将棋の「囲碁将棋チャンネル ALSOK杯第75期王将戦七番勝負」第5局が3月8、9の両日に行われ、藤井聡太王将(竜王、名人、王位、棋聖、棋王、23)が挑戦者の永瀬拓矢九段(33)に勝利し、シリーズ成績を2勝3敗とした。カド番をしのぐ執念の白星となったが、本局で勝敗を分けたのは、絶対王者が放った“攻防一体の絶妙手”だった。

【映像】藤井王将の“受けの妙手” 着手の瞬間

 前例のない未知の力戦へと展開した本局。難解な中盤戦で藤井王将が決断したのは、自らの陣地深くに最強の駒である飛車を打ち込む「自陣飛車」だった。

 中継で解説を務めた王将経験者の佐藤康光九段(56)は、この一着を大絶賛。「1日目から斬新な仕掛けが出て、前例の無い新しい戦いとなった。形勢判断が難しく、敗因不明の一局だったと思う」と高度な激戦を振り返りつつ、「その中で藤井王将の受けの名手が出た。受けながら攻めにも役立つという自陣飛車で、見れば見るほど素晴らしい一着だった。そこから差がついたと思う」と舌を巻いた。勝ちへの距離感が極めて難しい局面において、藤井王将の“受けの強さ”がひときわ光った瞬間だった。

 局後、藤井王将自身もこの勝負手について言及。「飛車で受けようかなと思っていた。飛車を手放してしまうが、その後と金(歩が成った駒)の攻めに期待をしてどうかなと。自陣飛車を打って楽しみが増える形かなと思っていた」と語り、単なるしのぎではなく、その後の反撃までをしっかりと見据えた深い構想であったことを明かした。

 極限のプレッシャーの中で飛び出した名手に、見守っていたファンからは「本当によかった」「力戦の考える将棋になれば聡ちゃんが強い!」「防衛に希望が持てたー!!」「これから逆襲が始まるーー」と歓喜の声が殺到した。

 しかし、激闘を制してカド番を一つしのいだ直後であっても、終局後の藤井王将からほとんど笑顔が見られることはなかった。インタビューに応じる際も険しい表情を崩すことはなく、依然としてタイトル喪失の危機に立たされている計り知れない重圧と、次局へ向けた並々ならぬ覚悟を漂わせていた。

 そんな絶対王者のストイックな姿に対し、視聴者からは「勝ってもいつもより顔険しいな」「まだカド番だけど今日は素直に喜ぼ」「聡太の笑顔が見たい」といった、その心中を思いやる声も多く寄せられていた。

受けの絶妙手から鮮やかな逆転勝利を収め、反撃の狼煙を上げた藤井王将。歴史的な大逆転防衛へ向け、ファンの熱気は最高潮に達している。
ABEMA将棋チャンネルより)