(左から)種市篤暉、大勢、高橋宏斗(C)日刊ゲンダイ

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 侍ジャパンに衝撃が走った。

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 1次ラウンドを突破し、米国ラウンドが行われるフロリダに向かったチャーター機に、中継ぎ投手の松本裕樹(ソフトバンク)の姿はなかった。

 チーム関係者によれば、搭乗を前に発熱したという。感染拡大を未然に防ぐため、チーム便とは別にフロリダ入りしたのだが、1次ラウンドの韓国、豪州戦でリリーフとして連投した種市篤暉(ロッテ)も、体調不良になったとの話もある。多数のメジャーリーガーを擁するベネズエラとの準々決勝(日本時間15日午前10時開始)を目前に控え、不安が生じたのは間違いない。

 救援陣といえば今大会、呪われたようにトラブルが続出している。宮崎合宿前に平良海馬(西武)、石井大智(阪神)、松井裕樹(パドレス)が故障で代表を辞退。合宿中には種市が右足首を捻挫し、大勢は右手指を負傷した。

 種市は治療のかいもあって何とか本番に間に合ったが、勝ちパターンの一角を担う右腕が体調不良となればチームにとって大打撃。抑えを任される大勢は、九回から登板した豪州戦で2本塁打を浴びるなど本調子とは言い難い。

 侍ジャパン経験のある球界OBが言う。

「大勢は大会前の中日との壮行試合で右脚をつった。軽傷だったものの右手指の負傷で出遅れたこともあり、中日戦のブルペン時から状態がイマイチ。登板時の投球練習時にも顔をゆがめ、右脚をかばうしぐさをしていました。本来ならトレーナーがストップをかけるように監督、コーチに進言してしかるべきだったんですけど、そのまま投げてあわや故障寸前に。チーム内では、選手のサポート体制が問題視されています」

 それは、チームに付くトレーナーの人数や待遇にも表れている。MLBのトレーナーはチームエリア内へのアクセスパスを4枚与えられた一方、侍ジャパンのトレーナーは2枚のみ。今大会のメジャーリーガーは8人。「2人に1人」のトレーナーが常にそばにいる一方、22人のNPB選手を担当するトレーナーは「11人に1人」しかいないのだ。

 加えて、チーム付とは別に12球団から派遣され、選手のケアにいそしむトレーナーの待遇にも問題がある。

 本紙は先日、MLB傘下のWBCI管轄となった大阪での強化試合以降、12球団から派遣されているトレーナーには球場へのアクセスパスが付与されず、“立ち入り禁止”になっていることを伝えた。

 東京ラウンドはもちろん、米国ラウンドでもパスは付与されず、一般客と同様にスタンドでの観戦を強いられる。

 東京ドームでは12球団のトレーナーだけでなく、用具を担当するミズノのスタッフ、チームドクターといったユニホーム組以外の裏方の大半が、右翼外野席の応援団エリアの真横の座席で双眼鏡片手に選手の状態を見守った。テレビモニターの方が把握しやすいと、球場に行かないスタッフもいたほどだ。

ネットフリックスはパス100枚単位なのに…

 12球団のトレーナーは選手、首脳陣と同じ宿舎への宿泊は許可されたものの、選手の移動バスに同乗できない。試合後の選手を治療するためには宿舎で待機しておかねばならないが、試合を最後までチェックすると宿舎到着が遅れかねず、試合途中で球場を後にするケースも。米国ラウンドでもチームバスには乗れず、素泊まりで1泊20万円はする選手宿舎の宿泊費は派遣元の球団が負担する。

「食事は選手、首脳陣、打撃投手、ブルペン捕手には1日100ドルのミールマネーが配られ、日本食のケータリングも用意されているが、トレーナーはこれに含まれていない。準々決勝は現地時間の午後9時、準決勝、決勝は午後8時開始。深夜に試合が終わり、その後、外食するとなると、異国の地では防犯上のリスクが高い。前回大会時はコンビニのサンドイッチをかじっていたトレーナーもいたそうです」(前出のOB)

 トレーナーの待遇の悪さは今回に限った話ではない。WBCが開催されるたびに問題視されるのだが、一向に解決される気配はない。

「そもそもチーム運営に携わるNPBが、WBCIや東京ラウンドの主催者である読売に待遇改善の交渉をしているとは言い難い」と、複数の関係者は明かす。

 進歩といえば、今回は先発投手の所属球団のトレーナーのみ、球場入りできるようになった。チェコ戦では先発した高橋宏斗(中日)をサポートするべく、中日のトレーナーがチームエリアに入った。とはいえ、チームには第2先発、第3先発、リリーフに加え、野手もいる。これを進歩というにはお粗末だ。

 放送関係者は苦笑いを浮かべてこう言った。

「東京ドームでは、日本での中継権を獲得したネットフリックスが、番組制作を依頼した日本テレビや、スペシャルサポーターの渡辺謙、二宮和也(嵐)やスタッフの分も含め、100枚単位でグラウンドへのアクセスパスを付与されていた。渡辺謙も二宮和也も、12球団のトレーナーが球場に入れないなど、夢にも思っていないでしょうけど……」

 12球団のトレーナーは選手のカラダを最も知る存在。顔色や歩き方まで把握しているからこそ、体調の良し悪しを判断できる。そんなプロフェッショナルが試合前練習、試合中はグラウンドやロッカールームにいない。選手の不安は推して知るべしだ。そうした環境が選手の不振、体調不良を招かないとも限らない。

 NPB関係者は東京ドームにおけるトレーナーの待遇に関して、「パスの枚数に制限があるうえ、選手ファーストでやらせてもらっている以上、内野席チケットの割り当ては選手の家族や知人の招待枠として使わせてもらっている」と説明した。

 が、招待券と健康管理、どちらが選手ファーストなのかは言うまでもない……。

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 そもそもWBCでは、日本が莫大なカネを出し、MLBがその利益の大半を吸い上げるという「ねじれ」が生まれている。いったいどういうことか。そのあまりにひどい米国偏重ルールとは。

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