井口綾子

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誰にとっても身近なウイルス

 子宮頸がんの一歩手前の「子宮頸部高度異形成」が分かり、昨年、円錐切除術という手術を受けたタレントの井口綾子(28)。自らの病を公にするには、かなりの迷いがあったという。それでもなぜ、公表に踏み切ったのか。(全3回の第3回)

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【写真】「モッツァレラボディ」と言われたモデルの頃、青学時代には「肩出しドレス」姿も。当時から「美少女」…幼少期、小学、高校の井口綾子

 昨年10月、井口は自身のSNSで病気を公表した。その前に、公表するかどうか、激しく葛藤したという。公にすれば、偏見に基づいた誹謗中傷を受ける可能性があったからだ。

 子宮頸がんの原因のひとつとされるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、誰にとっても身近なウイルスであり、多くの人が知らないうちに感染するといわれている。

井口綾子

 感染しても90%以上は自然に排除されるが、約10%の人は持続感染となり、「異形成」というがんの前段階の状態になる。そのごく一部ががんへと進行する。軽度異形成から中等度、高度異形成へと段階的に進むため、がんになるまでには通常5年から20年かかるとされている。

 ごくありふれたウイルスによる病気でありながら、HPVや子宮頸がんにはいまだに強い偏見がつきまとっているのも事実だ。主に性的接触によって感染するという経路へのイメージが、誤解や先入観につながっている面もあるのかもしれない。

「子宮頸がんは聞いたことあるけど、『子宮頸部高度異形成』という言葉は初めて聞いたという人が多いと思います。婦人科系の病気に正しい知識がある方は大丈夫なのですが、病気自体をあまりよくわからない人は、間違った認識や偏見があるケースもあります」

 実際、医師である実兄からも「なぜわざわざ公表したのか」と連絡が来た。公表すれば「不特定多数と関係があるからなる病気だ」「性交渉が原因だからでしょ」といった意見をぶつけられる恐怖があった。

「(兄は)公表することで正しい知識を持っていない人から心無いコメントが届いて、私が傷ついてしまうのではないかと心配してくれたのです」

「まずは検診に行ってほしい」

 それでも井口は、発信する手段を持っているなら発信したほうがいいと思ったという。

「婦人科系の検診はおっくうで後回しにしがちだが、まずは検診に行ってほしい。検診に行かずに過ごしていたら、がん化して手術もできない状況になっている人も身近にいました。悲しい気持ちになる女性が少しでも減ったらうれしいなと思っています」

 公表後、やはりSNSには「自業自得だ」などのコメントが寄せられた。

「伝えたいのは、HPVは、性交渉を経験したことがあれば誰でも感染する可能性があるということなんです。私自身、誠実に生きてきましたが、それでも病気にはなる。そういった正しい知識がないために偏見が生まれ、それが検診へのハードルを上げていると思っています」

 そうした説明をしても誹謗中傷は寄せられる。

「そういうことを言う人はゼロにはならないと思っているので、少しでも多くの人に正しい知識が届けられれば。私が発信を続けることで、いつか心無い言葉を投げる人に対して、周囲が『この人は知識がないんだな、かわいそうだな』と受け流せるような社会になってほしいと思っています」

 一方で、公表によって得られた反響は大きな支えとなった。

 同じ手術を経験し、その後無事に出産した女性からの励ましや、「井口さんの投稿を見て検診に行きました」という報告が届いたのだ。

「『ちょうど今日、中等度と診断されましたが、この投稿を見て勇気をもらえました』というメッセージを頂いたこともあります。私はそういう方に届けたかったので、届けたい人に届いたのはすごくうれしかったですね」

 正しい情報を発信し続けること。それが、自らの経験に基づいた新たな使命だと思っている。

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 第1回【「出産できなくなるかも…」20代で下した手術の決断 将来のリスクを抱えても守りたかった“自分の未来”】では、井口が自身の病気や手術について語っている。

井口綾子(いのくち・あやこ)
1997年、神奈川県出身。タレント、モデル。青山学院大学在学中にミス青山準グランプリを獲得。2018年に「週刊プレイボーイ」でグラビアデビュー。バラエティ番組などで活躍する一方、家業の美容室経営にも携わる。

デイリー新潮編集部