酒屋は「必要不可欠」?(提供写真)

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【現地発 新型コロナ全米パニック】#4

小池知事の外出自粛要請から長蛇の列 棚から食品が消えた

 ニューヨーク州が「NYS on Pause」令を発動し、「エッセンシャル・ビジネス以外は閉鎖、全員自宅退避」の命令を出して数日が経つ。ニューヨーク州民の間で「エッセンシャル・ビジネスって、つまり何よ?」という素朴な疑問が持ち上がっている。「エッセンシャル」で辞書を引くと「必要不可欠な」「極めて重要な」。今の状況に合わせてもう少し噛み砕いて訳すなら、「生活必需産業」だろうか。

 例えば、リストには医療機関、獣医のクリニック、食材店、薬局、ガソリンスタンド、コインランドリー、銀行、報道メディア、電気技師ほか修理技術者、交通機関、福祉事務所などがある。全部納得だ。ちなみに、自宅退避命令といっても外出が禁止されているわけではない。食材の買い物や、短時間の散歩などは許されている。

 さて、その割と多いエッセンシャル・ビジネスのリストの中に、「酒屋」があって、ちょっと笑った。酒屋がこの非常時の「生活に必要不可欠な、極めて重要なビジネス」として、医療機関と肩を並べるとは思っていなかったから。考えてみたら、緊急時だからこその酒屋かもしれない。

 ずっと自宅にいてストレスもたまれば、アルコール依存症じゃなくても多少の酒は飲みたくなるというもの。事実、今ニューヨークで酒屋は大繁盛している。

■禁酒法時代のような混乱避けた?

 うちの近所にある酒屋のインド人店主が言った。「酒屋を閉めると、昔の禁酒法時代みたいな混乱が起こるんじゃない?」と。実に鋭い指摘だと思った。

 その酒屋にさっき行ってきたら、「4月3日に90歳になる」と大声で自分の誕生日を宣伝する白人の若々しい(!)おばあちゃんが、元気に酒を買っていた。4本くらい袋に入れて、「重いわね。持てるかしら」。このおばあちゃん、自宅にこもっていなくていいのか。

 もう一つ、これはなるほどとうならされたのが「葬儀屋」だ。非常時でも人は死ぬ。コロナウイルスで死ぬ人もいる。地元のケーブルニュースチャンネル「NY1」が、3月23日に催されたクイーンズ区での葬儀の様子を放送していた。参列者は家族だけに制限し、知人友人にはオンラインでの葬儀参列を呼びかけているとか。

 そしてこのリスト中、特に薬局チェーンは勢いがあり、大型チェーン「CVS」は新たに5万人を採用し、ニーズに対応しようとしている。  =つづく

(佐々木香奈/NY在住ジャーナリスト)