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GLCクラスのクーペ版

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)photo:Keisuke Maeda(前田恵介)

車名のとおり、GLCのクーペ仕様であり、日本には2016年から導入されている。このマイナーチェンジ(MC)では、内外装のフェイスリフトとともに「ハァイ、メルセデス」でお馴染みのインフォテインメントシステムのMBUX採用や安全装備の拡充などの最新ベンツ車同様のアップデートが行われた。

母型とも言える標準ボディの「GLCクラス」は、CクラスをベースとしたクロスオーバーSUV。と言ってもCクラス・ワゴンに対してホイールベースは35mm長く、全長は50mm短い。ざっくりした計算値ではキャビン高(厚)は15cm以上増加。CクラスをSUV風に再設計したというより、要素を用いてSUVに仕立て直したと捉えたほうが正しいだろう。

安定感のあるワイドなフォルムとなり、精悍な顔つきのエクステリア。

GLCクーペが何であるかは、その「GLC」と外観を比較すれば一目瞭然だ。

「GLC」のルーフラインは緩やかな曲線を描きながらほぼ水平にリアピラーへと繋がる。GLCクーペはセンターピラーから下がり始めてリアゲートへと連続するファストバック風のデザイン。

テールランプ周りのデザインも異なる。

内装 ヘッドクリアランスは?

後席や積載性を蔑ろにしたと言っては語弊があるが、GLCクーペが前席優先のモデルであることはスタイルが雄弁である。

ただし、「嵩張るアウトドアギアを積んで」というのは無理があっても、一般的な用途には十分な実用性を備える。

コクピットにはホールド感の良いスポーツシートのほか、スポーツステアリングやラバースタッド付きステンレスペダルが装備される。

視角的圧迫感や乗降時の頭抜けに気を使うが、ヘッドクリアランスやレッグスペースは男性にも十分であり、見た目に比べて実用性への配慮も利いている。趣味性と実用性のバランスしたモデルでもあるのだ。

試乗車はGLC300 4マティック・クーペ。このMCで追加された新モデル。

AMG仕様を除いた上位設定モデルであり、258ps/37.7kg-mを発生する2Lターボを採用し、電子制御エアサスを標準装着。内外装や装備だけでなく、ハードウェア構成もプレミアムSUVに相応だ。

最低地上高は?

このルックスで、どのくらいの悪路踏破性を示すか興味深かったのだが、試乗ルートにはオフロードコースも林道もない。

カタログに記される最低地上高は160mmとなっているが、これは社内測定値であり、かなり控え目の数値に思えた。下まわりを見ても轍や段差跨ぎなど悪路走破の要点となる部分では180mm超級の印象。

緩やかな曲線のルーフラインからリアエンドまでの流れるようなラインは、ファストバック風なデザイン。

加えて電子制御エアサスには車高アップのオフロードモードが備わり、4WDシステムは一輪が浮いた状態でも接地輪に駆動力を伝えるスリップコントロール機能があり、ハードクロカンはともかくとして、アウトドアレジャー用途を前提としたSUVに相応な悪路踏破性を期待してもいい。

肌触りの良い乗り心地

もちろん、走りの軸脚はオンロードにある。高速操安を重視するのは良識だろう。

横Gに対するロール角は少なく、ストローク速度は低く抑えられている。操舵回頭反応の遅れはないが、回頭そのものは穏やか。踏み締めるような操縦感覚であり、素早い転舵や切り返しでも最小の挙動で収まる。

メルセデス・ベンツGLC 300 4マティック・クーペの後席

ハンドリングの切れ味という点では他のベンツ車同様に多少“鈍”なほうだが、ハイアベレージでのワインディング走行におけるストレス軽減に大きく役立ち、それが身を委ねるような安心感を生み出している。

サスチューニングは高い重心と重い車重を抑え込むために相応の硬さだが、粗さを感じさせるような振動や突き上げはない。目地や修復跡の通過では角を包み込むような穏やかさを示す。硬めでも肌触りのいい乗り心地である。

注目は、加減速コントロール

パワーに関しては申し分なし。

車重等のスペックからしても不足などあるはずないが、感心させられるのは速さではない。加減速コントロールのフィールである。

メルセデス・ベンツGLC 300 4マティック・クーペ

多くのダウンサイジング・ターボ車がそうであるように低中回転で豊かなトルクを発生し、ふだん使用する領域では巡航ギアや1段ダウンシフトで済ませ、3000回転を超えることは滅多にない。だからといって巡航ギアを強引に維持している印象はない。

山岳路などのアクセルの開閉頻度が高い状況では早いタイミングでダウンシフト。アップシフトを遅らせて巡航ギアより1段低いギアを用いる時間が長くなる。

アクセル操作に対する細かな加減速反応がよくなり、エンジン回転数等で走行状況も直感的に伝わってくる。

いいクルマの走りとは

平坦で速度も落ち着いた状況になると、山岳路を同じように踏み込んでもダウンシフトを堪える。巡航ギア維持でトルクに任せて引っ張っていく。

必要とする駆動力が同じでも運転パターンや走行状況に応じて変速制御を変えているのだろう。その按配がとてもいい。

メルセデス・ベンツGLC 300 4マティック・クーペ

スポーティなルックスで迫力の走りを期待しているドライバーには手応え薄いタイプかもしれない。パワーフィールもフットワークもドライバーや同乗者に与えるストレスの低減を主とするタイプで、高性能を主張するような演出はない。

いいクルマの走りは実速度に比べて体感速度が低く感じられるものだが、そのとおりの走りである。

ルックスの割に、意外と堅実

試乗車の身上書を見てみると、オプションを含む車両本体価格は924万8000円。そのうちの117万8000円が内外装関連のOP。最も高価なのはレザーエクスクルーシブパッケージで、HUDや高機能空調、シートベンチレーターなどの快適性向上装備を含むものの55万2000円。

ベンツ車では定番のAMGラインが39万9000円である。SUVとして選ぶならこの2つのパッケージOPは不要とも思えるが「クーペ」のキャラを考えると装着したくなる。やはり1000万円の予算建ては必須か。

ステアリングの左右には、インフォテインメントのすべてが、ステアリングから手を離すことなく操作できるタッチコントロールボタンが装備される。

アウトドアレジャーのための道具として選ぶなら到底投資回収は不可能である。「けっこう実用的」も「スタイリッシュ!」も副次的な魅力。投資回収は「贅」で賄うのが基本だ。

輸入プレミアム車では常套だが、その「贅」の捉え方、あるいは価値感をどこに置くかがGLCクーペの評価では最も重要だろう。

クーペルックは外に向かって誇示する魅力だが、乗ってみれば多くの魅力はドライバーや同乗者に向かっている。それは特別な趣味の自己満足という類ではなく、ふつうの感覚での心地よさ。安心とか馴染みとか寛ぎというような感覚であり、それが乗り味や運転感覚、座り心地とどこからも感じられるのが見所。

それらの魅力は使うほどに過ごした時間ほどに価値を増していく。ちょっと「遊び人」風のイメージもあるが意外と堅実なモデルなのだ。また、スポーティ&スペシャリティ嗜好がなければGLCと合わせて考えてみるのもいいだろう。

GLC 300 4マティック・クーペ スペック

価格:807万円
全長:4730mm
全幅:1930mm
全高:1600mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:10.7km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1890kg
パワートレイン:1991cc直4ターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:258ps/5800-6100rpm
最大トルク:37.7kg-m/1800-4000rpm
ギアボックス:9速オートマティック

メルセデス・ベンツGLC 300 4マティック・クーペの荷室