネルギー貯蔵実証プロジェクト」は、まさに「空気でできたバッテリー」です。

電気が余っているときに空気を圧縮して地下に詰め込み、必要なときに解放してタービンを回す。これが圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)と呼ばれる技術です。

舞台は地下1,150〜1,500m、容積約98万立方メートルの巨大な地下空洞。もともと塩を採掘してできた空洞を、貯蔵タンクとして転用しているのが面白いところ。発電2基の300メガワットユニットで構成され、合計設備容量は600MW、貯蔵容量は2,400MWh。一般家庭の蓄電池(7〜10kWh程度)と比べると、ケタ違いを通り越して別世界の数字です。

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空気を地下空洞に貯めたら超巨大バッテリーになる件

5. 「山がいらない」揚水発電を実現する謎の流体

image: RheEnergise

蓄電の話をもう一つ。じつは世界最大の蓄電システムは「揚水発電」で、世界の長期蓄電の90%以上を占めています。電力が余ったときに水をポンプで山上の貯水池へ汲み上げ、足りないときに勢いよく流してタービンを回すという仕組みです。

ただし弱点が一つ。場所をめちゃくちゃ選ぶのです。山と川と谷が揃わないと作れず、日本でも適地はほぼ出尽くしたといわれます。 そこに「発想の転換」で挑むのが、イギリスのスタートアップ「RheEnergise」。彼らの解は、水の代わりにもっと重い液体を使うこと。同社が開発した「高密度流体(High-Density Fluid)」は、水の2.5倍の密度を持ち、コンクリートブロックを放り込んでも浮いてしまうほどの重さだそう。

密度が高いと、同じ高低差で取り出せるエネルギーが増えます。逆にいえば、必要な高低差が小さくて済む。急峻な山がいらず、緩やかな丘でも揚水発電が成立する可能性が出てきたわけです。

RheEnergiseは2026年1月、パイロットプロジェクトでピーク出力500kWの発電に成功。商業化プロジェクトでは10〜20MWの出力を想定し、2028年末までに初の商用システムを稼働させることを目標にしています。国土の61〜75%が山地・丘陵地という日本にも、追い風になるかもしれません。

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「山がいらない揚水発電」が実現?カギは水の2.5倍の密度を持つ謎の流体

6. AIデータセンターを救う「中古ジェットエンジン」

Image: CREATE STUDIO / Shutterstock

最後は、未来感とは少し違う話。だけどAI時代の電力不足には、こういう即戦力もありがたい。 アメリカ・ミズーリ州の「ProEnergy」が、ボーイング767用に設計されたゼネラル・エレクトリック製のCF6-80C2エンジン、つまり使用済みジェットエンジンのコア部分をデータセンターの発電装置に転用しているそう。

エンジンをコンクリート平板に固定したり、トレーラーに組み込んだりして適切に改造すれば、最大48MWの発電が可能とのこと。アメリカの一般家庭約3万2160世帯分に相当する電力を、引退した飛行機の心臓部から取り出せるわけです。

建設中の電源としてだけでなく、完成後も5〜7年間は主要な電力供給源として使い、その後はバックアップ電源として残す可能性があるとか。 火力発電所や原子力発電所は建てるのに時間がかかります。電力網も追いつかない。なら「飛んでた頃のエンジン」で繋ぎましょう、というプラグマティズム。これはこれで、ある種の発想の転換ですよね。

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AIデータセンターの電力不足に現れた救世主は、使用済みのジェットエンジン?

電力の未来は「一つの大正解」ではない

こうして並べてみると、次世代の発電・蓄電のアプローチって、本当に多種多様。地球の深部、雨粒、重力、空気、重い液体、引退したエンジン……まったく違う方向から、みんな同じ「電力をどうにかする」という問題に挑んでいます。

エネルギー問題には、おそらく「一つの大正解」はないのでしょう。地形も、気候も、産業構造も、国によって違います。だからこそ、選択肢が増えれば増えるほど、僕らの暮らしの未来は明るくなっていく。 僕らの家のコンセントの向こう側でも、こんなにもいろんな「未来」が走っているんですね。

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