櫻井心那のV支えた通算7勝の現役ゴルファー 吉田弓美子がキャディー務めたワケ、報酬は「0円で」
CATレディース最終日
女子ゴルフの国内ツアー・CATレディース最終日が24日、神奈川県の大箱根CC(6652ヤード、パー72)で開催された。2位と1打差の首位から出た21歳の櫻井心那(ニトリ)が3バーディー、3ボギーの72で回り、通算9アンダーで約2年ぶりの通算5勝目を挙げた。最終18番に入った段階で6人が並んでいた大混戦。櫻井のそばでは、ツアー7勝の吉田弓美子(アマノ)がキャディーとして支え続けた。現役でありながら、これまで櫻井を含めて4人のバッグを担いできた38歳。優勝キャディーになった吉田に、その理由を聞いた。
ウィニングパットを決め、涙する櫻井と吉田が抱き合った。「おめでとう。良かったね」。吉田はシンプルな言葉で、17歳下の櫻井を祝福した。
クラブハウスに引き揚げる前には、ギャラリーから「ナイスキャディー」と声が飛んだ。吉田は照れ隠しで「すぐに帰りま〜す」と言って返した。
取材陣の前に立つと、「これ、何の取材ですか」とジョークを言いつつニヤリ。「本人が一生懸命に頑張った結果なんで、私はただただ見守っていただけです」と謙遜した。
現実は違った。第2日を1打差の首位で終えた段階から櫻井が約2年、苦しんできたことを念頭に「こういう(混戦での優勝争いは)経験はこれからもあるから、乗り越えていこう」と激励。そして、この日も櫻井を励まし、鼓舞し続けた。1番パー5では、櫻井がバーディーパットを打つ直前にドローンの音がしたことに憤慨。即座に大会関係者へ「あれ、どこのドローンなの」と抗議してみせた。櫻井が難関の16番パー4でボギーにした後は、すぐに肩をポンとたたいた。そのシーンについて質問されると、恥ずかしがった。
「えっ、映ってました? うわっ。でも、16番については今日のピンポジを知った時に私は『ボギーは仕方ない。パーでラッキー』の思いでしたから、『気にするな』の意味でした。ただ、これで大人数が首位に並んだので、心那には『私、早く帰りたいから、分かってるよな』と言いました。あっ、まずい。『分かってるよね』と書いてください(笑)」
その場面は、櫻井も会見で証言した。
櫻井「弓美子さんが背中を押してくれてなかったら…」
「17番で『私、早く帰りたいから、分かってるよな』と言われました。圧です。『カッコ、笑い』みたいな」
櫻井はそうは言いながら、しっかりと鼓舞されていた。
「18番ではティーショットから、勝負を決めるつもりでした。弓美子さんがいてくれて、本当に心強かったです。2日目からコースが難しくなりましたが、励まされましたし、アドバイスもしてくださいました。弓美子さんが背中を押してくれてなかったら、乗り越えられなかったと思います」
ツアー優勝者が、優勝キャディーになること自体が異例。だが、吉田はこれまで、ささきしょうこ、川満陽香理、藤田さいきのキャディーを務めていた。櫻井とは、2022年にステップ・アップ・ツアーで出会って意気投合。食事やディズニーランドに行く仲といい、櫻井が冗談でキャディーを提案したところ、吉田が「空いてる週ならやるよ」と快諾していた。吉田は現役でありながら、キャディーをする理由を率直に言った。
「楽しそうだし、キャディーさんの目線になってプロのゴルフを見てみたい思いがあるからです。それをやらせてくれた皆さんに感謝ですし、いいものを見させてもらっている感覚です。心那の場合は抜群にパットがうまいですよね。すごく参考になりました。なので、今回、(報酬は)ゼロ円で」
プロキャディーの場合、優勝賞金の10%が相場で、櫻井が獲得した1440万円のうち144万円を手にできたはずだが、これを放棄。次週は自身でステップ・アップ・ツアーの試合に出る予定と明かしながら、「疲れたからやめようかな(笑)」と言って取材陣を笑わせ、クラブハウスへ戻っていった。
ちなみに、櫻井は会見で「また、遊びに行って一緒に豪華な食事でもしたいです」と、2人ならでは祝勝会をプランを明かした。残るシーズンは、ともにプレーヤーとして戦い切り、オフにその時間を楽しむつもりだ。
(柳田 通斉 / Michinari Yanagida)

