【夢を現実に】旧型ディフェンダー愛好家、イネオス・グレナディア発表 プロフェッショナルな仕事に迫る
化学メーカーが生んだオフローダーtext:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
ジム・ラトクリフ率いるイネオスが、無骨な新型オフローダー、グレナディアを公開した。
1948年の初代ランドローバー・ディフェンダーの精神を受け継ぐモデルである。
イネオス・グレナディア イネオス見た目こそレトロではあるが、グレナディアは新しく結成されたチームとブランドから生まれた、全く新しい4×4だ。
現代的なコンポーネント、最先端のパワートレイン、そして特異な目的を持っている。
最新のメルセデス・ベンツGクラスに近いサイズで、BMWの6気筒ディーゼルもしくはガソリンエンジンを搭載。
来年末に市場に出回る際には、4万ポンド(528万円)という比較的手頃な価格設定になると予想されている。
また、ショート・ホイールベース仕様が登場する可能性もある。
世界中の市場に向けて、量産を開始するには数年かかるが、年間生産台数は約2万5000台で採算がとれるという。
英国の化学製品メーカー大手、イネオスの創業者でありオーナーでもあるジム・ラトクリフは、旧型ディフェンダーの不動の愛好家である。
ジャガー・ランドローバーが2016年1月、67年に渡るディフェンダーの生産を終了した際に、彼は自分でディフェンダーの代替車を作ることを決意した。
2年前、自動車部門イネオス・オートモーティブを設立した後、友人でありヨットデザイナーでもあるトビー・エクイエをデザインチームのリーダーに迎えた。
また、元化学エンジニアのダーク・ハイルマンをCEOに任命。
オーストリアのグラーツにあるマグナ・シュタイヤーを拠点とするエンジニア集団と協力して、メカニカルの開発を担当させた。
オフロード性能と快適性を重視
ロンドン・ベルクレービアにある、ラトクリフのお気に入りのパブにちなんで名付けられたグレナディア。
発売予定日の18か月前に公開されたわけだが、その理由は、「ありふれた場所」で試験運転することができれば、100万マイルにおよぶグローバル・テスト・プログラムを完了するのが容易になるからだという。
イネオス会長のジム・ラトクリフ。生粋のディフェンダー愛好家である。このテストは昨年の冬にスウェーデンで始まっている。
その一方で、2つの新工場が建設されている。ポルトガルのシャシー製造工場と、南ウェールズの最終組み立て工場だ。
先日、AUTOCARはエクイエ、ハイルマン、コマーシャルディレクターのマーク・テナントらとのバーチャルミーティングを開催し、グレナディアについて詳しく話を聞いた。
「グレナディアについては“Built on Purpose(目的に基づく生産)”という言葉を使っています」とテナントは言う。
「我々は高水準のオフロード性能を第一に考えており、ストレートでシンプルなクルマにはストレートでシンプルな言葉を使うというイネオスの伝統があります」
「期待されるすべてのコネクティビティとディスプレイ技術を備えています。オーナーは何時間もマシンの中で過ごすことになるので、快適性も重視しました」
レトロだが洗練されたスタイリング
エクイエは、グレナディアが他社製品であるディフェンダーに似ていることについて、言及を避けることはなかった。
このデザインと仕様にたどり着いたのは、ベンチマークのために購入した多くの競合車を調査した結果であると主張している。
ランドローバー・ディフェンダー(旧型)同氏は次のように述べている。
「競合として調査したのは、ジープ、ランドローバー、トヨタ・ハイラックス、トヨタ・ランドクルーザー、日産パトロール、フォード・ブロンコなどです」
「また、ダイムラー・ウニモグ、バン、軍用車、トラクターなども見ました。アフリカ仕様のクルマは特に興味深かったですね」
「こうして、非常に高い能力を持ちながら、ストレートでシンプルなクルマを作るという私たちの計画が形作られていったのです」
その結果、直線基調のシルエット、クラムシェル型のボンネット、角度の立ったフラットなフロントガラス、そして全周に雨どいを配したフラットルーフを備えることになった。
シンプルで均整のとれた、親しみのあるオフロードカーのスタイルを完成させたのである。
グリルはシンプルで、LEDヘッドライトは丸みを帯びている。大経ホイールはオーバーハングを最小限に抑えるためボディの隅に配置され、ゴム製のホイールアーチを装備する。
両サイドに3つの窓があり、フロントガラスと同様にフラットに見えるが、実際は非常に穏やかな曲線を描いている。
エクイエは、こうした細部のデザインにより、現代的な洗練された印象を演出しているという。
最もディフェンダーを彷彿とさせるのは、フロントからリアにかけてまっすぐ伸びるショルダーラインだ。
