メタバースは「セカンドライフ」? 覚えていますか 20年早かった発想に、今、技術が追いついた
2021年のIT業界のトレンドと言えば、やはり「メタバース」です。
SNSサービス「Facebook」を運営する企業が、社名を「Facebook(フェイスブック)」から「Meta(メタ)」へと変更しました。
Metaは、バーチャルスペース(仮想空間)を活用した新しいコミュニケーションサービスの在り方を提案することを基本戦略として掲げたことで、メタバースという言葉が一気に広がり、盛り上がりました。
メタバースという概念そのものは、実はそれほど新しいものではありません。
古くはオンラインゲームでの「ゲームの世界に人々が集い、コミュニケーションを図る」という構造があり、それらがメタバースの原型なのです。
また、BBSやSNSといったオンラインサービスもメタバースを構成する基本的な技術です。
実は、こういったオンライン上の仮想空間を用いた、世界中の人々による大規模コミュニティの形成を目指したサービスは過去にもありました。
語弊なくお伝えするなら、現在もそれは続いています。
そのサービスは「セカンドライフ(Second Life)」です。名称に聞き覚えがある人もいるでしょう。

セカンドライフは現在も運営されている
●20年早かったもう1つの世界「セカンドライフ」
セカンドライフが運営を開始したのは2003年になります。
当時はまさに、MMO RPGに代表されるオンラインゲームの全盛期。
SNSはまだ存在せず、世界中の人々と自宅から自由に交流ができる初めての体験に、人々は興奮し、熱中したのです。
そんな時代に登場したセカンドライフは、一言で言えば「10年どころか20年早かったサービス」でした。
仮想空間上に自分の分身となる「アバター」を作成して人々と交流し、仮想空間上で商売を行い、自分の家を持つことさえ可能でした。
それは、オンライン上で仲間(フレンド)とともに仮想世界を冒険するMMO RPGのさらに先をいく発想と試みです。
多くの企業が参画し、セカンドライフ上でイベントが開催され、オンラインショップなどが次々と開設されました。
しかしながら、その「もう1つの人生」の栄華は長くは続きませんでした。
当時のセカンドライフ上では仮想通貨が用いられ、その仮想通貨は現金へと換金すること(RMT)が可能だったために多くの企業の賛同を得られましたが、
その通貨管理や金融システムに欠点が多く、詐欺や不正取引が横行し始めたのです。
オンラインゲームでも、不正行為が広がり始めた途端に衰退し始めますが、現金(現実の経済)と直結しているセカンドライフではこれが大きな影を落とします。
セカンドライフはすぐにユーザー間でのRMTに制限を設け、不正行為や詐欺の撲滅に動きました。
しかしながら、RMTも含めた自由なコミュニケーションやビジネスを誰もが行えるサービスを売りにしていただけに影響は少なくなく、
またその後の一般ユーザーへの宣伝や訴求が弱かったことも重なり、新たな世界として広く定着する前に一過性のブームで終わってしまったのです。

性善説に基づく運営が仇となった
●仮想通貨技術や人々の認識の進歩がメタバースを成功させる
もしセカンドライフが現在の技術がある状況で始まっていたならば、事情は大きく変わっていたかもしれません。
現在オンライン上で取引される仮想通貨と言えば、ビットコインなどが真っ先に思い浮かぶと思います。
そこでは「ブロックチェーン」と呼ばれる技術によって利用者が資産を台帳で管理し、それぞれの台帳のデータを照合し合うことで整合性を取るため、データの改ざんができない仕組みです。
この強固な仕組みは、中米のエルサルバドルのように自国通貨が不安定な国が仮想通貨を法定通貨として採用するほどです。
このような通貨管理システムが整備され、人々とオンラインサービスとの接点が豊富になって当たり前に利用するようになった今だからこそ、
セカンドライフが目指して失敗した世界を実現しようするメタバースの夢が再燃しているのです。

現在はただの投機対象となっている仮想通貨だが、そのポテンシャルは非常に高い
最近はゲームでも、仮想通貨を利用してゲーム内アイテムや自分のアバターを「資産(暗号資産)」として保有し、売買できる「NFTゲーム」が広がりつつあります。
実際にはゲーム自体の面白さやクオリティが低いといった問題もあり、まだまだ黎明期といった印象ですが、セカンドライフやメタといった大企業がその運営や同様の仕組みを導入した新たなバーチャルコンテンツを導入した場合、一気にブーム化する可能性があります。
かつてセカンドライフが夢見たメタバースは、技術的なハードルや人々の認識が追いついたことで、ようやく本当の意味で飛躍する準備を整えました。
そこで開花するサービスが生まれ変わったセカンドライフなのか、それともメタなどの企業による新たな仮想空間と成長していくのかは、まだわかりません。
執筆 秋吉 健
