決算目前、「一生一緒にエヌビディア」は今後も通用するのか?<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
さらに「ディープシーク」が「チャットGPT」などアメリカの主要なAIモデルと異なる点は、オープンソースであるという点だ。「ディープシーク」をどのように開発したのかという論文も公開されている。このため、コミュニティが形成されて世界中で開発者が技術を教え合って、技術革新が急速に進んでいると思われる。もちろん、そのコミュニティがすでにアメリカのスタートアップ企業にも広がりつつあるという。このまま規制をかけていたら、中国発のAI技術が世界のスタンダードになってしまいかねない、ということにトランプ政権がいまになって気づいたのだ。
●汎用人工知能と特化型AI、多極化する開発競争の行方
ここで改めて今後のAI開発の流れについて俯瞰してみたい。昨年12月にオープンAIは「Sora(ソラ)」という動画生成AIを発表して話題を呼んだ。だが今年に入ってからむしろ、「Pika(ピカ)」という動画生成AIが動画クリエーターたちの注目を集めている。「Sora」以上の高いクオリティの動画生成能力を持つと言われるこの生成AIは、中国系アメリカ人が23年4月に設立したAIスタートアップ企業、ピカ・ラボが開発した。驚くのは同社が会社設立から調達した資金がわずか1億3500万ドルだったことだ。生成AIへの投資が最も盛んだった2023年のAIスタートアップへの投資は、数十億ドル規模が当たり前だったが、それより一ケタ低い資金で、こうした専門性の高い生成AIを開発したわけだ。これは刮目すべきことではないだろうか。
ほかに専門性の高いAIの成功例は、メタの手がけるSNS向けの広告AIや、先日、NATO(北大西洋条約機構)との大型契約を発表したパランティア・テクノロジーズ が手がける軍事用AIなどが挙げられる。メタのようにAIに対して多額の投資をいまも行っている企業もあるが、パランティアのように巨額資金を投じなくとも優秀な軍事用AIを開発している企業もある。
また、メタやパランティアの決算電話会議を聞くとこれまでに比べ「LLM(大規模言語モデル)」という言葉を聞かなくなったように思える。メタのAIに関するコメントは自社開発の広告AIの比重が高まり、パランティアも多少LLMについてコメントがあったが、主に自社開発のAIを使った戦闘用意思決定システムがいかに素晴らしいかという話が中心だった。要するに、LLMをベースにした生成AIはあくまでもAIの一部だということだろう。
メタやパランティアのような業種別や業務別に特化したAIはすでに需要がある。生成AIの本来の用途である文書生成だけではなく、ここから派生したプログラミングコード生成、画像生成、動画生成などの需要だ。例えば多くのプログラミングの現場で生成AIが使われている。画像生成、動画生成も同様で、そもそも仕事で使うツールとして真っ先に「チャットGPT」に飛びついたのは広告クリエーター達である。
これから導入が進むと思われる「AIエージェント」は企業の個別業務の完全自動化システムなので人手不足に悩む企業の需要は多いと思われる。ただし、これらのAIを個別に企業が導入して動かす場合は、インフラコストや電力消費量は少ないほうがいい。またこれらの個別用途に使うAIは参入企業も多く、動画生成AIに見られるように大手が優位とは限らない。GPUの効率的使用を後回しにした高性能一辺倒の生成AIだけでなく、今後はより一層、低コストで効率的な生成AIが求められることになるのではないか。

