Twitterで12万いいねと爆笑呼んだ作品も「無料の短編集」で公開。漫画家が語るその舞台裏
スマートフォンやタブレットがあれば、いつでもどこでも買えて読める電子書籍。商業作品はもちろん個人制作の電子書籍も増え、中には価格をつけずに無料で電子書籍を頒布するクリエイターもいる。漫画家にとって、「無料の電子書籍」に取り組む理由や利点はどこにあるのだろうか。
漫画家の赤信号わたる(@GoAkashin)さんは、商業作品として『ヤンキー悪役令嬢 転生天下唯我独尊』(コミックヴァルキリー)を連載するかたわら、SNS上でオリジナル作品を発表している。
赤信号さんが2021年12月にTwitterなどで公開した「全てを筋肉で解決するシンデレラ」は、12万件超のいいねを集める大反響を呼び、「筋肉童話」としてシリーズ化。個人制作でありながら森永製菓のinゼリー・inバープロテインとのコラボ漫画企画に至った。
これらWEB上で発表したオリジナル作品を、赤信号さんは無料の電子書籍の短編集としてまとめ刊行。10月には「赤信号わたるの漫画交差点【短編集】(2)」がKindleで公開され反響を集めている。ウォーカープラスでは、プロの漫画家として活動を続ける赤信号さんに、個人制作で無料の書籍を作る舞台裏をインタビューした。
■無料でも作家には「プラス」。無料電子書籍のメリットとは
――プロの漫画家として活動する赤信号さんが、短編をWEBに公開し始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
「3、4年ほど前、SNSの漫画が本格的に盛り上がりつつあった時期だったので、あれこれ考える前にまず試してみようと思い、制作時間をそこまでかけずに発表できる短編漫画に着手しました。投稿してみたところそれが思った以上に反響をいただき、お仕事にも繋がったので本格的にWEBでの活動を開始しました」
――発表した作品を、短編集として無料の電子書籍として公開されています。この取り組みをはじめたのは何故ですか?
「実は、電子書籍を公開しているKindleインディーズマンガという形式だと、読者にとっては無料なのですが、ダウンロード数や読まれたページ数に応じて分配金という形で報酬が支払われるのです。元々WEBに無料で発表していた作品のストックがたくさんあったので、せっかくならまとめて出版してみようということになりました。
もちろん、単純に読んでくださる読者さんの数も増えることもとてもありがたいですね。また、近年のネット社会では情報が散逸してしまいがちなので、『まとめる』ということにも価値が生まれると思ってます」
――公開されている短編集ごとに収録作品のコンセプトはあるのでしょうか?
「ないです。個人制作の漫画に限りますが、僕の役割は単発で生まれてきたアイデアの可能性を引き出してあげることであって、自分の個性や作風を乗せることはできるだけしたくないと思っていますので、一話ごとに手法もテーマもバラバラです。それが許されるのがこの短編集の良さでもあると思ってます」
■「たくさん描きたい」と「恐怖心」。個人制作の裏にある思い
――商業連載と並行して作品を制作するのは大変なことだと思います。その中で、赤信号さんが個人制作をコンスタントに続けていく思いを教えてください。
「大前提として、できるだけたくさん作品を描きたいというそれ以上分解しようがない欲求があるのですが、それと同じくらい恐怖心があります。この数年で世の中の急激な変化とともに漫画も大きく変わっていきました。SNS漫画や電子書籍、縦スクロール漫画などなど……。でも、わずかな期間に興隆したということは、わずかな期間で衰退する可能性もあります。
次にどんな時代がくるのか、最後のところは誰にも予想できないので、何が起きても常に対応できるようにさまざまな形式や媒体で『今から活動しておかなければ漫画の仕事を続けていけなくなってしまうかもしれない』という恐怖心が原動力に繋がっています」
――個人制作と商業作品とで、意識して差別化している部分や個人制作だからこそできることなどはありますか?
「商業連載のお仕事では出版社や読者さんを失望させるわけにはいかないので、つい失敗が許されなくなってしまいますが、そうすると無意識に枠にとらわれてしまう部分ができてくるとも思います。電子書籍の短編集については型も一貫性も気にせず、思いついたアイデアの可能性を引き出してあげることだけを考えています。失敗を恐れず挑戦できる環境というのはありがたいですね。たくさん失敗していきたいです」
――10月に公開された短編集にも読者から多くの反響が集まっています。最後に読者へメッセージをお願いします。
「先述のようにこの短編集は僕にとっての実験の場でもあるのでそこに読者さんを付き合わせてしまう申し訳なさはあるのですが、その分これからもハジけていこうかと思ってますので『また変なことやってんなぁ』とそれも含めて楽しんでもらえれば幸いです。いつもご愛読ありがとうございます!」
取材協力:赤信号わたる(@GoAkashin)

