女子アジア杯優勝でも退任――なぜ? ニールセン監督の“ぬるさ”は本当に問題だったのか。指揮官電撃退任の裏側【なでしこジャパン】
ニールセン監督は3月21日に決勝戦が行なわれた女子アジアカップオーストラリア2026で優勝に導き、同23日には佐々木則夫女子委員長と並んで優勝会見を行なった。
なでしこジャパンは日本時間4月12日に第1戦(アメリカ戦)が行なわれるアメリカ遠征を控えるため、当初は同1日の16時に、オンラインでのメンバー発表会見を予定していた。
10日前の優勝会見と同会場で、監督の退任理由を説明した佐々木ダイレクターは「女子ワールドカップでの優勝から逆算したなかで活動を見てきた。どうしても指導が少しぬるいというか甘いというか、もっともっと突き詰めたトレーニングやアプローチを」と求めていたが、「ここからさらに、どういうプラスアルファをなでしこジャパンにもたらしてくれるかと本人(ニールセン監督)と話したが、なかなか女子ワールドカップにそこまでの情熱というか技量といったものが、やはり少し足りないということで(契約満了を)決断した」と明かした。
佐々木ダイレクターは2011年女子W杯優勝に導いた一方、12年ロンドン五輪と15年女子W杯の決勝での敗戦や、16年リオ五輪予選敗退という苦い経験も持つ。それらの知見から、今回の決定に至ったのだろう。
ニールセン監督は、24年12月になでしこジャパンの監督に就任した。初陣の25年、 SheBelieves Cupはアメリカを下して優勝し、船出こそ良好だったが、その後は格下のコロンビアなどに勝ち切れず、ブラジルやスペインなど女子W杯のノックアウトステージで対戦するような相手には、なす術なく敗れる試合が続いた。
3位となったE-1選手権は采配次第で優勝に到達できたはずであるし、女子アジア杯優勝の結果は素晴らしいが、決勝のオーストラリア戦終盤は、日本ゴール前でボールを大きく蹴り出すのがやっとという内容だった。準々決勝では大量リード後も田中美南を89分まで出場させたが、早くベンチに下げていれば、結果的にコンディション不良で欠場した準決勝以降も、起用できたのではと筆者は思う。
キャプテンの長谷川唯が決勝後、「違いを見せるほどオーストラリアを圧倒できたかと言ったら、やっぱりまだできてない」と言えば、長野風花は「(大きく)蹴られて簡単に裏を取られるようでは、もっとレベルが高い相手や、強烈な個がいるチームに簡単にやられると正直思った。もうちょっとゲームコントロールできたはずだし、それらは女子ワールドカップへの課題」と力不足を認めた。
欧州勢とのマッチメイクが難しい昨今の代表活動では、その1試合ごとに大きな収穫がないとコスパが悪い。実際に女子代表は国際親善試合の数日後、同じ国同士でもう1試合を組むほどで、1回の代表活動で「課題を見つけた」だけでは、欧州の成長スピードに追いつけない。課題発見で終わるのでははく、どれだけ修正して収穫を得るかが重要になってきている。
ニールセン監督体制では狩野倫久コーチとリア・ブレイニーコーチが練習を主導し、監督自身が選手の動き方やプレーの細かい指示をする機会はほとんどなかった。これは過去のなでしこジャパン監督と比べると珍しいマネジメントで、それでも結果と内容、そして期待感が右肩上がりになっていけば良かった。しかし女子W杯を見据えると、ニールセン監督でなくてはいけない理由がないと結論づけたのだろう。
佐々木ダイレクターはニールセン監督の居住地・デンマークに赴き、契約更新しない旨を伝えたというが、ニールセン監督を迎えたのも佐々木ダイレクター(当時、女子委員長)だ。「(ニールセン監督就任の)その判断をしたのは私なので、私に責任があるわけで、その責任がある故に、やはりこのままではどうなのかを踏まえたなか、契約満了の決断をした」との言葉には『次の』女子W杯で勝ち抜く覚悟がにじんでいた。
どんな監督の下でもどんな指導の下でも、プレーするのは選手だ。今回の決断が吉と出るか凶と出るかは、女子W杯まで分からないし、監督交代がすべての解決策にはなり得ない。まずできることは、4月のアメリカ遠征を無駄にせず、未来に期待が持てる3試合にすることだ。
その後は、次期監督とともに世界一を目ざす道筋をファンに示してほしい。
取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)
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