「びっくりドンキー」初心者が潜入調査! ハンバーガー店がハンバーグの店に路線変更し、人気になった理由
「ハンバーグレストラン びっくりドンキー」はお好き? ライターのワタクシ、これまでほぼいただいたことがなかった。なので正直なところ、各店舗で異なるユニークな内外観などで子どもたちを惹きつけている、ファミリー向けのレストランだというイメージを持っていた。いや、同店が子どもたちに人気なことは間違い無いのだが、よく考えたら子どもって美味しいものにとっても敏感で正直。なので、中途半端な美味しさだったら、ここまで支持されていないよね。「びっくりドンキー」を運営する『アレフ』のプレスツアーに参加し、愚直なまでに美味しさを追求する姿勢に、まさにびっくりした。一つひとつにこだわりが詰まっている、「ハンバーグレストラン びっくりドンキー」の美味しさの秘密を探った。
「びっくりドンキー」ってこんなお店
「ハンバーグレストラン びっくりドンキー」といえば、ハンバーグとご飯、サラダが木製のお皿にひとつに盛られた「ディッシュ」が思い浮かぶ方も多いだろう。

木のお皿は店頭で購入できる
そもそもは1968(昭和43)年に盛岡市で創業した「ハンバーガーとサラダの店・べる」(1973年に閉店)がルーツ。それがなぜ、現在の形になったのか。「びっくりドンキー」を運営する『アレフ』営業企画室・PR担当の井上龍太郎さんは次のように話す。
「創業当時、ハンバーガーはハレの日の食べ物でした。しかし、1971(昭和46)年に日本で最初の『マクドナルド』が銀座にでき、大流行りしたことで私たちの日常に浸透しました。『マクドナルド』がハンバーガーを80円という価格で売り出したことで、地方の小さな店は太刀打ちできないと判断し、1973(昭和48)年にパンをご飯に置き換えてワンプレートで提供したところ、これが皆様に受け入れられたんですね」

ポテサラパケットディッシュ(シングル・1040円)
1977(昭和52)年には福島市、1980年には札幌市に出店し、1983年には「びっくりドンキー」フランチャイズ事業を開始。2025年現在、島根県と鳥取県の2県を除いた45都道府県で約350店舗を展開している。
この名前には、「楽しいことが次々と起こり、お客様を驚かせたい、ワクワクさせたい」ところから“びっくり”、“ドンキー”とは英語でロバのことだが「優しい眼差しで人々の暮らしに寄り添うロバのように社会に役立ちながら、皆さんに楽しんでもらえるお店にしたい」という願いが込められているという。
安心・安全を追求した「びっくりドンキー」の挑戦とは
1988(昭和63)年には食の安全・安心を追い求め、北海道で農業の研究を始めている。
例えばお米は、全国400軒以上の契約農家が、殺虫剤や殺菌剤を使わず、除草剤は1回のみの使用に制限した「オリジナル米」を作っている。そのお米を精米から14日以内のものをお客さんの状況を見ながらこまめに炊くことで、90分以内のものを提供しているから、炊き立てツヤツヤで美味。
サイドメニューの人気投票で1位になったことのあるという「みそ汁」(190円)は、天然出汁を使用してお店で調理。週替わりの具材3種類がたっぷりと入った贅沢味噌汁だ。

