子どもに「半導体ってなに?」と聞かれたら。専門家が教える「超わかりやすい答え方」:2025年8月トップ10
ESSEonlineで2025年8月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。
スマートフォンやパソコンにはじまり、私たちが日常的に使う家電のほとんどに利用されている半導体。いまや「半導体を制するものは世界を制する」とまで言われるほどになくてはならない存在ですが、いざ自分の子どもに「なんで半導体が重要なの?」と聞かれても、上手に解説できない人が大半ではないでしょうか。そこで、子どもから大人まで知っておきたい半導体の基礎知識について、現役外交官として活躍する島根玲子さんに、世界情勢をまじえて解説してもらいました。
※ 記事の初出は2025年8月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

半導体ってそもそもなに?シリコンバレーの由来
アメリカ西海岸、サンフランシスコあたりの地域を「シリコンバレー」と呼びます。そもそも「シリコンバレー」という名前は、半導体の原料である「シリコン」からきています。
つまり、シリコンバレーとは、半導体を製造する地域というのが語源なのです。
最近、「半導体」という言葉をよく聞きますが、そもそも半導体ってなんでしょう?
電気をとおすものを「導体」と呼びます。「鉄」とか「銅」などの金属が代表的です。反対に、電気をとおさないものを「絶縁体」と呼び、ガラスやゴムなどの素材がそれに当たります。半導体はその中間で、電気をとおしたり、とおさなかったりするもののことを指します。
半導体の代表的な素材がシリコンです。シリコンは、普段は電気をとおさないのですが、ある薬液を塗ったり、特殊な加工をしたりすると、電気をとおすようになります。
このように、電気をとおしたりとおさなかったりする物質、という意味で、「半導体」と呼ばれます。そして、このときは電気をとおし、このときはとおさない、という条件をつけた「回路」と呼ばれるものをこの素材の上に刻みます。
この回路が増えれば増えるほど、より複雑な情報処理ができるようになります。
半導体は、ほとんどすべての電化製品に使われている

半導体は、ほぼすべての電化製品に使われていて、半導体が使われていない電化製品を探し出す方が大変です。スマホ、テレビ、自動車、電子レンジ、洗濯機、すべてのものに半導体が使われています。
とくにスマホには複雑な半導体が必要で、たとえばiPhoneには、150億を超える回路がきざまれた半導体が搭載されています。
このように、現代人の私たちの生活は半導体であふれていて、半導体がなくては成り立ちません。だからこそ、世界は半導体を求めて競い、それが争いの火種になります。半導体をめぐる各国の動きを見てみると、今の世界にどのような対立構造があるのかがわかるのです。
なぜ半導体は「現代の石油」と呼ばれるのか

半導体は、わたしたちの身のまわりの電化製品だけでなく、軍事兵器にも使われます。最先端の軍事兵器には最先端の半導体が必要で、強い軍をもつためには最先端の半導体が必要になります。
このように、もはや半導体は国家の命運を握るものにまでなっていて、半導体を制するものは世界を制する、と言ってもいいくらいなのです。
ひと昔前、世界は石油をめぐって争っていました。日本を先の戦争に駆り立てたのも石油です。
1930年代、戦前の日本は、石油のほとんどをアメリカに頼っていました。しかし、1940年の日本のインドシナ(現在のベトナム)進駐をきっかけに、アメリカは日本への石油輸出を禁止しました。
たりなくなった石油を求めて日本は東南アジアに進出し、その後太平洋戦争に突入していくことになりました。このように、日本は石油が原因で戦争にまで発展したのです。
今や半導体は「現代の石油」と呼ばれています。なぜなら、半導体は現代人の生活に欠かせないだけでなく、国家の命運まで握ってしまっているからです。まさに、半導体を制するものは世界を制するのです。
そして半導体をよく見てみると、そこから世界の対立構造や戦争のリスクなど、世界のことがよく見えてきます。
では、半導体をめぐって今なにが起きているのか、見ていきましょう。
半導体はどのようにつくられるの?

なぜ石油をめぐって世界が争ったかというと、それは石油が限りのある資源だからです。
無限にあるものだったらだれも争いません。じつは半導体も同じで、ごく限られたところでしかつくることができません。半導体も石油と同じ、限られた資源であるというわけです。
まず、半導体の製造には、大量の水と安定した電力が必要となります。世界広しといえども、大量の水と安定した電力がある場所というのは、そうありません。なので、半導体の製造はどこでもできるわけではありません。
とりわけ、最先端の半導体を製造できるのは、いまのところ台湾、韓国、アメリカくらいです。そう考えると、半導体は石油よりももっと限られた資源といえるかもしれません。
さらに、半導体の製造はひとつの場所で完結しません。半導体をつくるには、設計、製造、点検など20以上の工程が必要となります。
これらの工程はどこか1か所でできるものではなく、設計はアメリカ、製造は台湾、最後の点検は日本、といった形で、半導体は世界を旅してわたしたちの手元に届きます。その長い工程のうちどれかひとつが欠けても、きちんとした半導体にはなりません。
違う言い方をすれば、この一連の流れからはずれたら、半導体をつくるのが難しくなります。
最先端の半導体製造装置の値段は、1台200億円!
もうひとつ注目すべきは、半導体産業では、ある会社が世界のシェアを独占しているということがしばしばあるということです。
たとえば、私たちが使うiPhoneに入っている半導体のほぼすべてが台湾のTSMCという会社でつくられています。
また、最先端の半導体をつくるのに必要な「EUV露光装置」という装置がありますが、この装置の世界シェアはほぼ100%、オランダのASMLという会社が持っています。最先端の半導体をつくろうと思ったら、オランダから輸入するこの装置が必要です。
ちなみにこのEUV露光装置のお値段は1台200億円以上。日本にあるのはたったの1台、2024年の末にようやく導入されたものです。このように、半導体はいろんな国と協力しないとつくれないもので、その一連の流れから外されるととても困るものなのです。
※この記事は『高校チュータイ外交官が世界のニュースを「そもそも」解説 13歳からの国際情勢』の一部を抜粋し、再編集しています

