ヤクルト・青木宣親=神宮(C)KYODO NEWS IMAGES

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◆ 千両役者・青木の劇的サヨナラ弾

 青木宣親選手、五十嵐亮太選手のベテランふたりの活躍でヤクルトが中日に連勝した。

 4月6日の中日戦は、休養のために先発を外れていた青木。出番が巡ってきたのは3−3の同点で迎えた延長12回裏、2死走者なしの場面だった。アウトになればそのまま引き分けでゲームセットという土壇場だ。

 代打で登場した青木はカウント1−1から小熊凌祐の外角直球を一閃。低く速い打球は中日ファンの悲鳴が渦巻く左翼スタンドに到達し、劇的なサヨナラ弾となった。ヘルメットを高々と放り上げ、チームメートが待つ本塁へ飛び込んでいく姿は、まさに千両役者と呼ぶべきものであった。

 その前日、4月5日の中日戦で燕党を魅了したのは五十嵐。かつて石井弘寿(現ヤクルト一軍投手コーチ)とともに「ロケットボーイズ」と呼ばれた五十嵐も間もなく40歳。たしかに、当時のような豪速球はもう投げられない。それでも、その直球のキレはいまだ健在だ。

 1点のリードを許していた8回のマウンドに上がった五十嵐。まずは先頭の阿部寿樹を内角高めの直球で三振に斬って取ると、続く亀澤恭平も直球で二飛に打ち取った。そして、大野奨太にも直球勝負を挑むと、打球は中堅・青木のグラブに収まった。

◆ 五十嵐が古巣で10年ぶり勝ち星

 わずか10球で三者凡退に抑える五十嵐の完璧な仕事が味方打線の奮起を呼び込む。その裏の攻撃で先頭の荒木貴裕がヒットで出塁すると、なんと「バントをしない2番」青木が送りバント。「絶対に逆転する」というヤクルトベンチと青木の気持ちが伝わってくるシーンだった。

 その後、山田哲人とバレンティンが好機を広げ、西浦直亨の2点適時打が飛び出し見事逆転。五十嵐が10年ぶりとなる古巣・ヤクルトでの勝ち星を挙げることとなった。

 印象的だったのは、その8回の攻撃中の青木と五十嵐の姿だ。それぞれに仕事を終えてベンチに戻ってきたふたりがベンチの最前列で大声を張り上げてチームを鼓舞する。逆転の瞬間には何度も拳を振り上げて喜びを爆発させていた。そんな姿を見れば、チームメートもファンも胸を熱くさせられる。

 それぞれにヤクルトを巣立ち、多くの経験を積み重ねて再びヤクルトに帰ってきたふたりのベテランが、その活躍と存在感でチームをひとつにしている。かつての投打の両輪ともいうべきふたりが、2019年のいま再び神宮のグラウンドに立っていることは感慨深いものがあるし、チームにとって大きな戦力であることも素晴らしい。

原・巨人の強さがメディアをにぎわせた開幕1週間だったが、ヤクルトのベンチを見ていると、多くの評論家が優勝候補に挙げる巨人や広島を押さえ、ペナントレースを制することも大いにイメージできるのである。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)