Image: gaie 『MERCY/マーシー AI裁判』

個人的にかなり好みなB級映画が、しれっと劇場公開して速攻で消えていきました(さ、寂しい……)。※一部の映画館では上映中

タイトルは『MERCY/マーシー AI裁判』。犯罪が爆増した近未来において、治安維持のためにスピーディーな判決を出せるAI裁判官が導入された世界を描いています。

AIがテーマの作品は嫌いじゃないので、劇場公開中に観てきたのですが、まぁ、話題にならないのも納得なクオリティというか、誰かツッコんであげないと可哀想でしょう、というか、そんな感じの作品だったんです。

犯罪の抑止力として導入されたAI裁判官

犯罪の増加に伴い、治安統制のために導入されたAI裁判官の「マーシー」。判断に至るまでのスピードと情け容赦ない判決のお陰もあって街の治安は急速に良くなった。そんな中、敏腕刑事でAI裁判官の導入にも尽力したレイブンが目を覚ますと、AI裁判官に裁かれる立場になっていた。冤罪を証明するために与えられた時間は90分のみ。膨大な捜査資料と証拠の中から、AIが弾き出した「有罪率」を下げるだけの証拠を見つけ出さなければ、即死刑ーー。

冒頭でも伝えましたが、かなりB級でした。脚本すらAIが深夜テンションで書いたみたいなB級臭がします。さらに言えば、出演している俳優たちも動画生成AIで作られているんじゃないかと疑いたくなるほど、謎のAI感がありました。

こう言うジャンルの近未来SF映画って、2000年代半ばくらいまでに沢山作られてきた気がします。正直、好きです。ヤケクソ感がすごい。そもそも、なんでしょうね。「即死刑」って。法治国家と言えるのでしょうか。とにかくツッコミどころ満載です。

とは言え、先ほど書いた通り、個人的にはこう言う映画は好きなので、本作をネタに色々と妄想やらツッコミやらをしていきたいと思います。

AI裁判官とご対面=有罪前提

Image: gaie 『MERCY/マーシー AI裁判』

まず、マーシー裁判官の前に座らせられていることは有罪ほぼ確定です。周囲には、弁護人も検察官も陪審員もいません。そういうことを全てすっ飛ばした状態でマーシー裁判官の前に座らされています。この時点で、デッドエンドです。

で、味方もいない状態でマーシー裁判官と対峙しないといけないわけですが、マーシー裁判官はAIであるが故に、自分は絶対に正しいとプログラムされています。被告人は、冤罪を証明するために、あらゆるデータにアクセスできるようになりますが、そもそも自分の無実を晴らすためになんのデータを使えばいいのか、誰に助けを求めればいいかなんて、一般人にはわからないでしょう。それを90分でどうにかしろ、なんて無理ゲーです。

そもそも、自分を自分で弁護するのは難易度が高過ぎます。この映画の主人公は、刑事だから同僚に電話して協力を仰ぐことができるし、犯罪データの読み方もわかっているけれど、なんの知識もない人が「いろんなデータにアクセスして有罪を覆してみろ」と言われたところで、どこから手をつけたらいいのかわからないはずです。

よくもまぁ、マーシーの導入にGOサインが出たな、と思いました。というか、よくそういう脚本書いたな……と思いました。

でもAI裁判官だからこその良さもある

Image: gaie 『MERCY/マーシー AI裁判』

でも、映画が進むにつれ「AI裁判官いいじゃん」と思える部分もあったんです。きちんとした資料を提示できれば、素直に受け入れてくれるから。

マーシーは、人間のようにプライドや立場が邪魔して間違いを認められないといったことはありません。冤罪の証明を難しくさせている要素は複数ありますが、被害を訴えた人や捜査官、検察、裁判官の判断や事実認定ミスを認める心理的抵抗も含まれています。でも、マーシーには心理的抵抗はないので、「これが証拠です」と提示して正当性が認められれば即効で軌道修正していました。そこはAIだからこその利点だな、と思いましたね。また、相手がほぼ有罪確定の人物だとしてもフェアに扱ってくれるし、権利を守ってくれていました。本作におけるAI裁判官システムは、そもそもの大前提からしてポンコツですが、感情が入らないという点においては、いい感じに描かれている部分もありました。

現実的な問題提起にはならないけれど、人々の記憶には残る作品かも

テクノロジーの発展に伴い、そのテクノロジーの脆弱性をテーマにした映画というのが必ず作られます。

例えば、インターネットなら『ザ・インターネット』(1995)、人工衛星やGPSなら『エネミー・オブ・アメリカ』(1998)、SNSや監視システムなら『ザ・サークル』(2017)、気候制御なら『ジオストーム』(2017)といった具合に。

Image: gaie 『MERCY/マーシー AI裁判』

『MERCY/マーシー AI裁判』は、傑作とは言い難いし、正直B級ど真ん中な作品だとは思いますが、こう言ったテック系映画のひとつとして、現実社会においてAIが人を判断する場面に出くわすと「『マーシー』みたいな展開じゃん」と言うふうに何度も名前が出てくるんじゃないかと思いました。

気になる方はまだギリギリ上映している映画館でご覧いただくか、もう少し時間が経って配信プラットフォームで見かけた折に、ぜひ鑑賞してみてください。ツッコミどころだらけで楽しいですよ。

Source: MERCY/マーシー AI裁判