高級スイートにインフルエンサーを招待。 スーパーボウルで仕掛ける「ブランドトリップ戦略」

記事のポイント
100万ドル規模のスイートルーム活用で高効率なクリエイター露出を実現している。
スーパーボウルがブランド主導のIRL型クリエイター戦略へと進化している。
直前契約の増加により契約数と収益が過去最高水準に拡大している。
2026年のスーパーボウルでは、ブランド各社が対面型のアクティベーションをクリエイターにとっての新たな遊び場へと変えた。これにより、才能をより広く世に知らしめると同時に、過去数年よりもコスト効率の高い形でクリエイター参加を拡大する方法を見いだしている。
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2026年は直前の駆け込み契約も相次ぎ、スーパーボウルがクリエイターエコノミーにとって巨大なリアルイベントへと進化したことが裏付けられた。
NFL日程変更で拡大した契約機会とIRL体験の進化
その一因は、今年特有のスケジュールにある。NFLはプロボウルを初めてスーパーボウルの開催時期に近づけ、それによりプロボウルの開催期間が延長した。これにより、クリエイターがブランド契約を得る機会が増加したのである。
「クリエイター向けアクティベーションやIRL(In Real Life/現実世界で)の体験は大きく進化している」と、リワイアード・タレント・マネジメント(Rewired Talent Management)の創業者兼CEOであり、自身もクリエイターであるジェイソン・ターティック氏はDigidayに語った。
100万ドル超のスイートルーム招待戦略で実現する高効率リーチ
2026年、一部のブランドはスーパーボウルのスイートルームを大金で購入し、クリエイターを無料で試合に招待した。Digidayが取材したエージェンシーによれば、購入費用は100万ドル(約1億5000万円)以上かかることもあるようだ。
このようなパートナーシップにより、ブランドは個別の単発契約を結ぶよりもはるかに低コストで、大規模なクリエイターのオーディエンスを獲得できると、Digidayが話を聞いたタレントエージェンシー、リワイアードおよびアンダースコア(Underscore)は述べている。
「インフルエンサーやターゲット市場など多くの変数があるが、スーパーボウルでの単発の個別アクティベーションはミドルクラスのマクロインフルエンサーであれば20万ドル(約3000万円)を超える場合がある」と、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム、レイター(Later)のCEOであるスコット・サットン氏は語った。
ブランドが資金を提供するスイートは「コンテンツスイート」へと変わり得るとターティック氏は言う。
「双方にとってウィンウィンである」。
たとえ直接的な報酬が伴わなくとも、クリエイターにとっては世界最大級のビッグイベントの瞬間に立ち会える。
露出と体験そのものが、めったにない一度きりの機会になると、アンダースコアでビューティー、ファッション、ライフスタイル部門のタレントディレクターを務めるニック・シュレーゲル氏は強調した。
「スーパーボウルは『ブランドトリップ(ブランド主催の招待旅行)』と呼んでもいいだろう」と同氏は語った。
「ブランドトリップ」と化したスーパーボウル体験の価値
ターティック氏によれば、リワイアードのスーパーボウル関連ビジネスは前年比で25%成長した。
試合をめぐって、パリス・バゲット(Paris Baguette)、ブラックレーン(Blacklane)、ペローニ(Peroni)、インスタント・ハイドレーション(Instant Hydration)、キャプテン・モルガン(Captain Morgan)、セブン・サンデーズ(Seven Sundays)、ザ・ノット(The Knot)など、幅広いブランドとクリエイターが協業した。
リワイアードは、カップルインスタグラマーであるチックレット&マレーニ、ライフスタイル系インフルエンサーのザ・デイリー・ネリー、そして「ラブ・アイランド(Love Island)」のスターであるクラーク・キャラウェイとテイラー・ウィリアムズらが滞在し、仕事部屋も用意した。