これは、ドアポケットに荷物を入れるスペースを確保しつつ、ドアの上部を「必要以上に厚くしない」ことを実現しているとのこと。
見た目のためのデザインではない
ドアには取り外しを助ける外部ヒンジが付いており、クルマのデザインにエクイエが求めていた「正直さ」を叶えている。
「デザインは複雑でも神秘的なものでもなく、わかりやすいものであることが本当に重要でした」
イネオス・グレナディア イネオス「ドアやボンネットがどのように取り付けられているのか、見ていただければわかると思います」
「ピラーを隠したり、必要以上にギミックを施すことはしていません。スマートではありませんが、快適に使うことができるでしょう」
また、エクイエはリアエンドのデザインについて、多くの議論があったことを認めた。
テールゲートは荷物の積み下ろしを困難にする可能性があり、スイングアウト式のスペアホイール・キャリアは「悪夢」だっただろうと語っている。
結局、採用されたのは大小2枚のドアによる観音開き方式だ。これによりラゲッジスペースへのアクセスを容易にした。
丸いテールライトは、ヘッドライトの形状と呼応するデザインとなっている。
エクイエの描くデザインの背景には、興味深いエビデンスが多く存在する。
ルーフはラックなしで荷物を積むことができ、側面には古いランドローバーのルーフライトに似た4本のタイバーが取り付けられている。
キャンプでの使用も想定して、ドアとリア・サイドウインドウの下には「ユーティリティ・レール」が設置されている。このレールには、ライトなどを取り付けることが可能だ。
内装についてはまだ明らかになっていないが、さまざまな機能が盛り込まれているようだ。
「見た目をよくするためにデザインしたわけではありません。スペースを活用しました」とエクイエは言う。
イネオスは独自でオプションや後付けのキットを用意するが、他のパーツメーカーも追加キットを作りやすいよう「オープンソース」にすることをためらわない。
ハイルマンは、「クルマの用途は、オーナーによってそれぞれ異なるでしょう。これは喜ばしいことです」と語った。
シャシーとパワートレイン
ハイルマンは、グレナディアは旧型ディフェンダー110よりも重くなると予想していると述べた。
目標重量は2400kg前後だが、現在の初期プロトタイプでは80kg重く、オフロード性能を向上させるためにはさらに重量を減らす必要があるという。
イネオス・グレナディア イネオスイネオスが採用しのはBMWの直6エンジンであるB57/B58シリーズで、モジュール式の3.0Lガソリンまたはディーゼルの直6ユニットが搭載される。
ZF社が提供する8速AT(および独立したローレンジ・トランスファー・ケース)を介して各車輪を駆動する。
スペックはモデルにもよるが、264psから400ps近くの出力を発揮すると思われる。
ハイルマンは、グレナディアの性能はオフロードを優先したものになるが、オンロード性能は「ジープ・ラングラーなどの運転に慣れている人には問題ない」と述べている。
ボディオンフレーム・シャシー、ツインライブアクスル、非独立コイルサスペンションなど、比較的古い技術が多く使われている。トヨタ・ハイラックスでさえも独立したフロントサスペンションを備えている現在では珍しい。
しかし、ボディはアルミニウム、高強度スチール、複合材を複雑に組み合わせて構築されている。
「アルミが強度や衝突安全の観点で、必ずしも最良の選択とは限りません」とハイルマンは言う。
ただ、ボンネット、ドア、マッドガードなどの外皮の多くはアルミニウム製だ。
スケジュールとマーケティング
テナントとハイルマンは、COVID-19の影響を多少受けたものの、プロジェクトは数週間しか遅れていないとしている。
ハイルマンは「スケジュールはタイトです」としたうえで、次のように語ってくれた。
イネオス・グレナディア イネオス「2021年までに生産ラインを稼働させ、同年の終わりには生産車をラインから送り出すことができるようにしたいと考えています」
「今のところは順調に進んでいます。主要なサプライヤーは、当社に協力してくれています」
「課題は、コンポーネントをまとめて適切にテストすることです」
テナントは、販売網の構築については確定していないものの、可能な限り自社で直接販売したいと考えていると述べた。
この点については近日中に発表予定である。
「自動車販売の業界は現在、かなり急速に動いています」と彼は残念そうに語った。
まずはヨーロッパと北米が主要市場となるだろうが、イネオスはオーストラリア、アフリカ、東南アジアにも強い関心を示している。
グレナディアの頑丈さに対する自信の表れだろう。
「ドライブ体験施設は最優先事項になるでしょう。街中を走り回っているだけでは、誰もこれを買いたいとは思わないでしょう」
