ほかに専門性の高いAIの成功例は、メタの手がけるSNS向けの広告AIや、先日、NATO(北大西洋条約機構)との大型契約を発表したパランティア・テクノロジーズ が手がける軍事用AIなどが挙げられる。メタのようにAIに対して多額の投資をいまも行っている企業もあるが、パランティアのように巨額資金を投じなくとも優秀な軍事用AIを開発している企業もある。

 また、メタやパランティアの決算電話会議を聞くとこれまでに比べ「LLM(大規模言語モデル)」という言葉を聞かなくなったように思える。メタのAIに関するコメントは自社開発の広告AIの比重が高まり、パランティアも多少LLMについてコメントがあったが、主に自社開発のAIを使った戦闘用意思決定システムがいかに素晴らしいかという話が中心だった。要するに、LLMをベースにした生成AIはあくまでもAIの一部だということだろう。

 メタやパランティアのような業種別や業務別に特化したAIはすでに需要がある。生成AIの本来の用途である文書生成だけではなく、ここから派生したプログラミングコード生成、画像生成、動画生成などの需要だ。例えば多くのプログラミングの現場で生成AIが使われている。画像生成、動画生成も同様で、そもそも仕事で使うツールとして真っ先に「チャットGPT」に飛びついたのは広告クリエーター達である。

 これから導入が進むと思われる「AIエージェント」は企業の個別業務の完全自動化システムなので人手不足に悩む企業の需要は多いと思われる。ただし、これらのAIを個別に企業が導入して動かす場合は、インフラコストや電力消費量は少ないほうがいい。またこれらの個別用途に使うAIは参入企業も多く、動画生成AIに見られるように大手が優位とは限らない。GPUの効率的使用を後回しにした高性能一辺倒の生成AIだけでなく、今後はより一層、低コストで効率的な生成AIが求められることになるのではないか。

 一方、これまでの生成AIの主流だった企業はどこに向かうのだろうか。例えば、オープンAIがこれまで調達した資金は数百億ドル規模に上り、今後もそれ以上の資金調達需要があると伝えられている。その資金需要に応えるのは、エヌビディア、大手クラウド・サービス会社、大手投資ファンドなどだ。うがった見方かもしれないが、エヌビディアや大手クラウド・サービス会社からすれば、AI開発の効率化が進み、高性能、高単価のAI半導体が売れなくなったり、貸せなくなったら困るからだろう。