草磲剛(写真=池村隆司)

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 草磲剛が主演を務める月10ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ)がいよいよスタートする。本作の題材となるのは、これまで光が当てられることの少なかった「遺品整理」。生と死、そして残された人々の人間模様を描き出す。

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 1997年のドラマ初主演作『いいひと。』(カンテレ・フジテレビ系)から約30年、第一線を走り続ける草磲。彼が今、キャリアの集大成として「自身の代表作にしたい」と語る本作に込める思いとは。これまでの歩みを振り返りつつ、死と向き合うことで見えてきた新たな境地について話を聞いた。

●『いいひと。』の頃から全部がつながっている

――1997年の初主演ドラマ『いいひと。』から約30年が経ちました。この長いキャリアを、草磲さんご自身は今どのように振り返りますか?

草磲剛(以下、草磲):ずっと皆さんに支えていただいたという思いと、とにかく運が良かったなと。1997年当時、『いいひと。』の主演が決まったときは、2025年も主演ドラマをやっているなんて思ってもいなかったです。『いいひと。』のときは、「一生に一度の主役」というキャッチコピーだったんですよ。皆さんの応援のおかげで、「何かを掴んだ男だぞ」という気持ちになりました。約30年、演じ続けることができたのは、なかなかの重みがあると感じています。

――当時『いいひと。』を親と一緒に観ていて、今度は自分の子どもと観るという方もいると思います。世代を超えたつながりを感じます。

草磲:そうなりますよね! すごい時間が経ったんだなあ(笑)。すべてがつながっていて、人との縁、役も作品も、自分一人じゃ絶対にたどり着けないところにあるんだなと感じます。『いいひと。』の頃から応援してくださるファンの方もいますし、全部がつながっている。『終幕のロンド』も僕の代表作にしたいし、なるんじゃないかなと思って毎日撮影に臨んでいます。

――『終幕のロンド』は、草磲さんが主演を務めた『デフ・ヴォイス法廷の手話通訳士』(NHK総合)を手掛けた高橋美幸さんが脚本を担当されています。高橋さんが作り出す物語の魅力は、どんなところにあると感じますか?

草磲:ヒューマンドラマの中に、ちょっとミステリーというか、謎解きの要素があるところが魅力だと思います。人間の暗い部分や怖い部分というか、一面性だけではなくて、多面的な部分をうまく短いシーンの中に入れてくるあたりが「高橋マジック」ですよね。

――草磲さんはこれまでも、人間の複雑さや暗さのある役柄を巧みに演じられてきた印象があります。ご自身としては、そういった役を得意とされていますか?

草磲:明るい役も暗い役も、難しさは同じですね。お芝居という世界に正解はないですし、雲をつかむようなもので、100人いたら100通りの感じ方があると思います。だから、そのときに自分が感じたことを表現できたらな、という思いでやっています。泣いてしまうような悲しい心も、豊かな笑いの温かい心も、できるだけその場に存在するような気持ちで演じています。

――『終幕のロンド』で演じる主人公・鳥飼樹は、「大丈夫」が口癖です。この言葉をどう受け止めていますか?

草磲:亡くなった鳥飼の妻がよくその言葉を言って、彼を励ましてくれていたんです。だから、妻から受けた愛情を、今度は自分の子どもや周りの人にも向けて発している。とてもいいセリフだな、いい言葉だなと思います。

――草磲さんご自身も、「大丈夫」というポジティブなマインドをお持ちですか?

草磲:そうですね、僕もポジティブ思考なので、「なんとかなるだろう」みたいなところはあります。そういった面では、役柄と近いかもしれません。

●「死を意識することは、決してネガティブなことではない」

――鳥飼の仕事の「遺品整理」は、これまであまりドラマで描かれてきませんでした。実際にこのテーマに触れてみて、いかがでしたか?

草磲:すごく世の中に必要な仕事だなと思いました。実際に孤独死をされる方もいる中で、遺品整理のプロの方が現場で指導してくださって、脚本もかなりリアリティがあるものになっています。遺品整理の中から見えてくる人間ドラマ、亡くなってから生前の誤解が解けたり、悲しみや人の優しさ、故人が残した最後のメッセージが明らかになったりするところが、とても素敵だなと思います。

――映画『サバカン SABAKAN』のインタビューで「年齢を重ねて今が楽しい」とお話しされていました。今回、死と向き合う作品に出演されて、その心境に変化はありましたか?

草磲:楽しさはさらに更新されていますが、その中で「死」というものについても深く考えるようになりました。年々、死を意識するようになるのは当たり前のことですが、そう意識することで、自分が健康で生活できることへの感謝が毎日増していくんです。だから、遺品整理や死を意識することは、決してネガティブなことではないなと今は思っています。

――プライムタイムのテレビドラマで、ここまで「死」と向き合う作品は珍しいと思います。今、このテーマを扱う意味をどうお考えですか?

草磲:とてもタイムリーだと感じています。僕もこの年になって、たくさん物を持っていますし、遺品整理は誰しもが絶対に関わってくること。どこか目を背けたい部分でもありますが、このドラマが、皆さんに考えてもらえる一つのきっかけになるといいなと思います。10月クールの放送で、最終回が年末にかかるということで、1年の締めくくりとしても観ていただけたら嬉しいです。頑張ります。

(文=石井達也)