人類を敵に回す“最強にムカつくセリフ”連発! SNSトレンド1位の話題ドラマで、32歳俳優の演技力が絶賛されるわけ
放送直後にX(旧Twitter)で「#じゃああんたが作ってみろよ」がトレンド1位になるなど、1話から早々に視聴者の心を掴んだ印象だ。中でも、竹内の演技に対して絶賛する声が多い。そこで本作における竹内の演技の魅力を語りたい。
勝男は「顆粒だしは手抜き」「めんつゆで作った肉じゃがは邪道」など、料理に手間暇をかけることが正義だと思っている。さらには、会社の後輩・白崎ルイ(前原瑞樹)から「公園で一緒にどうです?」とランチに誘われた際には、「男2人でピクニックは気持ち悪いだろ」と笑って受け流すなど、若者でありながらもその価値観はかなり古い。
そんな“化石男”が自分自身の価値観を改めていく内容ではあるが、こういった切り口の作品はここ最近珍しくない。にもかかわらず、それでもここまで共感と好感を集めている要因には、勝男を竹内涼真が演じていることが大きい。
◆「全体的におかずが茶色すぎるかな」の破壊力
勝男の言動にはイラッとさせられる。序盤、元恋人の山岸鮎美(夏帆)の手料理を勝男が美味しそうに食べるシーンがあるが、「サバの味噌煮も臭みがないし、栄養のバランスもいいね」と褒める。
大絶賛ではあるが、続けて「でも、強いて言うなら、全体的におかずが茶色すぎるかな」「もうちょっと彩りを入れたほうがいい」と鮎美の“伸びしろ”を評価しているからこその優しいアドバイスまでしてくれる。1話早々に「じゃあ、あんたが作ってみろよ」と声を荒げたくなるような、タイトルを“回収”したくなる発言を繰り返す。
さらには、会社の同僚と居酒屋で飲んでいる時、南川あみな(杏花)が食べている料理に「絶対こっちのほうが美味いから」と言って勝手にレモンをかけていた。一昔前に問題視されていた「料理に勝手にレモンをかける」というギルティを令和7年に躊躇(ちゅうちょ)なく見せるなど、身勝手なムーブが目立つ。
◆イライラするのに目が離せない、脱帽の演技力
これらの言動だけを見れば、怒りがふつふつと湧き上がってきそうではある。ただ、視聴者の神経を逆なでするような動きを幾度となく見せている勝男ではあるが、当然イライラはするものの、“チャンネルを変える”という選択肢が頭をよぎるほど怒り心頭というわけではない。
その理由として、イラッとさせるところはしっかりとイラッとさせながらも、“根は良い人”と思わせることで、必要以上に嫌悪感を抱かせないように竹内が巧みに演じている点が挙げられる。
本作は決して古い価値観を持つ人を批判することを目的としていないように思う。だからこそ、勝男に敵意が向けられないように調整している竹内の演技力には脱帽だ。それゆえにSNSで好意的な声が相次いでいるのだろう。
◆古い価値観の人を否定しない
2024年9月には『西園寺さんは家事をしない』、2025年4月には『対岸の家事』など、TBS系のよる10時枠で放送されたドラマには家事を題材にした作品が多い。ただ、家事や育児の大変さを示してはいるが、それらに無頓着な人を糾弾するような内容ではなく、あくまで諭すような見せ方だった。上から目線ではなかったからこそ、いずれの作品も人気を博していたように思う。
本作でも、料理に取り組み、考え方を改めようと歩み始めた勝男を見た白崎は南川に対して、「海老原さんみたいな人って、多分何言っても一生変わらないんだろうなと思ってたんだけどさ、でもそれって俺の決めつけだったかも」と反省の言葉を口にしていた。今の時代の価値観が“そうなっている”だけであり、常に正解を疑い続けなければいけない姿勢の大切さに気付かされる。
竹内の演技を楽しみながらも、本作が示すメッセージにも注目していきたい。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki

