消費減税に暗雲 高市首相は「悲願」とまで口にしたのに… 「ほとんど議論が進んでいないのが実情」
【全2回(前編/後編)の前編】
高市早苗首相が“悲願”とまで口にして、先の衆院選で国民に約束した「消費減税」に“暗雲”がかかっている。国会への法案提出を目指すべく始まった超党派による「国民会議」。その議論が低調なのである。そこには一国のトップの悪だくみが見え隠れしていて……。
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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 以前と比較すると「まるで別人」
為政者の発言が場当たり的に変われば、耳を傾ける者はいなくなるだろう。今や世界中に迷惑をかけているかの国の大統領のみならず、われらが高市首相も、首をかしげたくなる言動が相次いでいる。
昨年秋に続き、今年の春の例大祭でも靖国神社への参拝を見合わせた高市氏。中韓へ配慮して現実路線の外交を選択したと評価される一方、首相就任前は「総理として参拝する」と明言していたとして“言行不一致”を批判する声も上がっている。

約束を覆して賛否両論を招いた高市氏にとって、再びトップとして発言の信ぴょう性を問われかねない難題が「消費減税」である。
口を閉ざしたままの高市氏
今月13日、経団連の小堀秀毅副会長は、高市政権が進める消費減税について「代替財源確保が大前提」として慎重な議論を求めた。15日には、日本商工会議所の小林健会頭が「減税より給付付き税額控除が本道」との見解を示している。
財界重鎮の相次ぐ懸念の声に対して、先の衆院選で消費減税を国民に約束した高市氏は口を閉ざしたまま。かつて「消費減税は悲願」とまで訴えていたはずなのに、12日に行われた自民党大会でも消費減税について言及しなかったのだ。
実際、消費減税の実現に向けて超党派で話し合う「国民会議(社会保障国民会議)」では、高市氏の“本気度”を疑う出来事が度々起きているという。
政治部デスクによれば、
「2月26日に開かれた初回会合で、高市氏は消費減税について“物価高に苦しむ中・低所得者の負担を緩和したい”“スピード感をもってやっていきたい”などと語りました。ところが、会合は開始から15分でお開きとなり、列席した片山さつき財務相などの参加者と議論を交わすことはなかった。以降、高市氏が出席する形での国民会議は、一度も開催されていません」
国民会議が始まってから2カ月がたつ。初回会合から2日後、米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まり、3月20日には日米首脳会談が行われた。しかし、難題への対応で多忙を極めていたのを考慮しても、異例の事態といえよう。
ほとんど議論が進まず……
今月初旬に新年度予算が成立、国会では法案審議が本格化。にもかかわらず、高市氏が率先して消費減税を推進する姿は見られない。
先のデスクが続けて話す。
「消費減税を行うためには、国会で税制改正法案を提出後、審議を経て可決される必要があります。そもそも消費減税の開始時期について、高市氏は早ければ今年度内にも実現したいと選挙前の党首討論会で述べた。そこから逆算すると、秋に始まる臨時国会までに、法案を閣議決定して提出しないと間に合わない。にもかかわらず、国民会議では消費減税を行うための財源やスケジュールについて、ほとんど議論が進んでいないのが実情です」
しかも、である。
「国民会議は高市首相が初回のみ参加した『親会議』に、二つの会議体がぶら下がっています。一つは自民党の小野寺五典税調会長ら与野党の政治家が参加する『実務者会議』。もう一つは、学者やエコノミストなどの専門家らで構成された『有識者会議』ですが、どちらの会議でも消費減税を行うための具体策について話し合いは進んでいません」(同)
税調内でも慎重な空気が
さる自民関係者が明かす。
「実務者会議では、自民や日本維新の会に属する議員が中心となって、週1回程度のペースで議論をしていますが、高市さんが参加者と密に連絡を取っている様子はないですね」
自民党内には減税反対派が多く、高市政権で刷新された税調内でも慎重な空気があるという。財政規律を第一とする財務省と考えを同じくする議員が一定数おり、“消費税は社会保障の財源であり、簡単に手を付けるべきではない”という考えを持つ者もいる。
「国民会議に臨む自民の議員は、高市さんから直々に仕事を授かっているので、減税に反対する姿勢は表向きには見せていませんね。会議が終わると、小野寺税調会長らは“減税には時間がかかりそう”“小売業界も準備に時間がいると言っているね”“意外と反対意見も多いんだよな”などと嘆いています」(同)
振り返れば、先の選挙で高市氏率いる自民党は「飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としない」ことについて「検討を加速」すると公約で明言した。具体的な財源やスケジュールは「国民会議」を発足させて議論するとしたのだ。
「野党に責任をかぶせるための会議」と批判が
だが、「国民会議」は開催されるまでに紆余曲折があった。その名が示す通り、この会議は広く国民を代表するため、自民と維新の与党のみならず、野党も含めた超党派で話し合う場とされた。
「実は国民会議の原型は、石破政権下で公明や立憲民主と合意の上で作られた協議体なのです。中・低所得者層向けの物価高対策として『給付付き税額控除』を実現させるのが目的で、この政策は高市政権に受け継がれた。しかし、政策実現に向けては課題が多く、全国民の収入をどう把握するかなど制度設計に何年もの時間が必要とされました。そこで高市氏は実現までのつなぎの物価高対策として、2年間の消費減税を行うとした。そのため国民会議では、給付付き税額控除と消費減税の両方について議論するとしたのです」(前出の自民関係者)
だが、前述した初回会合に野党側から参加したのはチームみらいだけ。国民会議とは名ばかりで、ほぼ政権幹部と与党議員のみのメンバーでスタートしたのだ。
「参加する各党への声かけは、自民の政調会長を務めるコバホークこと小林鷹之氏が行いましたが、高市氏と事前の意思疎通が十分ではなかった。参院の立憲民主党に声をかけていないなど準備不足が露呈して、本来は参加予定だった中道や国民民主など野党側が、初回の国民会議への参加を拒否する事態に発展しました。3月には国民民主、次いで中道、立憲、公明が参加表明をしましたが、超党派で議論するなら国会でやればいいという声や、消費減税ができなかった時、野党に責任をかぶせるための会議だといった批判があります」(同)
後編では、議論が進まない裏側を有識者会議のメンバーに聞く。
「週刊新潮」2026年4月30日号 掲載
