「海外投資は高リスク」という考え方が「昭和的」と言える理由

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コロナ禍による収入減などから、給与所得以外の手段による資産形成が重要視されるようになりました。しかし、数ある資産形成の手段のなかでも、海外資産への投資に対して「リスクが高い」と、心理的な抵抗を抱く人は少なくありません。インベスコ・アセット・マネジメント株式会社・グローバル資産形成研究所所長の加藤航介氏は「海外投資は、リスクを低くする行動である」と述べています。今回は、資産形成において高リスクだと敬遠されがちな「為替」についての新しい考え方を見ていきます。

「海外資産への投資」に抵抗がある日本人が多いが…

今までのマインド:海外投資は、リスクを高める行動である(為替リスクが上がる)
新しいマインド:海外投資は、リスクを低くする行動である(為替リスクが下がる)

令和時代の日本人にとって、より一層大切となる「海外資産(外国株式、外国債券、外貨預金など)への投資」を進める際には、円とドル、円とユーロなどの「為替」が関わってきます。

日々のニュースでは為替レートの変動が報道されますし、それに影響を受ける海外資産への投資について心理的な抵抗となるのが、この為替の存在ではないでしょうか。

そもそも為替とは、異なる2つの通貨の交換比率を示すものですが、その交換比率(為替レート)は、それぞれの国の豊かさの相対感によって変わってきます。

たとえば、1970年代まで1ドル360円であったドル円の為替レートは、日本が高度経済成長を経て急速に豊かになるなかで、1980年代の終わりには1ドル100円程度までになりました(円高)。一方、日本経済の成長率が低かった平成の約30年間のドル円為替レートは、始まりと終わりで、ほぼ同じ水準でした。

では、なぜ、海外資産への投資で、為替リスクを下げる行動となる(より備える)ことができるのでしょうか。

誰しも、知らぬ間に為替変動の影響を受けている

私たち日本人は、日本に住み、海外資産を全く持たずに日本で預貯金だけをしていても、実は為替変動の影響を大きく受けています。以下のような状況の中で、海外から輸入しているモノやサービスの値段が、為替相場によって変わってくるからです。


・日本はエネルギーや食料品など、生活必需品の多くを輸入に頼っている
・日本の日常には、外国のモノやサービスが溢れている

たとえば、毎日の食卓から為替を考えてみましょう。現在、日本の食料自給率は40%弱です。米や野菜などはほぼ自給していますが、大豆や小麦は8割以上を輸入に頼っています。食肉や魚の自給率は半分ほどではありますが、家畜の飼料であるとうもろこしは、ほぼ100%が輸入です。そして、農産物を最も多く輸入している相手国は、米国です。例として、1ドル=100円から1ドル=200円に円安が進むケースで考えてみましょう。

このように大幅な円安が進むと、私たちがスーパーマーケットで買う、うどん、そばやパン(小麦が原料)、味噌や豆腐(大豆が原料)、食肉(その家畜の飼料はとうもろこし)の店頭価格は、大きく値上がりする事になります。また、日本は原油についてもほぼ100%を輸入していますので、これも電気代やガソリン代などを通じて、私たちの日々の生活を圧迫します。

このように、ドル・円の為替相場は、私たちの生活に密接に関係してきます。端的にいうと、円安になると、物価上昇により、日々の生活費が増えて家計を圧迫してしまうのです。反対に、円高は日本が海外からモノを買う時の購買力を引き上げることになるので、同じような心配は要りません。

為替というと、短期的な円高や円安などの動きによる金融資産への影響という意味での、為替リスクが注目されがちです。(保有する海外資産の円換算額は円高で減少し、反対に円安で増加します。)ただし、長期の資産形成においては、より長期的な、そして生活などを含めたより広い視点で考えることが大切であると考えます。

長期で見た円高は、日本人が世界の中で相対的に豊かになっていくことであり、反対の円安は貧しくなっていくことです。そして、私たちは金融資産を活用して、この後者の事態にそなえる(リスク・ヘッジをする)ことができます。

それは、お金を海外資産へ投資しておくことです。上記の例でいえば、たとえ大きく円安が進み輸入している食料などの価格が上昇しても、米国の金融資産をしっかり持っておけば、慌てる必要はありません。

自国の通貨安へのリスク・ヘッジを考える必要がある

そして生活面まで含めた「為替の本当のリスク」に備えるための正解は、時代によって異なってきます。日本が海外の先進国と比較して人件費が安く、企業の海外進出が進んでいなかった昭和の時代までは、円安が生活に与えるマイナスの影響は、日本から海外への輸出が伸びるという形で国レベルで相殺することができました。


しかしながら、日本が先進国となり人件費が高くなり、人件費が圧倒的に安い新興国に追い上げられている現代には、昭和の時代のような考えはあてはまりません。先進国となった国が輸出していけるものは、為替のサポート(円安)があるから売れるモノやサービスではなく、為替水準に関係なく売れる独自性の高い高付加価値品です。

令和時代の私たちは、自国の通貨安に対するリスク・ヘッジを、国レベルではなく個人レベルで考えて、備える必要があります。それは、海外資産をしっかりと保有することであり、それを当たり前の状態にしておくことだと考えています。

今回は、為替リスクにより怖いと思われがちな海外資産への投資は、時代背景や生活全般を含めて考えると、むしろリスクを下げる行動となることを紹介しました。為替による海外資産の表面的な価格変動に一喜一憂するのではなく、広い視野を持つことが重要なのです。

今の時代にあった、自分達にとって本当に必要な資産を選択する目を持つことが、人生を豊かで幸せにする金融商品選びにおいて大切となります。人生100年時代、これからも人生と社会を豊かにするための、新しいお金との付き合い方を学んでいきましょう。

加藤航介

インベスコ・アセット・マネジメント株式会社

グローバル資産形成研究所所長