ONE OR EIGHT「KAWASAKI with Big Sean」MVより

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 『日経エンタテインメント!』(日経BP)に新年号の定番である「2025年の新主役100人」が発表された。俳優、芸人、アーティスト、VTuberまで、幅広いジャンルで活躍する時代の先駆者100組を一挙に紹介するこの特集。その一組に選ばれたのが、avexがスタートさせたグローバルプロジェクトの一環「WARPs DIG」からデビューしたボーイズグループ・ONE OR EIGHTだ。

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 ONE OR EIGHTは、2024年8月にデビューを果たした。デビュー前の6月にリリースされた楽曲「KAWASAKI」で彼らの名前を目にした人も多いのではないだろうか。公開からわずか10日で1000万回再生を達成した驚異的な記録を見せた楽曲であり、それは「ONE OR EIGHTは世界へと羽ばたくのだ」と明確に示してみせた楽曲でもあった。

 昨年6月のデビュー前プロモーションから活発にデジタルコンテンツを発表し、日本、韓国、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポールの6カ国で14公演、合計約2万人の前でショーケースを行った。現在のSNS合計フォロワー数は、150万人を超えており、日本国内ではデビューに際して100以上のメディアに取り上げられ、Billboard JAPANチャート「Heatseekers Songs」首位を獲得し、大きな注目を受けた。

 国外では『Billboard』や『Variety』などのアメリカのトップ音楽メディアで取り上げられ、日本人ボーイズグループでは初めて、デビュー曲が、Spotifyのなかで最も人気を誇る公式プレイリストのひとつ「New Music Friday」にアメリカ版をはじめとする16の国と地域で選出された。中国でも3億人のユーザーを有するとされる網易雲音楽、トップストリーミングサービスのQQ MUSICやKuwo Music、アジア最大の音楽ストリーミングアプリのJOOXなどでも、トップページバナーやプレイリストカバーに選出。インドネシアやブラジルなどで先行してローンチされているTikTok Musicやフランス発のグローバル音楽配信サービスのdeezer、中東で最も高い人気を誇り、現在1億人以上ユーザーを持つアフリカ圏初のストリーミングサービス・Anghamiなどでも、異例のデビュー後すぐにトップカバーやプレイリスト入りを果たしていた。

 音楽面でも、その新しさが光っている。昨年8月16日にリリースされたデビューシングル「Don't Tell Nobody」は、OneRepublicのフロントマンであるライアン・テダーをプロデューサーに迎え、BTS「Dynamite」やJUNG KOOK「3D (feat. Jack Harlow)」などを手がけたデイビット・スチュワートらによるメロディアスなダンスポップで、洗練されたプロダクションとアレンジが光るナンバーだった。

 デビュー前に万単位のオーディエンスを前にパフォーマンスしたその実力も、ボーイズグループ史上初めて香港のフェス『Hypefest』に出演したことやタイで行われたフェス『NYLON SIAM MUSIC FEST』にもオンステージしたことからもわかるだろう。

 そして、昨年12月にリリースされたのが、「KAWASAKI (with Big Sean)」だ。リミックスがリリースされた「KAWASAKI」は、先述のとおり、楽曲公開からわずか10日で1000万回再生を達成し話題になった楽曲だ。ジャージークラブサウンドを広めた先駆者であるDJ Smallz 732に加えて、グラミー賞にノミネート経験もあるGENT!、Bangs、新進気鋭作家であり、XGも手がけたXansei、ルシアン・パーカーという組み合わせで生み出された、ジャージークラブのリズミカルなビートと、トラップが重厚なベースラインが絶妙なバランスでミックスされている。シンプルながら力強さとラップスキルが土台としてあるからこそ成り立つ楽曲だろう。