「こうした大型イベントでは、ますます多くのIRLアクティベーションがみられるようになっている」と、アンダースコア・タレント(Underscore Talent)のパートナー兼スポーツおよびアウトドア・ライフスタイル部門責任者であるエイブ・サントス氏は語る。
「そして多くのIRLアクティベーションが、特定のクリエイターにさらなる露出をもたらしていると思う」。
ライフスタイル・ビューティー勢の本格参入と多層的アクティベーション
たとえばライフスタイルやビューティーブランドは、今やスーパーボウルで存在感を示し、多様なパーティーを開催している。
NFLが視聴者層の多様化を進めるなかで、これによりライフスタイルやビューティー系クリエイターにも参入機会が広がっている。
スポーツおよびライフスタイル系クリエイターのギャビー・ゴンザレス氏はDigidayに対し、自身をスーパーボウルのためにサンフランシスコへ招いた「メインブランド」はアドビ(Adobe)であったと語った。
彼女の任務は、Adobe ExpressアプリとそのスーパーボウルLX(第60回大会)をテーマにしたテンプレートを紹介することだった。
ゴンザレス氏は滞在中の3日間で複数のアクティベーションをこなした。
フォーエバー21(Forever 21)のための「Get Ready With Me(お出かけ準備)」動画と写真撮影、ウーバーイーツ(Uber Eats)体験への参加、そしてパルミジャーノ・レッジャーノ(Parmigiano Reggiano)のイベントのまとめ動画制作などである。
新興クリエイターにも広がる商機
クリエイターのジェイコブ・エイブラムス・コーエン氏は、2025年10月に「予想外」の場所で毎日5kmのランニングを行う動画を開始したことで、インスタグラムのフォロワーを急増させた。
バスタブの中、Vlogの編集中、あるいは茂みの中で走るなどの内容である。ほぼゼロの状態から3カ月で17万人のフォロワーを獲得し、予測市場のカルシ(Kalshi)のブランドアクティベーションに招待された。
カルシはサンフランシスコのピア39に「カルシ・ボウル」(1日を通じて賭けや予測内容が印刷される大型の半透明ボウル)を設置し、その周囲を5km走る企画にコーエン氏を起用した。
加速する「直前契約」と過去最高の収益性
現場では、ブランドが余剰予算の使い道を探したり、キャンセルしたタレントの代替を探したり、参加が決まったクリエイターに自社の衣装を着せる機会を狙ったりと、慌ただしい動きがみられた。
「最後の週になって、ブランドから連絡が相次いだ」とサントス氏は語る。ドッカーズ(Dockers)、アディダス(Adidas)、フォーエバー21などから連絡があった。
コーエン氏にも同様のことが起きた。彼はすでにカルシの5kmランのためにサンフランシスコ入りしていたが、直前になってアディダスのイベントに招かれ、DJディプロ(Diplo)のスタジオを走り回る企画にも参加した。
コーエン氏はDigidayに対し、スーパーボウル週の活動で約1万ドル(約150万円)を稼いだと語った。これはこの分野で活動をはじめたばかりのクリエイターとしての報酬水準である。
モデル兼クリエイターのヴィニー・ハッカーも直前の契約の恩恵を受けたと、同氏をマネジメントするシュレーゲル氏は述べた。
トム・ブラウン(Thom Browne)主催のGQボウル(ファッションイベント)に出場した後、ハッカーが街に来ていることをブランド側が聞きつけたため、2日前にキャッシュ・アップ(Cash App)のクリエイタースイートに招待されたのだ。
「今回がこれまででもっとも収益性の高いスーパーボウルだった。1週間で関わったクリエイター数もブランド契約数も過去最多である。しかも少し増えたレベルではない。通常の2倍、3倍、4倍に達している」とサントス氏は語った。ただし具体的な数値は明かしていない。
[原文:‘A brand trip’: How the creator economy showed up at this year’s Super Bowl]
Alyssa Mercante(翻訳、編集:藏西隆介)
