意外と知らない「知能検査」のこと…実は規定がなく、バラバラの実態
7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。
言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?
注目の新刊『境界知能の人たち』では、当事者を見てきた第一人者の医師が、全体像をわかりやすく解説する。
(本記事は、古荘純一『境界知能の人たち』の一部を抜粋・編集しています)
バラバラな知能検査の実態
実はIQを計測する知能検査には規定がありません。
ICD-10では、知的障害の分類にパーセンタイルが指標として用いられています。軽度知的障害は、平均水準より2から3標準偏差低い(およそ0・1〜2・3パーセンタイル)ことが指標になっており、IQを用いることが前提です。
これも意外かもしれませんが、知的障害の診断について経験のある医師は多くありません。
小児科では主として中等度以上の知的障害の併発症状(てんかん、脳性麻痺、呼吸器・睡眠障害、アレルギー、心疾患など)に主眼をおいて診療しますが、知的障害については、現在も教育や福祉・保育機関に委ねています。そのため知的障害の患者さんを診察しているというよりは、合併症の対応をしているにすぎません。まして、成人においては、身体症状は内科に引き継がれますが、知的障害の診察の経験のある精神科医も少ないという現状があります。
加えて、知能検査の評価法を学び実践する機会は医学教育ではほとんどなく、私自身も実践経験はあまりありません。療育手帳の判定には知能検査が用いられますが、最も頻用されているのは田中ビネーテストとされています。
この手法では2歳から13歳までは精神年齢と実年齢の比でIQを算定することになっています。一方、療育手帳の統一化にあたっては国際診断基準であるICD-11が推奨した知能検査の方法で偏差知能指数を算定することになります。
わかりやすくいえば、同年齢の子どもと比較しておおよそ70%以下の発達程度を診断するのが現在用いられている知能検査で、統計の外れ値を求めるのが国際スタンダードテストです。
国際テストに合わせるのが理にかなっているように思われますが、先述したように、統計の外れ値を用いてしまうと、最大約2%しか診断できないことになります。
さらに「日本に1700万人いるとされる「境界知能」の人たち…当事者を見てきた医師が明かす「その実態」」では、7人に1人いるとされ、知的障害と平均値のボーダーにある境界知能の実態に迫っていく。
