麻布台ヒルズにオープンした話題のイタリアン「DepTH brianza」。奥野義幸シェフが紡ぐ、おいしい物語とは

人気イタリアン「ブリアンツァグループ」を率いる奥野義幸シェフが、2024年に麻布台ヒルズで新たに立ち上げたのが「DepTH brianza」。イタリアンの技法と日本の食材を融合させた料理を通して、生産者やともに働くスタッフにも光を当てたいという、奥野シェフの理想を形にした話題のレストランです。

誠実な人間性に魅了される。奥野義幸シェフの世界へ
1972年生まれの奥野義幸シェフ。和歌山県の料亭で生まれ育つものの、最初から料理人をめざしていたわけではないのだそう。米国の大学で経営学を学び、会社員としてキャリアをスタート。自分の手で作る料理のおもしろさに気づいたことで、やがて料理の道へ。本場イタリアの8の州で修行を積み、帰国後に「La Brianza」を立ち上げる。現在は、日本橋や六本木など都内を中心に8店舗を展開するグループの取締役総料理長に。
2024年には、麻布台ヒルズに「DepTH brianza」をオープン。こちらは、奥野シェフが理想とするレストラン像を形にした場所。ゲストはもちろん、スタッフや生産者まで“関わるすべての人が主役”になれることを大切にしている。
SNSを毎日チェックしているという奥野シェフは、情報感度の高さも魅力のひとつ。生産者や食材の背景にまで目を向け、今“本当にいいもの”を選び抜くセンスのよさが、独自のスタイルにつながっている。

イタリアの技法と“もったいない”が融合した魚出汁スープ
まず初めに紹介するのは、グリーンアスパラガスと毛蟹のフラン、高知県産のイサキのクネル、そして、爽やかなレモンと発酵黒ニンニクのパウダーがアクセントになった一皿。
琥珀色のソースは、イタリア・リグーリア州で親しまれている魚出汁「チュッピン」。使われているのは、市場に出回らない規格外の「未利用魚」。サイズが小さかったり、見た目がそろわなかったりといった理由で市場では扱われない小魚たちだけれど、実は旨みがたっぷりで、素晴らしい出汁が取れるのだとか。
もったいない・安いというだけでなく、そこにしっかりとしたおいしさがある。そんな魚を選ぶのは、漁師町で育ったシェフならではの知恵。どんな素材も最大限に活かそうとする日本の精神と、イタリアの技法が融合した一皿は、エレガントでありながら滋味深い味わいになっている。

富士酢とミントオイルで味わう、シェフ渾身の生ハム
名物料理の「ブレザオラ」は、滋賀県の精肉店「サカエヤ」から仕入れた、近江牛の牛モモ肉を使った自家製の生ハム。
イタリア産の生ハムは、日本への輸入禁止が長期化しているため、シェフが半年をかけて生ハムを手作り。添加物を一切使わず、塩分濃度にもこだわっているのだとか。
薄くきったハムに合わせるのは、千葉県太刀魚のフリット。シェフの友人が当主を務める京都の老舗「飯尾醸造」の富士酢を使ったブールブランソース、自家製のミントオイルとともに味わって。

経産牛に新たな価値を。極上の熟成肉へと生まれ変わる
メインディッシュで登場する“熟成肉”にも、生産者たちの想いが込められている。あまり聞き慣れない「経産牛」というお肉を使っており、こちらも生ハムと同様に「サカエヤ」という精肉店から仕入れを。
「食通の方に教えていただき、サカエヤの店主・新保さんと出会いました。味のおいしさはもちろんですが、牛肉の生産、流通、販売に至るまでの真摯な思いにも感動したのです」と奥野シェフ。
経産牛とは簡単に言うと、お産を経た牛のことで、通常では値段のつかないものとされてしまうのが現実。そんな牛たちに価値をつけてあげたい…というシェフの強い思いが込められ、絶品の熟成肉へと生まれ変わっていく。
提供される際には、シェフ自らテーブルに熟成肉を運び、その思いを語ってくれる。そんな時間も貴重に感じられ、食への感謝や楽しみが増すはず。

昇り竜のファサードやトリュフの絵画も。こだわりの空間
料理だけでなく、空間デザインにもシェフのこだわりが。レストランにたどり着くと、昇り竜をイメージしたというカラフルなファサードが目に入ります。店内に入ると、シックな色合いが調和する洗練された内観に。
「高級レストランというと、どうしても緊張感がつきもの。ほどよい緊張感は必要だと思うのですが、喉が通らないとなるのはいいことではありません。くつろいで食事を楽しんでもらえる空間を意識しています」と奥野シェフ。
お店で目を引くのは、トリュフを描いた水墨画。こちらは、水墨画家の立川瑛一朗さんが奥野シェフをイメージして手がけた作品。スタイリッシュな空間の中に、ユーモアや遊び心を感じられ、特別なひとときを過ごすことができるはず。
