どこまで真に受けてよい? 「無礼講」の飲み会で求められるマナーとNG行為とは?
2018年も残りわずか。忘年会などお酒を飲む機会が増えるシーズンの中、「無礼講」についてネット上で話題になっています。無礼講とは「堅苦しくせず、リラックスして楽しむ」などの意味合いで使われることが多いですが、「今日は無礼講で!」という上司のあいさつから始まる会社の飲み会に参加した際、どのように振る舞うのがよいか悩んだことのある人も多いようで、「どこまで真に受けていいの」などの声が上がっています。
「無礼講」の飲み会での適切な振る舞いについて、「マナーは互いをプラスにするもの」をモットーに、国内外の企業や大学などで人財育成教育やマナーコンサルティングを行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画でマナー指導を行い、国内外で85冊以上のマナー本を出版するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。
柔らかい話し方で、程よく崩す
Q.そもそも、無礼講とは何でしょうか。
西出さん「辞書によると『講』は『寄り合い、何人かが集まって話し合うこと』を意味します。『無礼講』とは文字通り、皆の話し合いの場(=講)で、『礼』が『無』いことを指します。ただし、『礼が無い』からといって、何もかも好き勝手にしてよいわけではありません。
地位や身分の異なる人たちが集まる宴には、『席次』があります。位の高い人は上座、低い人は下座のように、『講』にも席次があります。無礼講とは、こうした席次に縛られることなく、『好きな席へ自由に座ってよい』ことを表すものです。本来の席次に従えば、隣同士に座ることのない社長と若手社員も、無礼講によって自由な席に座れるようになることで、普段とは異なるコミュニケーションが図れるという意味合いがあるのです」
Q.お酒の席で、上司から「今日は無礼講だ」と言われた際の正しい振る舞い方とはどのようなものでしょうか。
西出さん「無礼講だと言われても、基本は『親しき中にも礼儀あり』であることに変わりありません。相手に対して丁寧に接することを忘れないようにしましょう。しかし、『きちんとしすぎる』のはどうでしょうか。会社の飲み会での立ち居振る舞いは、それぞれの企業の風土や方針などによってさまざまです。ですから、一概に『こうするのが正解』とは言えないものです。
マナーの大前提は、相手の立場に立つことです。丁寧できちんとしていること自体はよいものの、あまりにもきちんとしすぎていると相手に“壁”を感じるのが人間というものです。自分が上司の立場だったらと考えてみましょう。壁を感じるような接し方をすると、『気を使わせているかもしれない』などと思わせてしまう可能性もあります。せっかくの無礼講の席ですから、あまり堅くなりすぎず、程よく崩すことを相手と場合に応じて意識するとよいのではないでしょうか。
タメ口など『友達に話すような言葉遣い』はもちろんNGですが、言葉遣いも少し親しみを持たせ、いつもより柔らかい話し方を意識するとよいでしょう。こうした振る舞いによって場の空気が柔らかくなれば、心を開いて本音で会話しやすい雰囲気が生まれるはずです。
近年、ハラスメント問題などから、上司はハラスメントにならないよう、大変気を使っています。『あれでも気を使っているの?』と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、上司は上司なりに『無礼講の席でどのように振る舞えばよいのかが分からない』と悩んでいたり、部下の機嫌を損ねないように気を使ったりしている人も少なくありません。そこで、自分から心を開き、良い表情で上司に話しかけてみると喜ばれると思います。
一方で、上司側も『俺たちの若い頃は…』といった、若手が敬遠するような“過去の話”ではなく、今後の発展につながる“未来の話”でコミュニケーションを図れるよう意識することが大切です」
Q.逆に、無礼講の飲み会でのNG行為・発言はありますか。
西出さん「まず行動としては、過度なボディータッチに注意しましょう。無礼講による、少し砕けた“ノリ”で相手をたたいたり、執拗(しつよう)に触ったりする行為はともすれば部下からのハラスメントになりかねません。男性から女性に対してはもちろん、最近では女性から男性への逆セクハラも問題になりやすいため、お酒の席では特に注意が必要です。
