陸自の「空飛ぶ卵」、OH-6Dヘリはかわいい 退役間近、どんなヘリ?
陸自のさまざまな乗りもののなかでも、かわいさに関しては指折りとの声も高いOH-6D連絡観測ヘリコプターですが、2018年5月現在、退役に向けその数を減らしつつあります。そもそもどのようなヘリコプターなのでしょうか。
陸自改編の流れの中で
2018(平成30)年度は陸上自衛隊にとって大きな改革を迎えた年になりました。全国に5つある方面隊を統括する組織として陸上総隊が新設され、島嶼防衛での活躍が想定されている水陸機動団も創隊されました。北熊本駐屯地(熊本県熊本市)に司令部を置く第8師団が機動師団へ、善通寺駐屯地(香川県善通寺市)に司令部を置く第14旅団が機動旅団へと生まれ変わりました。

コンパクトな設計のOH-6D(矢作真弓撮影)。
新たな装備品も仲間に加わっています。74式戦車や87式偵察警戒車の後継として16式機動戦闘車が配備され、水陸機動団が使う水陸両用車AAV7も導入されています。
こうした動きのなかで、ひとつの名作機が姿を消そうとしています。それがOH-6D連絡観測ヘリコプターです。
OH-6Dは1979(昭和54)年から陸上自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁などで運用されていたヘリコプターです。川崎重工のライセンス生産によって、1997(平成9)年までに387機が生産されました。2018年現在で運用しているのは陸上自衛隊だけです。
小柄な機体ですが、最大4名が乗ることができます。最大離陸重量は約1.2tと小さく、機体の重量だけでも約540kgあることから、燃料と人間を最大数で乗せてしまうと、離陸できるギリギリの重量になってしまうそうです。
卵のような形で「フライング・エッグ」とも呼ばれているOH-6Dですが、ほかのヘリコプターには無い機動性の高さを持っています。
さまざまなシーンで活躍も、退役へのカウントダウン始まる
OH-6Dは戦闘機のような複雑な操縦系統を持っていません。操縦桿やペダルは、機械式のロッドによって人力で操作できる機構になっており、機敏に動かすことができると言われます。そのため、TH-480Bという練習機が登場するまでは、陸上自衛隊での回転翼練習機として運用されていたほどです。

訓練を終えて駐機場へ向かうOH-6D(矢作真弓撮影)。
ちなみに、海上自衛隊でもTH-135という練習機が登場するまではOH-6DとOH-6DAという機体が練習機として運用されていました。鹿児島県にある海上自衛隊鹿屋基地では将来のヘリコプターパイロットの養成が行われているのですが、飛行時間の少ない操縦学生たちは、敏感な操縦性能を持つOH-6Dを空中で静止した状態にするホバリングをさせるために、非常に苦労していたといいます。ホバリングが安定せず、フラフラしているOH-6Dの動きは、教官たちの間で「鹿屋ダンス」と言われていたそうです。
陸上自衛隊のヘリコプター部隊に配備されているOH-6Dですが、おもな任務は人や小さな物の空輸です。ほかにも、戦闘地域では、敵の活動を観測して味方部隊に情報提供する役目も持っています。対戦車ヘリコプター隊でも運用されていて、我が国に侵入してきた敵戦車を探し出して、AH-1S対戦車ヘリコプターと共に敵戦車の攻撃に向かいます。といってもOH-6Dが直接攻撃を加えることはなく、AH-1Sに敵戦車の位置などの情報を提供して、AH-1Sが攻撃した後の効果を確認します。その後は、新たな目標を発見するなどの観測任務を担っています。ほかにも、特科部隊が射撃をするとき、前進観測員(FO)という役職の特科隊員を乗せて、目標地域上空から砲弾の誘導を行うといった役割も担います。
このように、陸上自衛隊の活動のさまざまな場面で大活躍するOH-6Dですが、そろそろ退役の時が近づいてきています。
退役後の後継機は…?
陸上自衛隊ではOH-6Dの退役を2019(平成31)年度末に設定していると言われています。最後までOH-6Dを運用する予定なのが、群馬県に所在する第12旅団隷下の第12ヘリコプター隊です。第12旅団は、全国で唯一の空中機動能力を高めた部隊で、第12ヘリコプター隊ではOH-6Dのほかにも、UH-60JAやCH-47J/JAなどのヘリコプターを多く運用しています。

総火演で飛び回るOH-6D(矢作真弓撮影)。
この部隊のパイロットに話を聞いたところ、すでにUH-60JAやCH-47J/JAへの機種転換訓練を開始しているそうで、UH-60JAへの機種転換には約25時間、CH-47J/JAへは約50時間の訓練を受けて鞍替えをするそうです。
OH-6Dの退役後の連絡業務はどうするのか尋ねたところ、軽易な人員輸送や物資輸送でもUH-60JAやCH-47J/JAを使用することになるといいます。また、これらの動きはほかの飛行隊でも発生していて、例えば第1師団の第1飛行隊ではOH-6D退役後はUH-1Jがその任務を引き継ぐそうです。
後継機であるOH-1観測ヘリコプターは、事故の影響によって全機が飛行停止状態で、2018年現在、数機が飛行再開に向けた試験を行っている状態です。全体での機数は、試作機を含めたとしても40機に満たないため、全国のヘリコプター部隊に十分に配備することができません。

総火演で機敏な動きを見せるOH-6D(矢作真弓撮影)。
OH-6Dは、構造が単純で教材としての利用価値が高いといわれています。最近では2017年に、佐賀県にある北陵高校航空科に対して、航空に関する勉強材料としてOH-6Dが無償で貸与されています。
こうして、教材として後継者の育成に身を捧げるOH-6Dですが、陸上自衛隊航空部隊の中では、その任務を多用途ヘリコプターたちに託して、ゆっくりとその姿を消すことになりそうです。
※記事の一部を修正しました(2018年5月31日19時00分)
【写真】OH-6の操縦席まわり

OH-6の左前席。搭載する液晶パネルは赤外線カメラ(FLIR)のモニター(矢作真弓撮影)。
