Renault Group

写真拡大

それはアルピーヌ・エンデュランスのWEC活動の舞台裏を、まさしく覗くような経験だった。今週末に控えたWEC第7戦富士6時間を前に、来日したアルピーヌ・レーシングのディレクターであるブリュノ・ファマン氏と、チーム・シグナテック代表としてアルピーヌのエンデュランス部門を率いるフィリップ・シノー氏が、東京・日本橋のフランス商工会議所で、アルピーヌ・ブランドとWEC活動についてプレゼンテーションを行った。対象は、ルノー・グループ同様に日本でもビジネスを行うフランス企業の幹部や、アルピーヌの日本でのパートナーだ。商工会議所のスタッフを含めても、総勢20名ほどの小ぢんまりとした手作り感あふれる会だった。

【画像】WEC第7戦富士6時間を前に、アルピーヌ・レーシングのチーム関係者が登壇(写真6点)

プレゼンテーションが始まる前に、シノー氏と雑談を交わした。何でも数時間前に羽田空港に降り立ったばかりで、時差ボケは大丈夫ですかと尋ねると、いつものことだから慣れっこで、それに今晩は喋るのはブリュノ(・ファマン)に任せているから、と笑う。日本以外にも世界中を転戦する先々で、本格的なレーススケジュールに入る前に、現地のフランス商工会議所を通じて同じフランス企業や地元の潜在的なパートナー企業に、スポンサーや協賛、支持を募るためにアルピーヌ・ブランドやレース活動について説明するのは、欠かせないミッションのひとつなのだそうだ。無論、アルピーヌ・ジャポンの日本市場を統括する、アジア太平洋地域と中東のリージョナル・ディレクター、ポンタス・ヘグストローム氏も同席し、司会進行を務めた。

そのプレゼン内容とは、自動車の専門メディア雑誌を読んでいる人なら、お馴染みのものだ。アルピーヌが現在、F1と耐久レースというモータースポーツの世界選手権のトップカテゴリー×2を戦っており、モトGPのチームスポンサーでもあること。レース活動は1960〜70年代から続く伝統で、WRCラリーでも初代タイトルを制した歴史あるブランドであること。そして今も軽さを武器に、市販ラインナップはドリームガレージの名の下で拡張が進んでいること。A110に加えて欧州ではA290が発売され、やがてA390がデリバリー予定で、スポーツカーのみならず実用的なモデルを拡充していること。BEVに切り替わる今後、日本と東南アジア、オセアニアといったアジア太平洋地域と中東が、成長市場として見込まれること。

今のところA110のみが販売されている状況にも関わらず、日本は2025年前半の時点でフランスとドイツに次ぐ世界3位で、EU圏外ではもっとも比重の高い市場であり、2シーターのクーペ・スポーツカーではポルシェ・ケイマンに次ぐシェアを占めていること。さらにWECは、ル・マン24時間が基軸にして頂点といえるシリーズで、フランスのスポーツや文化を世界で代表するイベントでもあり、来年からはマクラーレンやフォード、ヒョンデが参戦してさらに競争のレベルが上がること。そして現在、ACOによるレギュレーションはバイオフューエルや水素などゼロエミッション技術の発展を担っており、水素エンジンのプロトタイプたるアルペングローがスパとル・マンでデモ走行を披露し、アルピーヌがこの技術革新に本気で取り組んでいること、などである。

とはいえ同席するのはフランス人が大多数とはいえ、自動車業界に忖度のない厳しい質問が相次いだ。「モトGPでマシンをコンプリートで造っている訳でもなければ、どんな役割なのか?」とか、「バッテリーEVに移行するのに、軽さを特徴に掲げるのは矛盾していないか?」とか「スポーツカーだった従来モデルと比べて、A390のデザインがアルピーヌらしく見えないが、DNAはどこにあるのか?」といったものだ。