昨年8月にストラスブールへ移籍したGK川島永嗣【写真:本人提供】

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【フランス現地インタビュー】長谷部、長友ら同じく海外で奮闘する仲間たちへの思いを告白

 日本代表GK川島永嗣は2018年8月、自身にとってフランス2クラブ目となる1部ストラスブールへ移籍した。

 第3GKとして挑戦を続けてきたなか、バヒド・ハリルホジッチ監督率いるナントとのリーグ・アン最終節で今季初出場し、1-0とクリーンシートで勝利に貢献。ストラスブールは11位でシーズンを終え、リーグカップにも優勝して来季はUEFAヨーロッパリーグ予選から参戦するが、川島は今季の収穫について「心の充電くらい(笑)」と話す。

「この4年間、ものすごくいろいろな思いをしてきました。ワールドカップが終わってからも自分の中での欲求、向上心はまったく変わらない。ただ、この1年間で何が成長したかという答えを考えると、『ここが成長できた』と言える状況ではありませんでした。プロとして結果を残せなければ、自分の中で得たものがあるとは言えないと思うので」

 2010-11シーズン、ベルギーのリールセに入団して以降、川島はすでに10年近く欧州での挑戦を続けている。日本から海外リーグへ移籍する選手が加速的に増えたのも、川島がゴールマウスを守った2010年の南アフリカ・ワールドカップ以降だ。今年1月のアジアカップ決勝は、日本代表史上初の“スタメン全員海外組”という顔ぶれになった。

「みんなよく頑張っていますよね」

 川島は同じく海外で奮闘する仲間たちに思いを馳せる。

 1学年下のMF長谷部誠は今季、フランクフルトでリベロとして地位を確立するなど35歳にして自己ベストと言ってもいいシーズンを過ごした。やはり同世代への思いは強い。

「マコ(長谷部)も、今この年齢になってああやって評価されるくらいのパフォーマンスができるのは素晴らしいことですよね。ヨーロッパリーグの準決勝(チェルシー戦)を観に行ったんですけど、あのレベルでやれるっていうのは、最高の幸せだと思いました」

 長年、日本代表で共闘してきたDF長友佑都は、昨季途中にイタリアのインテルからトルコのガラタサライへ移籍。主力としてリーグ連覇に貢献した。

「サッカー界の物事が変わっていくスピードの速さを考えた時、日本だったら同じチームに5年以上いるのは普通だったりしますけど、欧州では5年もいたらびっくりされる世界。それだけ入れ替わりや変化が激しいなか、これだけのトップレベルで、より多くのものを求められる外国籍選手として戦い続けるのは、並大抵のことじゃないです。同じ選手として客観的に見ると、この10年間トップレベルでやれるのは本当に凄いと思います」

フランスの名門で主力を張る酒井を称賛 「マルセイユでやる凄さをもっと分かってほしい」

 同じリーグ・アンでプレーするマルセイユDF酒井宏樹については、フランス移籍後の変化を感じているという。

「彼はマルセイユに行って、選手としても、人間としても大きく成長しましたよね。以前よりキャラクターも強くなっている感じがあります。そうでないと、マルセイユではやっていけないんでしょうね」

 今季の酒井は名門マルセイユで、DF陣に怪我人が多いなか、主戦場の右サイドバックだけでなく、左サイドバックやセンターバックも務めるなどマルチな才能を発揮した。第37節トゥールーズ戦(5-2)ではリーグ・アン初ゴールもマーク。ファン投票によるクラブの5月度月間MVPにも選出されるなど、リュディ・ガルシア監督にとってなくてはならない戦力だった。

「今は海外でプレーする選手が多すぎて、マルセイユでレギュラーを張る凄さがなかなか伝わっていない部分があると感じます。フランスのマルセイユというビッグクラブで、やっていることの凄さをもっと多くの人に分かってもらいたいですね」

 昨冬、DF昌子源は初の海外挑戦でフランスのトゥールーズにやってきた。川島は「普通にやれているから本当に凄い。周りが見ていたら(新入りという感覚は)一切ないです」と舌を巻く。今年1月19日の第21節ニーム戦(1-0)でデビューして以降、昌子はカップ戦も含めた公式戦全試合にフル出場。定期的に連絡を取り合っているという後輩のセンターバックに対し、「全試合を見ているわけではないですが、頼もしいなと思いました」と賛辞を惜しまない。

