「運転再開の見込み立たず」と伝えるJRの掲示(筆者撮影)

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千葉県を中心に、各地に大きな被害をもたらした台風15号。2週間以上が経った2019年9月24日午前時点でも、なお約1500戸が停電、500世帯近くで断水が続く。

今回の台風をめぐっては、国や自治体の初動対応の遅れや、必要な情報が現地になかなか届かなかった点が議論を呼んだ。地元でも、被害状況の把握には、少なからぬ時間がかかったようだ。千葉県在住のライター・早川清一朗さんが、自らの体験を明かす。

道路を隔てた一歩先は「被災地」

9月8日から9日にかけて東海から関東地方を襲った台風15号は、多くの被害をもたらしました。

千葉県で発生した停電や断水は、2週間以上経過してもなお完全復旧には至っていません。各地で倒木が道路を寸断しており、食料不足に陥った地域もあります。破損した屋根を直そうとした方が何人も負傷・死亡しており二次被害も深刻です。

筆者自身も千葉県のある都市に在住しておりますが、幸いごくわずかな停電に見舞われただけで被災は免れました。しかし道路を隔てた隣の地域では2日間の停電に見舞われています。更に少し離れた地域では停電は1週間続き、一時食料も不足しました。

そして恥ずかしながら、筆者自身は大した被害を受けなかったこともあり、自分が「被災地」にいることに気づくのに、約半日を要しました。そのときの状況を書き残しておくことにします。

フードコートにはもの凄い数の人が

9月9日朝、在宅勤務のため出勤をする必要が無い筆者は、総武線津田沼駅で発生した大行列を、半ば呆れながら眺めておりました。千葉県には風雨に弱い路線が複数存在しており、台風の後は不通となることが多く、これは予想の範囲内だと考えていたのです。

この時の筆者は、まだ今回の台風がいつものように通り過ぎただけで、明日には電車も復旧するだろうとのんびりかまえていました。

自分の甘さを認識したのは、Twitterで流れてきたスーパーの看板がへし折れている画像を見てからでした。公園や道端の木々もかなり倒れていると知り見に行ったところ、根っこから掘り返されるようにして倒れている木や真っ二つになっている木を見つけたので写真に収めています。

これは少しまずいのではないかと思い、大型商業施設に向かい食料を調達しようとしたところ、フードコートに物凄い数の人がいることに気づきました。これは後で知りましたが、停電した地域から涼をとりに避難していた方々でした。

「家族が被災しているけど何がどうなっているのか分からない」

今回の災害の特色としては、被害の大きな地域から情報があまり流れてこず、救援の初動が遅れたということがあります。筆者の地元も当初は中々情報が出てこなかったためか、翌日以降は地元を離れた知人友人たちから「家族が被災しているけど何がどうなっているのか分からない。情報をくれ」という問い合わせが続き、避難所の情報を調べたり給水場所と時間を調べて伝えたりと対応に追われました。

筆者の地元は東京から電車で1時間圏内のベッドタウンであり、過去の災害でも1週間以上の長期にわたって被災していたのは東日本大震災くらいしか記憶にありません。あの時とは違い、今回は都心では普段通りの生活や業務が営まれており、そのギャップも筆者を始めとした千葉県民を苦しめた側面があると思います。

またもう一つ付け加えると、なぜ津田沼駅に大行列が出来たのか。それは責任感だけではなく「都内にある会社は、千葉県の状況を考えてはくれない。出社しないとどんな評価をされるか分からない」という恐怖心があったように思えます。

願わくば災害時には可能であればリモートワークに切り替えるなど、柔軟な対応をお願いしたいと思います。それが会社と社員、双方の利益につながるはずだからです。

(ライター 早川清一朗)