伺った日の「びっくりドンキー小樽運河店」のみそ汁。この日の具材はなめこ、ほうれん草、青ねぎ
メインとなるハンバーグは当然ながら更なるこだわりを発揮。牛肉と豚肉の合い挽き肉を用いるが、牛肉は牧草・干草・サイレージ(牧草ロール)を主食とし、放牧でのびのびと育てられたナチュラルビーフを使っている。
豚もストレスの少ない環境下で抗菌性物質などの薬を極力使わずに飼育した健康な豚の肉を使用。いずれも生育から出荷まで厳しい基準で管理し、安全に配慮して、素材の持ち味を最大限に生かしている。
これらのこだわりの飼育方法については、同社が2006(平成18)年にオープンさせた日本最大級の羊牧場「えこりん村」(北海道恵庭市)で垣間見ることができる。
新千歳空港から車で約20分とアクセスが良く、敷地面積は約150ha、東京ドームで換算すると、なんと32個分もあるのだそう。想像もつかないような広さだ。多い時で約1000頭の羊たちが飼育されているという。敷地内に入ると、いきなり羊たちが牧草を喰む様子があちらこちらで見られて、“もふもふ好き”としてテンションが爆上がりした。
「えこりん村」で放牧されている羊たちは、同店のナチュラルビーフと同じ草地農業という、牧草の生産量と食べる牧草の量のバランスを取りながら放牧地を移動する手法を取り入れて育てられている。羊のふん尿は土壌で微生物によって分解され、栄養分として牧草に還元。「びっくりドンキー」の生ごみリサイクルの一環として、村内で堆肥を生産するなどして持続可能な循環型農業を目指している。

「えこりん村」のかわいい羊たち
同村では、こうした農業を実感できる体験プログラムを多数用意しており興味深い。入場は無料だが、一部のプログラムは有料・予約が必要だ。羊たちは村内のどこかで放牧されているので探してみるのも楽しいしかわいい。
世界一大きなトマトの木
なお、「えこりん村」の見どころのひとつに、2013年に世界一大きなトマトの木としてギネス世界記録に認定された「とまとの森」がある。毎年、ひと粒の種からストレスを排除しながらトマトを水耕栽培しているが、2024年には350日間の栽培期間でこれまでの最高記録26762個も収穫できたのだとか。トマトの生命力の強さと同村が創意工夫を重ねて栽培していることがよくわかる。
「とまとの森」の20代目となる2025年のトマトたちは、種まきから270日目を迎えた8月22日段階で、葉の広がり直径9.7m、茎の太さ(根元)8.8cm、実っているトマト3643個(うち赤いトマト432個)、これまでの収穫個数1万567個、収穫重量1150kgとなっている。2025年は10月13日(月・祝)まで無料で見学可能だ。

「とまとの森」
「とまとの森」で収穫されたこのトマトは、トマトジュースなどさまざまな加工品となっており、村内の売店(ウエルカムセンター)で販売されている。
実際に、「とまとの森」で収穫されたトマトと北海道産トマトをブレンドしたトマトジュースを購入して飲んでみたが、トマトそのものの甘みも感じられる力強い味わい。「えこりん村」を訪れたことがあるという同行者は毎回購入していると話す、スペシャルなトマトジュースだ。
こりん村オンラインショップから購入できるので要チェック!

「えこりん村」のオリジナルトマト商品
ちなみに、のびのびと育った羊たちは、全国各地の高級料理店などに販売、美味しく調理されているのだそう。
また「えこりん村」にはBBQハウスがあり、10月31日(金)まで予約制・大人1人1500円(食材費別)で利用できる。今夏からはニュージーランド産のラム肩ロースを1cmほどに分厚くカットしたジンギスカンも販売している(1袋375g・1680円)。
「とまとの森」のトマトを使ったオリジナルソースで漬け込んであり、分厚くて食べ応え十分なのに柔らかくてペロリといただいてしまった。
えこりん村公式HP:https://www.ecorinvillage.com/

