給食に「もぐもぐタイム」は必要?

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 皆さんは「もぐもぐタイム」と聞いて何を思い浮かべますか。カーリングで話題になったハーフタイム中のおやつの時間でしょうか、はたまた、女子プロゴルファーの渋野日向子選手がラウンド中に駄菓子を食べる時間のことでしょうか。

 実は学校給食でも、給食中にクラスメートとおしゃべりをせず黙って食べる時間のことを、もぐもぐタイムと呼ぶことがあります。食べ物を大事にする気持ちを育む、そしゃく力を向上させ消化を良くするなど食育の目的で行われており、実施する小学校が最近は増えてきているそうです。

 一方で、もぐもぐタイムが児童の苦痛となってしまっているケースもあります。筆者は、お子さんが学校給食に悩んでいる保護者の相談に乗っていますが、もぐもぐタイム中に起きたトラブルが原因で不登校になってしまったという相談事例から、もぐもぐタイムの是非について解説したいと思います。

もぐもぐタイム中、勝手におかわりを盛る先生

 小学校低学年の男の子が、不登校気味になってしまった事例です。お母さんによると、その男の子はもともと食べるのが大好きで、給食の時間も楽しみにしていたそうです。そんな中、進級してクラスが変わったタイミングで、ある男性教師が担任となりました。

 その教師は、クラスの給食の完食率を向上させることを重視していました。クラスメートとの私語を禁止する、もぐもぐタイムの時間も設けていました。ここまでは、たまに見かける「熱心に給食指導をする先生」くらいだと思います。

 しかし、もう少し聞いてみると、行き過ぎた指導ともいえる指導内容もありました。具体的には、もぐもぐタイム中に早く食べ終わった児童に対して、勝手におかわりを盛り付けて回るということです。

 もちろん、早く食べ終った児童に対して、先生がおかわりを盛り付けて回ること自体が悪いわけではありません。ただ、「もう少し食べられる?」と生徒に聞いてから盛り付けるなど、コミュニケーションを取ることは必須でしょう。

 それを、もぐもぐタイムという、児童たちの私語を禁止している時間に勝手に盛り付けるということですから、これは問題があるといえます。

 ちなみに、その先生は隣のクラスの先生たちに「うちのクラスは給食の完食率が高い」と鼻高々に自慢していたそうです。結果的にその児童は「給食が嫌だ」という理由で、不登校気味になってしまったそうです。

 私のところには、小・中学生の子どもたちから直接「給食が食べられなくて悩んでいます」といったメッセージが届きます。そのメッセージ中に子どもたちは「先生が悪い」とは書きません。「私がみんなと同じように、給食が食べられないのがいけないんだ…」と自分を責める内容のメッセージがほとんどです。

もぐもぐタイムのデメリット

 2019年12月22日に東京新聞で掲載された記事「黙々もぐもぐタイム 苦痛? 小学校給食に 続々保護者懸念」によると、「(中国新聞の調査で)広島市立の全142小学校にアンケートをしたところ、回答した106校のうち給食中に私語をしない時間を『設けている』『一部の学年、学級で設けている』としたのは71.7%の76校」と記されています。

 もぐもぐタイムは、広島県の隣の岡山県の教員らによる給食指導の手引書から広まったとされているので、中国地方では比較的広まっていると考えられますが、私が東京都内の学校の教師に講演・研修をするときに、「自分の学校(クラス)で、もぐもぐタイムを行っているという方は手を挙げてください」と質問すると、少なくとも3割程度は手が挙がります。

 もぐもぐタイムは、毎日さまざまな業務で忙しい教師にとって確かにメリットがあります。ルール化することで楽に指導でき、特に低学年などに多い、給食中のおしゃべりや注意散漫で食べるのが遅くなる児童への対応として有効だからです。

 一方で、デメリットもあります。例えば、人前でご飯を食べることができない「会食恐怖症」や、その手前のような状態になっている児童の場合、「食べなきゃいけない」というプレッシャーを感じたり、食べる雰囲気が重く暗くなったりすることで、さらに食べられなくなることもあるからです。

 私は、園や学校の教師の給食指導における悩み相談にも乗っていますが、もぐもぐタイムを実施しなくても給食の完食率が高いクラスは存在します。それを一言で表現すると、「子どもたちの食の個性を把握して、少しずつ苦手なものに挑戦させているクラス」です。

 また、たまに「隣のクラスの先生から、自分のクラスの残飯が多いことを指摘されている」という相談が届くこともありますが、そもそも、残飯を比較するのもどうなのかと思います。進級してクラス替えをするときに“食べられる子”と“食べられない子”をバランスよくクラス分けさせているわけではなく、その点において多少はばらつきが出るはずだからです。

 以上から、そもそも「完食させること」を学校給食の一番の目的とすべきではありませんし、そうしてしまうと、前半で紹介したような事例を招くことにもなりかねません。もぐもぐタイムを実施する場合、「食べなきゃ!」のプレッシャーでさらに食べられなくなる子に配慮して、「全部残さず食べるために」などの目的ではなく、「しっかりと味わうために」などと、目的を再定義することが大切だと思います。

 そして本来、「もったいない」と食材を大切にする気持ちは、押し付けられて育つものではありません。「食は楽しいもの」「食べることが好き」というポジティブな感情がベースにあれば、自然と将来的に「食材を大切にしよう」と思うはずです。日本にはその伝統的な文化があります。

 あなたは、「もぐもぐタイム」についてどう考えますか。

※1月29日発売の拙著「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)では、給食が苦手な子どもに対する解決のヒントを紹介しています。