三木谷浩史会長兼社長

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 三木谷浩史会長兼社長が掲げる楽天市場の「送料無料化」に対し、テナント業者で構成される楽天ユニオンが反発している。2月10日には、ユニオンの訴えを受けた公正取引委員会が、楽天に立ち入り調査を行った。

 これを受けてか、三木谷社長は2月13日に会見を行い、送料無料サービスの名称を「送料込み」に改めると発表。送料無料化はAmazonなどライバルに対抗する手段だと訴えた。

 公取の調査については、

「価格をわれわれの裁量で左右しているつもりはないし、優越的地位の濫用には当たらない」

 と、独占禁止法には抵触しないという見解を示した。

 昨年8月に楽天が打ち出し、今年3月からの導入を予定している「送料無料」。その名称を「送料込み」に変える、というわけだ。背景にあるのは、出店者ごとに異なる送料や送料の無料基準を統一したいという狙いだが、これに出店テナント側は反発し、昨年10月、約400の業者が集う楽天ユニオンが結成された。今年1月には4000の署名を集め、公取委に「送料無料」の撤回を求めてもいた。

三木谷浩史会長兼社長

 そこに来て三木谷氏が発表した「送料込み」への変更。楽天ユニオンはどう聞いたか。テナント出店者で委員長の勝又勇輝氏は、

「『送料込み』と言っているが、送料無料化という方針と何も変わっていない」

 と、楽天の“場当たり的”な対応を批判する。

「そもそも送料無料化を言い出した昨年8月の頃は、全国一律で3980円以上の買い物が対象でした。ところが10月になって、沖縄への発送は9800円以上でないと無料でなくなりましたし、お酒も無料の対象外とされました。こういったテナント側に示すルールが、コロコロ変わるのはしょっちゅうです。最近では、販売ページに提示する商品の画像を『白の背景にしろ』というのもありましたね。楽天としてのサイトの見栄えを統一したいのでしょうが、出店者側はすでに用意している画像を取り下げ、あらたに作り直さないといけないわけです」

 Amazonというライバルに対抗するために、「送料無料化」を持ち出すことにも懐疑的だ。

「そもそも、時価総額がAmazonは約100兆円であるのに対し、楽天は約1兆円と、商売の規模が全然違います。テナント側の我々からすれば、出店側が商売をしやすい環境を、まず整えるべきではと思います。たとえば発送面でも、Amazonには、フルフィルメント(FBA)という、Amazonが全自動で出荷を代行してくれる出店者向けサービスがあります。一応、楽天にも楽天スーパーロジスティックス(RSL)という同じようなサービスがありますが、最終的な受注確認はこちらがやらなければならないなど、AmazonのFBAに比べると手間がかかります。また、ヤフーショッピングと比べても楽天は、運営側が出店者から徴収する額が大きい。私の店舗では、楽天が徴収するシステム利用料は5%。たとえば、税抜き5万円で送料500円の商品を売った時には、消費税5000円を含めた「5万5500円」の5%、2750円を楽天に支払うことになります。更に、お客さんの決済方法に応じた追加の手数料というのもあって、仮にこの5万5500円を楽天ペイで払うとなると、これまた契約に応じて3%前後が、別途楽天に取られることになる。仮に3%として1665円。つまり、トータルで、4415円を楽天に収める必要があります。私の店では楽天ペイは導入していないものの、仲間にやっている人は多くいます。こうした仕組みも、はじめは商品価格の5万円に対してしか課金されない仕組みだったのですが、2012年11月1日から一方的に規約を変えられ、送料なども徴収の対象になってしまった。その点、ヤフーショッピングは昔の楽天と同じで、利用料も低い。5万円の商品を売った場合、ヤフーに払う手数料は商品価格に対する3・5%の1750円で済むんです」

 古くからの社風を知る楽天の元社員に言わせると、

「三木谷さんは信念を持ってやる人。2010年に新経済連盟という経済団体を立ち上げたときには『ロビー活動をやる』と堂々宣言したくらいですから。たとえば、2016年5月から始めたドローンによる商品配送サービスを行う時には、あらかじめ国交省に“根回し”を行っていましたね。ですから、送料無料化も問題がないか、関係各所にきちんと相談しているのでは。公取委の調査は問題ないと出ると思います」

 とのことだが、さらなる火種の気配もあって、

「今後は、優越的地位濫用等を訴える集団提訴も検討中です」(ユニオンの勝又代表)

 これだけ楽天に不満を抱えているのならば、いっそ撤退すればいのではと思われるはず。しかし、容易に撤退できない現実がこの問題をややこしくさせている。

「私の店の場合、6割ぐらいの売り上げを楽天が占めています。撤退すると大きな打撃です。ユニオンのメンバーの店舗は、従業員10人に満たない零細業者がほとんどで、私と似たような状況の方たちですからね……」(同)

角田裕育(すみだ・ひろゆき)
ジャーナリスト。兵庫県神戸市出身。北大阪合同労働組合青年部長、ミニコミ誌記者などを経てフリーに。著者に『セブン-イレブンの真実〜鈴木敏文帝国の闇〜』(日新報道)、『教育委員会の真実』(宝島社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年2月27日 掲載