北海道といえばジンギスカンだよね!
「びっくりドンキー」の2つの特徴的なハンバーグ
そんなこだわりのお肉を使った「びっくりドンキー」のハンバーグ。お箸で簡単に切れる柔らかさとジューシーさを伴っている。秘伝の醤油ベースのソースも風味がよく、あと引く味わいだ。これまで食べてこなかった自分に後悔した美味しさだった。種類も豊富なのでいろいろと食べてみたい。
さらに「びっくりドンキー」では2つの特徴的なハンバーグがある。いずれも、なんらかの事情を抱えている場合でも、家族や友人などと食事の時間を共有し、楽しんでほしいという思いから開発された。
動物性原料を使わずに作られた「ソイカリーバーグディッシュ」(1520円)ともうひとつが「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」(860円)とそのまんまのネーミング。
商品本部でグランドメニュー企画担当を務める小澤友裕さんは「どちらもニーズはすごく少ないのが正直なところです。『ソイカリーバークディッシュ』は月間2000食ほど、アレルギー対応のハンバーグは6000食程度しか出ません。それでも我が社にとって、またグランドメニューを担当する者として、このメニューは絶対に必要で大事な商品なのです」と話す。
期間限定商品の場合、月間約50万食出るそうなので、全国に約350店舗あるチェーンとしてこの販売数はいかに少ないかわかる。
小澤さんによると、「ソイカリーバーグディッシュ」は動物性の原料を使わないというところから開発がスタート。
メインの肉の代替品は大豆を使用しているが、ハンバーグとして成形するのは大変。多くの場合、結着剤としてメチルセルロースという食品添加物を使うそうだが、こうした化学製品の使用を避けるため、同社では、こんにゃく成分でできたマンナンを使っている。
「砂糖を精製する際の脱色剤として、骨炭を使っていることが多いのです。そのため、原材料の製造工程で使用される加工助剤まで調査しています」(小澤さん)
ただし、店舗では多くのお肉を使ったメニューを取り扱っているので、混入の可能性が生じるため、ヴィーガンとは謳っていない。

「ソイカリーバーグディッシュ」
「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」について小澤さんは、
「アレルギー対応のハンバーグはさまざまな会社で開発していますが、アレルゲン28品目を使用しないなど、数を競うケースが多いのです。私たちは、乳・小麦・卵の3品を使用しないと絞り込むことで、粗利率も気にせずにしっかりとした原材料を使いこだわってとにかく美味しいハンバーグを作ろうと決めました」と話す。
小澤さんが店舗スタッフとして働いていた時に、グループ客の中で一人だけお弁当を持ち込みしている小1くらいの男の子がいたことが開発の契機になったと教えてくれた。
「とても楽しそうにお弁当を召し上がられていましたが、彼はその世界しか知らないわけです。ハンバーグも食べたことはないでしょう。
ですから、みんなと同じようなディッシュで、アレルギーの人でも食べられるハンバーグを作ることで彼がもっと楽しめる世界や可能性を広げることで、『びっくりドンキー』への期待値を上げられるのではと考えました」

「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」
こだわりは使用する肉の品質を下げないようにして、美味しさを保つこと。
肉の細胞をなるべく壊さない解凍方法を工場に導入し、普通のハンバーグと比べても遜色ない美味しさに仕立てている。
つなぎとして、普通のハンバーグではパン粉を使うが、「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」では米粉パンを作りパン粉にしているのだとか。
ミックススパイスもアレルギー対応のものを作り、ハンバーグのソースに使う醤油ももちろん小麦不使用というように、中間原材料も徹底している。
実はこの「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」、2017(平成29)年4月に導入したのだが、発売5日後に誤提供によるアレルギー事故が発生し、販売停止になったという経験を持つ商品。
誤提供を防ぐためにどうしたらいいかを考え、ランチョンマットを作る、オーダー用紙をクリップに挟んでわかりやすくするだけでなく、オーダーが入ったことをキッチンに伝えることを徹底し、安全に提供できるオペレーションを確立し、5ヶ月後に再販売をした。

「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」の誤提供を防ぐためのランチョンマット
みんなに美味しく楽しんでほしいと願う、「びっくりドンキー」の挑戦は続いている。
今年の夏休み、どこにも連れて行ってあげられなかった甥っ子は卵のアレルギーがあるし、私もゆるりとグルテンフリーに取り組んでいきたいと考えているので、新学期が始まったら一緒に行ってみたいと思う。
※地域、店舗によって価格が異なり、一部店舗では取扱いのない商品があります。

スタッフさんのエプロンや配膳ロボットに現れている数式、何が書かれているか解けるかな?
文・写真/市村幸妙
いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。
【画像】利益ではなく美味しさを追求したアレルギー対応ハンバーグ!ジューシーさが伝わってくる「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」(15枚)
