新天地のソシエダで存在感を示している久保。(C)Getty Images

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「カタール・ワールドカップで注目したい選手の一人だ」

 レアル・ソシエダ久保建英をそう評したのは、英紙『サンデー・タイムズ』で主筆を務めるジョナサン・ノースクロフト記者である。

 ヨーロッパリーグ(EL)でソシエダがプレミア勢のマンチェスター・ユナイテッドと同組に入り、ノースクロフト記者はこれまで以上に久保に注目するようになったという。特に、“夢の劇場”オールド・トラフォードでの活躍を「素晴らしかった」と称賛。1−0の勝利に貢献した日本代表MFについて、次のように言葉をつないだ。

「クボは高度なスキルがあって、視野も広い。プレーに創造性があり、仕掛けの意識も高い。試合を通して危険な存在であり続けた。

 2トップの一角としてプレーした前半は、センターバックのハリー・マグワイアの激しい寄せに苦しんだ。イングランド特有と言える接触プレーに困惑していたようだが、その点を含めてもユナイテッド戦の出来は特出していた。カタール・ワールカップでどんな活躍を見せるか注目したい」

 特に褒めていたのが、久保のトラップとボールを置く場所だ。味方からパスを受けた際のファーストタッチについて「次のプレーに移りやすい場所にボールをいつも置いている。もちろんサッカーでは基本的なプレーになるが、その判断が的確で、かつ論理的だ」と評価。「ボールを受ける前に次の一手を瞬時に判断してからトラップしていて、その技術も高い。しかも、敵に取られにくい場所にボールを置いている。非常にクレバーな選手だと思う」とプレーを分析した。

「しかも、プレーの選択肢が広い。ドリブルで仕掛けることもできれば、周囲との連係で崩すこともできる。ミドルシュートも打てるし、スルーパスも出せる。驚異的なスピードがあるわけではないが、アジリティとクイックネスに優れていて、相手には守備の的が絞りにくい」
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 これまでは、バルセロナの下部組織に在籍した久保の経歴に特に注目していたという。バルセロナがFIFAから18歳未満の外国人選手の登録違反による制裁措置を受け、久保は日本に帰国した。FC東京や横浜F・マリノスでプレーし、後にレアル・マドリーに完全移籍した経歴を含めて「波乱はあったが、逆境を乗り越えてきた選手」と評した。

 今季はコンスタントに活躍していることから、プレーも注視するようになったようだ。複数のポジションをこなすポリバレントな能力を褒めた。

「ユナイテッド戦の前半は4−4−2の2トップ一角に入り、後半5分からはチームの戦術変更に伴い4−3−3の左ウイングでプレーした。2トップの左サイドでプレーした前半も日本代表の動き、特に相手ディフェンダーとミッドフィルダーの『間のスペース』に入り、味方からパスを引き出すプレーが良かった。ただ、4−3−3の左ウイングに入った後半の方が輝いていた。チームとしてワイドアタックに重きを置こうとする狙いが見えたが、クボは中央よりも相手の寄せが甘くなるサイドの方がやりやすそうだ。

 後半からユナイテッドは、本職がセンターバックのヴィクトル・リンデロフを右サイドバックに移した。不慣れなポジションを務めるスウェーデン代表を大いに苦しめ、クボはクロスボールやミドルシュート、積極的な仕掛けの動きで勝利に貢献した」

 さらに、久保のベストポジションについても語り、「個人的な見解」と前置きしてから「ウイングか、インサイドハーフになると思う」と自身の考えを述べた。そして、プレミアリーグでも見てみたいと言葉を続けた。

「本人がプレミアリーグ行きを希望しているかどうか分からないが、まず激しい接触プレーや寄せに完璧に対処できるようになる必要がある。ただ、イングランドで活躍できるポテンシャルは十分にある。ユナイテッド戦でも自陣深くまで下がって守備をこなした。こうしたハードワークに加え、前へ前へと積極的に仕掛ける意識の高さはプレミアリーグでは高く評価される。面白い存在になると思う」

 こう述べた後、「ただし」と条件をつけた。ユナイテッド戦の3日後に行なわれた国内リーグのヘタフェ戦では精彩を欠き、前半の45分で交代を命じられた。ELのオモニア・ニコシア戦では先発から外れたものの、途中出場した後半で1アシストをマーク。「今シーズンのクボはこれまでに比べて全体的に調子が良さそうだが、好不調の波は小さくしたい」と、課題について言及した。

「求められるのは一貫性と持続性だ。21歳でまだ若いが、欧州サッカー界では若手に分類される年齢ではない。コンスタントに活躍していけば、プレミアのクラブもクボに熱視線を送るようになるはずだ」

取材・文●田嶋コウスケ