また、無礼講で気持ちが緩む時には、言動にも気をつけたいもの。若手は上司に対して、『堅苦しすぎない言葉遣い』を意識するとよいですが、一方で、『過度に砕けた言葉遣い』になる危険性もはらんでいます。『うん』と返事をしたり、『そうなんだ!』などと相槌(あいづち)を打ったりするのは控えましょう。また、偉そうな言動や態度になったり、悪口や暴言を吐いたりするのはもってのほか、逆パワハラにもなりかねません。
無礼講の席では、普段あまり言えないような話をオープンにすることもあるでしょう。その場合も、相手を怒らせたり、恥をかかせたりするようなマイナスの内容を言うことは避けるべきです。逆に『○○さんはいつも7時には出社なさっていらっしゃいますよね。いつからそうなさっているのですか?』など、日頃から思っていたけどなかなか聞けなかったことや、普段は言う機会のない褒め言葉を伝えるなど、お互いにとってプラスとなる会話ができるとよいですね。
無礼講は、普段なかなか話せない人と話し、親睦を深め合う絶好の機会です。あまりかしこまりすぎる必要はありませんが、たとえ無礼講であっても『会社のイベントである』という意識を忘れないようにしたいものです」
Q.もし、NG行為・発言をしてしまった場合や、宴会後に気付いた場合、どのようにフォローすべきでしょうか。
西出さん「行動や発言の内容によっては、相手にとって蒸し返されたくない場合もあるかもしれません。しかし、どんな状況であったとしても、『失礼なことをしてしまった』という自覚があるのならば、申し訳ないという気持ちや姿勢を伝えるためにもおわびをする方がよいでしょう。『昨夜はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした』『今後は気をつけます』といった一言があるだけで、印象は大きく変わるものです。
行動や発言は取り消すことができませんが、おわびもコミュニケーションの一つであると捉え、失敗をプラスに変えるフォローを心掛けましょう」
上司と部下、それぞれが気をつけるべきことは?
Q.無礼講の飲み会において、参加者が意識すべきことは何でしょうか。
西出さん「会社が主催する無礼講の席では、上司/部下のそれぞれが次のことを意識しておくとよいでしょう」
【上司側】
上司・部下ともにリラックスできる雰囲気作りができるか否かが、無礼講の席の居心地やコミュニケーションを左右します。堅い表情では、若手も必要以上に緊張してしまうため、まずは上司側がにこやかで柔らかい表情を心掛けてみてください。また、隣にどんな人が座ろうとも快く受け入れて会話をするように意識しましょう。特に、普段なかなか話す機会のない人と席が近くになれば、よいコミュニケーションのきっかけになります。
若手が隣に座ることも多くあると思いますが、こうした状況においては、たとえ無礼講であっても若手からは話しかけにくいもの。上司側から話題を振るなど、積極的に話しかけていく気配りがあるとよいですね。
一方で、無礼講の場ですから、若手がマナーのない振る舞いをしてしまい、「失礼」と感じる場面もあるかもしれません。しかし、その場で不満を口にしたり、叱ったりするのは、場の雰囲気を悪くする可能性があるほか、本人が酔っ払って覚えていないケースなどもあるため避けた方がよいでしょう。帰り際、または翌日オフィスで顔を合わせた時にそっと声をかけ、教えてあげるのがスマートです。
【部下側】
無礼講の席であっても、会社のオフィシャルな飲み会である以上は、謙虚な心を忘れずに参加することが大切です。普段あまりコミュニケーションのない人などが隣に座ったからといって、戸惑う表情などをしないようにしましょう。また、「どうすればいいのかわからない」「恥ずかしい」などといった気持ちから、「あいさつができない/しない」ことのないように注意が必要です。
どんな時も、マナーの3大基本原則である「感じの良い表情、態度、あいさつ」は、先手で行いましょう。「無礼講なのだから好き勝手にしてよい」というわけではありません。
また、近年の社内の飲み会では、誰よりも社長や上司が皆さんに一番気を使い、食べ物やお酒の減り具合をチェックしたり、追加注文を行ったりする場面も多いようです。それぞれの会社の方針や風土に応じてさまざまな事情もあり、自由ではありますが、誰かがこうしたことを行ってくれたら、その人への「ありがとうございます」は伝えてください。そして、自分にもお手伝いできることがあれば、率先して行動してみてはいかがでしょうか。
常に、皆にとってより過ごしやすく気持ちのよい席となるよう、さりげない気配りのできる人は素敵です。そして、何よりも、部下とのコミュニケーション活性化を目的に無礼講の場を設けてくれた上司に対する感謝の気持ちを忘れないように行動することで、良い一年だったと思える飲み会になりそうです。
