決算目前、「一生一緒にエヌビディア」は今後も通用するのか?<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
●トランプ関税が中国の底力発揮を促す結果に
AI半導体の輸出規制撤回については、背景には中国がAI開発競争で優位になってしまうのではないかというトランプ政権側の危機感がある。「DeepSeek(ディープシーク)」登場以降、中国では次々に生成AIモデルが発表されている。筆者がいま抱いている問題意識は、エヌビディア製の高性能AI半導体が十分入手できず、AIインフラがアメリカに比べ貧弱で、しかも人口14億人超を有し、生成AIユーザーがアメリカ(人口3.3億人)に比べてはるかに多い中国で、「ディープシーク」やその他の生成AIは、なぜ開発できて実際に動いているのか、ということだ。
要するに、性能の低いAI半導体でも十分に生成AIの能力を発揮できる、効率的な開発(学習)、運用(推論)を行っているということだろう。アメリカの大手生成AI開発会社に比べ中国のAI開発企業の開発コスト、推論コストは半分以下と思われる。総合的に見ると、AIの開発力はすでに中国がアメリカを追い抜いているのではないか。
なぜ、中国の技術力がここまで向上したのか。その要因は第一次トランプ政権の時代に始まった中国へのハイテク規制にある。逆説的かもしれないが、技術開発とは、往々にして制約があればあるほど進んでいくという側面がある。制約があるからこそ、より効率的な技術開発を進めなければならないという技術者の意識が働く。しかもゼロから生み出すより先行技術をキャッチアップできる後発のほうが楽に開発を進めることができる。これは歴史が証明している真理なのだ。
さらに「ディープシーク」が「チャットGPT」などアメリカの主要なAIモデルと異なる点は、オープンソースであるという点だ。「ディープシーク」をどのように開発したのかという論文も公開されている。このため、コミュニティが形成されて世界中で開発者が技術を教え合って、技術革新が急速に進んでいると思われる。もちろん、そのコミュニティがすでにアメリカのスタートアップ企業にも広がりつつあるという。このまま規制をかけていたら、中国発のAI技術が世界のスタンダードになってしまいかねない、ということにトランプ政権がいまになって気づいたのだ。
●汎用人工知能と特化型AI、多極化する開発競争の行方
ここで改めて今後のAI開発の流れについて俯瞰してみたい。昨年12月にオープンAIは「Sora(ソラ)」という動画生成AIを発表して話題を呼んだ。だが今年に入ってからむしろ、「Pika(ピカ)」という動画生成AIが動画クリエーターたちの注目を集めている。「Sora」以上の高いクオリティの動画生成能力を持つと言われるこの生成AIは、中国系アメリカ人が23年4月に設立したAIスタートアップ企業、ピカ・ラボが開発した。驚くのは同社が会社設立から調達した資金がわずか1億3500万ドルだったことだ。生成AIへの投資が最も盛んだった2023年のAIスタートアップへの投資は、数十億ドル規模が当たり前だったが、それより一ケタ低い資金で、こうした専門性の高い生成AIを開発したわけだ。これは刮目すべきことではないだろうか。

