ドミニカ共和国に7回コールド負けを喫した韓国代表【写真:AP/アフロ】

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韓国代表の暗黒時代、日本代表はどう見ていた?

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は13日(日本時間14日)、米フロリダ州マイアミで準々決勝を行い、韓国はドミニカ共和国に0-10の7回コールドで敗れた。2009年以来4大会ぶりの1次ラウンド突破という喜びと、外の世界に飛び出して知った現実。韓国代表は復活への一歩を踏み出したといえるのだろうか?

 今大会の韓国代表は、目標を「1次ラウンド突破」に置いていた。リュ・ジヒョン監督は会見でそう口にし、選手たちは開催地に行くチャーター便に乗ろうと、得点時に両手を広げる“飛行機ポーズ”を編み出してチームを盛り上げた。2勝2敗で並んだ豪州、台湾と「失点率」をめぐる僅差をくぐり抜け、目標は達成された。そして久々に出た外の世界で待っていたのが、ドミニカ共和国戦の完敗だった。

 2000年代の韓国代表は日本と好勝負を繰り広げ、世界での存在感もあった。2008年の北京五輪では準決勝で日本を倒し金メダル。2009年のWBCでは決勝含めて日本と5度も対戦し準優勝。両国の力は拮抗していた。それが2015年のプレミア12準決勝を最後に、韓国は日本に勝てなくなった。引き分けを挟み、現在まで実に11連敗。歩みを合わせるように、国際舞台での存在感も失っていった。

 今回の1次ラウンド突破は、実に2009年以来、17年ぶりだ。ではこの間、韓国代表に何が起こっていたのか。日本側からの言葉を紹介したい。「韓国は野球が雑になったと思う」と言うのは、選手としても首脳陣としても、韓国代表と戦ってきたある元日本代表だ。

「雑になったというか、選手に役割がなくなった感じがしますね。国内の野球が完全にパワーに舵を切ったわけでしょう? 強かった頃はもっと塁に出てかき回す選手がいて、キム・テギュン(元千葉ロッテ)やイ・デホ(元ソフトバンク)らが還す感じだった」

「その後はみんなが振り回すようになって、そうすると全員同じなんですよ。攻略を考えるのも容易になる。韓国プロ野球にはつなぐ選手、動ける選手もいるんだろうけど、代表はそうなっていましたね」

 パワーで圧倒する野球を志向する間に、黄金期を支えたスラッガーは年齢を重ねていった。後に続く打者は簡単に育たず、機動力や守備力で他国との違いを作ることもできなくなっていった。

代表監督が悔やんだ投手力の差「痛感するのは…」

 今大会で見えた明るい兆しは、新世代の打者が国際舞台で経験を積んだことだ。大リーグで活躍するイ・ジョンフ(ジャイアンツ)は言うに及ばず、1番を打つキム・ドヨン(KIA)は俊足強打で、大リーグのスカウトも高く評価する。4番に据えたアン・ヒョンミン(KT)はパワーに加え、選球眼も大きな武器だ。まだ22歳の2人にとってこのWBCは「自分の場所を確認する」大会でもあった。

 それでも、課題は山積みだ。ドミニカ共和国戦後の会見で、リュ・ジヒョン監督も「国際大会に来て痛感するのは、韓国投手の球速が他国に比べて劣っているという事実です。こうした部分を学生野球から一歩ずつ着実に作り上げて、より競争力のある韓国代表になっていくのを願っています」と投手陣の課題を口にした。

 ここ10年、世界の球界で加速した球速アップの波に、韓国は乗り切れていない。2023年のWBCでも、2024年のプレミア12でも、韓国選手に他国の投手をどう感じたか聞くと「みんな普通に150キロを投げますよね……」と驚きの言葉を並べていた。

 ただ、韓国にも遅ればせながら波は届いている。今回の代表で最年少だった19歳のチョン・ウジュ(ハンファ)は、150キロ台半ばの直球が武器。キャンプ中の怪我で辞退した22歳のムン・ドンジュ(ハンファ)は最速162キロを誇る。

 問題はその後の環境にある。韓国では2010年代にプロ野球が8球団から10球団に拡張された。その過程で露わになったのが、選手層の薄さ。韓国に野球部を持つ高校は100校ほどしかない。減っているとはいえ、日本の3768校(2025年)とは大きな差がある。

 先発ローテーションを張れる投手が足らず、各球団は外国人の獲得に血道を上げた。一方で高卒すぐの投手がリリーフで酷使され、気が付けば怪我や不振に陥るという悪循環が続いている。2022年のU-18ワールドカップで、日本相手に163キロの速球を投げたキム・ソヒョンは高卒3年目となる昨年、33セーブの大活躍を見せた。ただ、69試合と登板はかさんだ。シーズン終盤の疲れは明らかで、今回の代表を外れた。

 リュ・ジヒョン監督も、外国人投手がプロ各球団の投手陣で中心となっている現実に触れ「全体的な国際競争力を高めるためには、もっと多くの韓国人選手たちが機会を得て、役割を担わなければならないと考えます」と口にした。

 代表の強化は、日常のリーグと切り離せるものではない。幸い、韓国プロ野球は空前の活況を呈しており、昨季は史上最多の1200万人を動員した。今大会の中心となった選手たちは、北京五輪の金メダルを見て育った“北京キッズ”と呼ばれる世代。今の選手に憧れる子どもたちが順調に伸びていくために、改革をどこまで進められるか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)