冨安らの台頭で激化するハイレベルなCB争いに川島も興味津々 「ワクワクします」

 同じGKというポジションで、今年1月にポルトガルのポルティモネンセへ移籍した権田修一にも川島はエールを送る。権田とは、彼がオーストリアのSVホルンから日本に戻った後、練習をともにしていた間柄だ。

「この前(最終節で試合に)出ていましたよね。頑張ってほしいです。ゴンちゃん(権田)は家族もいるし、日本にいられる年齢だと思いますけど、その環境を置いてでも、敢えて挑戦しているというのは素晴らしいです」

 一方で、川島は進境著しい若手とも交流がある。ベルギーのシント=トロイデンで活躍し、日本代表のレギュラーに定着したDF冨安健洋とは旅行先のロンドンで対面した。

「彼とはロンドンへ旅行に行った時に一度会ったんです。若くてポテンシャルがあるし、源(昌子)や植田直通(セルクル・ブルージュ)たちも海外に出始めて、『誰が日本代表になる?』という競争がある。みんなそれぞれが頑張っているなかで、その上でさらに競争があるわけじゃないですか。そういう高いレベルでの競争が出てきているんだな、というのを傍から見ると、楽しみですよね」

 そう言って、川島は少年のように瞳を輝かせる。

「今までは麻也(吉田/サウサンプトン)しかいなかったですけど、若いセンターバックがこうやって海外に出始めて、(海外リーグの)基準でできている。日本代表でその中から誰が出るかも分からない。だからワクワクします」

 森保ジャパンの左サイドで不動の地位を築くMF中島翔哉は、今年2月にポルトガルのポルティモネンセからカタールのアル・ドゥハイルへの移籍を決断した。20代半ばでの中東移籍に対しては少なからず疑問の声もあったが、海外で挑戦を続けてきた川島は持論を語る。

「彼には彼の考え方があると思うし、彼のサッカー人生だから良いと思います。固定観念で決めたり、どこのリーグが良いというようなことに縛られる必要はない」

「どうしたら世界で上に行けるか、一人ひとりがどれだけストイックに見つめていけるか」

 そして川島は、改めて「海外でプレーする意義」について自身の考えを語った。

「“誰”とか、“どのクラブ”とかじゃなく、ロシアでのワールドカップが終わって、まずは東京五輪に向けて、若い選手が今後日本を背負っていかないといけないというのは間違いなくあると思うんです。今までの日本代表の良さというか、みんながなぜ海外に出たかというと、純粋に日本を強くしたいという思いが一人ひとりすごく強かったから。海外に出ることが、時代の流れ的にも普通になってきていますけど、若い世代の選手たちにも、今後自分たちが日本を背負っていくんだ、という気持ちでやってもらいたいと思います」

 川島自身は、“場所に捉われる必要はない”と考えているという。

「正直、どこでも良いと思うんです。久保(建英/FC東京)くんがバルセロナなのか、翔哉がカタールなのかとかは。ただ、自分たちの挑戦の裏に、日本をより強くするとか、世界の中でもっと上へいく、という野心を常に持っていてもらいたいとは思います。

 僕もそのスタンスはまったく変わりません。もちろん、個人の夢や目標がそれぞれある。でも、その先に日本のサッカーを強くする、という強い気持ちがあってほしいし、今の若い新しい世代には、そういうことが求められていくと思うので」

 海外移籍する選手が珍しかった昔と今では、日本での報道も大きく変わった。以前は練習での様子まで逐一伝えられていたが、近年はレギュラーで出場していても、よほどの活躍でない限りは取り上げられないこともある。

「何が本当に大変で、何が価値があるかはなかなかフォーカスされませんが、(海外でやることの)本当の価値、そこで何を得られるかという部分は、根本的には変わっていないと思うんです。ただ“海外に出る”ことが目的ではないし、どんな環境であっても、何が日本のサッカーを強くしていくのか、本当の意味でどうやったらより世界の中で上に行けるかという根本的な問題や課題は変わらない。そこを一人ひとりが、どれだけストイックに見つめていけるかだと思います」

 6月のキリンチャレンジカップ、コパ・アメリカの日本代表メンバーにはFC東京の17歳MF久保建英が初選出された。今後の日本を担う若手世代と、川島らベテラン勢が融合して戦う日本代表に注目したい。(小川由紀子/Yukiko Ogawa)