 NCTやBLACKPINKのコレオグラフを担当するタリン・チェンによる振り付けは大胆でキャッチーさがありつつも、ジャージークラブの細かなビートを表現する繊細なスキルも感じさせる。楽曲タイトルの「KAWASAKI」は、過去国内外のHIPHOPアーティストの楽曲でも取り上げられてきた、世界に知られる日本のバイクメーカーの名前「カワサキ」と、同時にBADHOPのホームとして知られる「川崎」のイメージを内包することで、グループの持つ勢いや疾走感と、退屈な日々に変化を起こす8人の“HAPPY BAD BOY”=ONE OR EIGHTを彷彿させる。一見反抗的だが、どこか愛らしい憎めない魅力を持った若者たちが退屈で平凡な日常に変化を起こす、というグループのアイデンティティを表現しているようだ。

 今回のリミックスは、ジャスティン・ビーバーやケイティ・ペリーといった世界的アーティストの作品にも携わり、「BET Awards」の受賞やグラミー賞のノミネートで知られるラッパーのビッグ・ショーンが参加。日本人アーティストとコラボレーションするのはこれが初めてのことだが、彼自身、「ONE OR EIGHTは確実にグローバルで成功すると思う。そう思っていなければ、僕はコラボレーションはしないよ」と語っていたほどだ。出来上がった新アレンジにはスリリングな展開が加わったと同時に、ビッグ・ショーンのラップが原曲に非常にスムーズに溶け込んでいることに驚かされる。

 しかし、すでにリリースされているメンバーのSOUMAによるファレル・ウィリアムズが2022年にリリースした曲をベースにしたラップパフォーマンス「Cash In Cash Out」や、NEOによるJay-Zのトラックをベースにした「99 Problems」などを聴けば、今時のフロウやトーンを軽々と乗りこなす姿に納得がいくだろう。

 オリジナルのパフォーマンスビデオでは富士山を背負ってパフォーマンスしていたが、今回のMVでは障子がうっすらと見えるゲームに登場する陰鬱なアジトのような背景やカワサキのバイクが夜の日本の道路を疾走する背景が印象的だ。これらのイメージは、近年世界中のユースカルチャーに影響を与えている日本関連のアニメやコミック(『東京リベンジャーズ』『頭文字D』など)、そしてゲーム(『龍が如く』『Ghost of Tsushima』など)といったものを通じて“新しい日本のイメージ”としてグローバルに知られつつあるものでもあるだろう。

 楽曲はアメリカ、コレオやビジュアル面ではFLIPEVILなどK-POPシーンで知られるトップクリエイターを採用し、かつビジュアルモチーフは日本というクリエイションの姿勢には、今までにないようなフレッシュでグローバル感のある楽曲とパフォーマンスで、“J-POPグループ”のある種の新しい概念を世界に打ち出していきたいという意気込みが感じられる。その裏打ちのようにして、アメリカの「iTunes Hip-Hop/Rap Songs」ではケンドリック・ラマーに続き5位、アメリカで聴かれた日本の楽曲をまとめたBillboard Japanチャート「Japan Songs(US)」では14位にランクインさせた。

 今年に入ってから、1月10日には当日誕生日を迎えたREIAのソロパフォーマンスコンテンツが公開された。アメリカの次世代シンガーソングライター兼プロデューサーであるラウヴの「Never Not」を歌う同動画。映像のなかでは、真っ白な衣装を身に纏ったREIAがコンテンポラリーダンスを披露している。2025年は、メンバーそれぞれの強み、武器がより浮き彫りになるのかもしれない。

 デビューのベースである「WARPs」には、「革新的な風を創造できる集団」という意味が込められていたが、アーティスト名「ONE OR EIGHT」は日本慣用句「一か八か」に由来するという。

 「BET ON YOURSELF」をタグラインに掲げ、「仲間と夢に向かって“一か八か”勝負を世界に仕掛けていく」というのがグループのモットーだそうだが、avexの過去のグローバルな歩みを最大限活かしたようなプロモーションや綿密なクリエイションからは、「確実に賭けを取りにいく」という着実さも感じられる。新世代のグループの今後の展開から目が離せなさそうだ。

(文=DJ泡沫)