日本は電力どう賄う?“原発で2割”は実現可能?専門家「相当ハードルが高い。利活用は不可欠だが、容易ではない」

イランをめぐる軍事衝突の影響で上昇すると懸念されている電気料金だ。エネルギー自給率が15.3%と低く、海外から輸入される石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に大きく依存している日本。そんな中、国が進めているのが「原子力の最大限活用」。
去年閣議決定された第7次エネルギー基本計画でこれまで書かれていた原子力の依存度を「可能な限り低減する」という文言を削除し、「原子力など脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」と明記。さらに、2040年度の原子力を現状の割合から2倍以上にあたる「2割程度」にするとしている。
ただ、全国にある原発の33基のうち、15基が再稼働したが、目標を達成するには、残りすべてを再稼働する必要があるとの見方も…。果たして、それは可能なのか。さらに、再生可能エネルギーは「4〜5割」を目標にしているが、こちらも現在から大幅に増やす必要があり、その実現性に疑問の声もあがっている。
エネルギー自給力の低い日本が、安定した電力を供給する為に必要なコトとは何か。『ABEMA Prime』で専門家とともに考えた。
■第7次エネルギー基本計画と「原子力の位置付け」

第7次エネルギー基本計画について、国際大学学⾧、元経産省審議員の橘川武郎氏は「数字を見れば、第6次計画よりも第7次の方が再エネの比率が上がり、原子力は据え置きだ。再エネの主力電源化という方向がはっきり出ている。メディアが言うような『原発回帰』ではなく、原子力は地盤沈下して副電源化しているという数字だ」と指摘した。
続けて、原子力の位置付けが「可能な限り依存度を低減する」から「最大限活用する」に変わったとされる点について、「言葉ではそう言うが、実際の数字はそうなっていない。これが第7次計画のトリックだ」といい、「エネルギー業界は、火力の比率が上がる現実的なシナリオで動いている」とした。
エネルギー経済社会研究所代表の松尾豪氏は「この計画は2050年のカーボンニュートラルを前提に作成されている。カーボンニュートラル電源の主力は明らかに再エネであり、原子力は数字上は事実上変わっていないため、位置付けも大きくは変わっていない」との見解を示した。
■再生可能エネルギーの可能性と課題

再エネの比率を大幅に上げることの現実性について、橘川氏は「可能だと思う。再エネの中の水力と地熱とバイオマスはずっと安定して発電するためバックアップが必要ない。太陽光と風力はバックアップが必要だが、蓄電池や火力で補完する。石炭はアンモニアに、ガスは水素に置き換えるやり方をすれば可能だ」と解説した。
太陽光発電の現状について、自民党の小林史明衆議院議員は、「日本の土地面積あたりの施設率は先進国でも相当高い状況だ。今後は工場や家庭の屋根への設置が重要になる。これらを徹底すれば原発6、7基分に相当する発電容量がある」。
また、太陽光パネルの寿命による廃棄問題については、「リサイクルを義務化する法律が今年の国会で提出される」と明かした。
橘川氏は、農地を利用した「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」や、最新の「ペロブスカイト太陽電池」の可能性に言及しつつ、「農水省との調整が重要だ」と付け加えた。一方で、蓄電池の材料となるレアアース、レアメタルを中国に依存している現状から、「蓄電池だけに頼ることはできない」と警鐘を鳴らした。
■原発2割は「相当ハードルが高い」

原子力発電の比率を2割にする目標について、松尾氏は「相当ハードルが高い。利活用は不可欠だが、実現は容易ではない」。
橘川氏も「2040年に2割を維持するには、33基ほどを稼働させる必要がある。しかし現状では、2030年時点で稼働できるのは多くて21基、15パーセント程度だろう。政府の見通しは厳しい」と分析した。
また、次世代革新炉の建設については、「1基あたり2兆円程度かかる可能性がある。自由化された市場の中で、巨大投資をした企業がシェアを失うリスクがあるため、政府が投資の枠組みを考える必要がある」と指摘した。
■「原発か再エネか」を超えた多様な選択肢
橘川氏は、今後の提案として2つのポイントを挙げた。 1つ目は「市民風車・漁民風車」の導入だ。「ヨーロッパのように住民が株主となることで、経済効果を生み、反対運動ではなく共生の形を作れる。日本はこのやり方を全くやっていない」。
2つ目は「原子力による水素製造だ。太陽光や風力は稼働率が低いため、水の電気分解による水素製造のコストが高くなる。稼働率の高い原子力を使ってカーボンフリー水素を作れば、国産化が可能になり、輸送費もかからない」と提言した。
松尾氏は「再エネか原発かという二者択一ではなく、両方に取り組む必要がある。固定価格買取制度(FIT)の補助金が切れる太陽光設備をどう維持していくかなど、バランスの取れた議論が不可欠だ」とまとめた。
(『ABEMA Prime』より)
