決算目前、「一生一緒にエヌビディア」は今後も通用するのか?<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
先日、ジェンスン・フアンCEOがトランプ大統領に同行して中東諸国を訪問した。同大統領はバイデン政権時代から続いた中東諸国などへのAI半導体の輸出規制の撤回を表明し、併せて中東諸国が建設するデータセンター向けにエヌビディアが大量の最先端AI半導体を供給することも発表された。果たしてこれが一体、どのような結果を生むのだろうか。
足もとの同社の株価上昇は、中東諸国向けの売上高が、従来予想されていた同社の業績にさらに上乗せされるのではないかという見方からきている。確かにトランプ大統領直々に外交交渉をしているのだから、数年で巨大なデータセンターが中東で稼働することになるだろう。そして、データセンター不足に陥っている米国内のハイテク各社がこれらを利用することになると思われる。
中東にエヌビディア製AI半導体が本格的に供給されるのは2026年からとなりそうだが、問題はそれ以降のデータセンター需要がどの程度増えるのか、まだ十分に分かっていないということだ。人間並みの知能を持つ汎用人工知能(AGI)、完全自動運転、自律歩行型ロボットなど、巨額の開発資金が必要で、大量の高性能GPUを消費するプロジェクトは多い。問題は、その資金が出てくるのかどうか、果たして巨額の資金を投じて開発したAIに開発資金の大きさを反映した価格での需要はあるのかということだ。
もちろん、今後の進展を見ないと正確な判断はできない。中東で大型商談がまとまったことも事実であり、AIの開発が相変わらず大きなスケールで進行していることは確かだろう。ただし、いまのAIムーブメントは、話が大きくなり過ぎている傾向もあるのではないか。今回の中東の件も然り、平気で1000億ドル単位の数字が躍っている。もし、これらがうまくいけば、社会的にも大きなイノベーションを生み出すことにつながるし、エヌビディアの業績も改めて拡大し、株価も再び上昇基調に転じることになろう。だが、こうした大きすぎる話はうまくいけば良いが、失敗すると大きなリスクを背負うこともある。ともあれ、現時点では様々な見方ができるが、来週のエヌビディアの決算発表を虚心坦懐に待ちたい。
●トランプ関税が中国の底力発揮を促す結果に
AI半導体の輸出規制撤回については、背景には中国がAI開発競争で優位になってしまうのではないかというトランプ政権側の危機感がある。「DeepSeek(ディープシーク)」登場以降、中国では次々に生成AIモデルが発表されている。筆者がいま抱いている問題意識は、エヌビディア製の高性能AI半導体が十分入手できず、AIインフラがアメリカに比べ貧弱で、しかも人口14億人超を有し、生成AIユーザーがアメリカ(人口3.3億人)に比べてはるかに多い中国で、「ディープシーク」やその他の生成AIは、なぜ開発できて実際に動いているのか、ということだ。
要するに、性能の低いAI半導体でも十分に生成AIの能力を発揮できる、効率的な開発(学習)、運用(推論)を行っているということだろう。アメリカの大手生成AI開発会社に比べ中国のAI開発企業の開発コスト、推論コストは半分以下と思われる。総合的に見ると、AIの開発力はすでに中国がアメリカを追い抜いているのではないか。
なぜ、中国の技術力がここまで向上したのか。その要因は第一次トランプ政権の時代に始まった中国へのハイテク規制にある。逆説的かもしれないが、技術開発とは、往々にして制約があればあるほど進んでいくという側面がある。制約があるからこそ、より効率的な技術開発を進めなければならないという技術者の意識が働く。しかもゼロから生み出すより先行技術をキャッチアップできる後発のほうが楽に開発を進めることができる。これは歴史が証明している真理なのだ。

