【私の雑記帳】『財界』主幹・村田博文
変化、変革の時代をどう生き抜くか──。
国、企業、そして個人の3つの領域でそれぞれに変革期を迎えている。国を構成するのは、『富』を創出する企業の他に、官(政府)や学(大学などの教育・研究機関)、そして国民ということだが、ここでは大きく、〝国、企業、個人〟と3つに集約して考える。
国のレベルでは今、米中対立に見られる覇権争いがある。まだ始まったばかりで当分、これは続く。
米中対立は価値観の争いであり、自由・民主主義、法の支配、人権尊重対専制主義の争いと一般的に解釈されている。
1989年、ベルリンの壁が崩壊し、資本主義陣営が社会主義陣営に勝ったとされて30年余。旧ソ連、旧東ドイツは確かに崩壊したが、中国はその10年余前の1978年に当時の最高実力者・蠟小平が改革開放路線を掲げて経済建設を開始。
1992年のいわゆる『南巡講話』で、『社会主義市場経済』なる考えの下、市場経済を掲げて、ひたすら経済成長を追ってきた。
以来、30年近くが経った今、米国に次ぐ、世界第2位の経済大国にのし上がり、2028年には「米国を抜く」という勢い。
この米中対立の狭間にあって、日本国として、どう生き抜くかという命題である。
経済安全保障の時代
「本当に悩ましい問題」──。産業界のトップに会って、米中対立の話になると、すぐこんな反応が返ってくる。
国の安全保障上、日本は日米同盟の関係にあり、この観点で国の防衛や価値観外交を進めなくてはならないポジション。
また、個人の生き方としても、自由主義、民主主義、法の支配、基本的人権の尊重という価値観は戦後70年余、滲みついている。この面では、日米一体である。
経済の運営に当たっては、経済安全保障という考えもクローズアップ。経済と安全保障は密接に結び付くということで、米中両国とも互いに情報やデータが相手に流出しないように警戒を強める。
価値観の違いの中で、日中国交回復(1972)以来、わが国は『政経分離』路線でやってきたが、これはもはや通用しない。
「経済人は甘い! 」──。政府・与党の重鎮からは、こんな言葉が時に発出される。ピリピリとした空気が流れる昨今である。
ネット規制強める中国
一方、中国は国家として産業への関与をますます強める。
中国政府は7月はじめ、配車サービス最大手の『滴滴出行』(ディディ)に対し、アプリ配信の停止を命じた。同社が6月末、ニューヨーク証券取引所に新規上場した直後のことである。
昨年は、ネット通販大手、アリババグループが政府規制を受けた。同グループは今年になって、独占禁止法違反で過去最大の罰金を科されている。
中国の規制当局の規制については不透明であり、不気味さが漂う。『滴滴出行』にはソフトバンクグループ(SBG)やトヨタ自動車なども出資。この中国政府の規制直後、SBGの株価は20数%下落するなど、世界市場の株価にも大きな影響を与えている。
30年前に始まった社会主義市場経済はネット社会を迎えて、規制を強化し、ますます専制主義を強める。
擬似国家機能に苛立ち
米国のGAFAをはじめ、巨大ネット企業が出現し、グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンなどが疑似国家機能を持ち始めたことに、「国家が苛立ちを感じ始めている」という指摘もある。
SNSのフェイスブックは昨年の米大統領選以来、トランプ候補のアカウントを停止。事の当否はともかく、こうした規制の権限を一民間企業が握り始めているという現実。
