ブラックホールは直接的な観測を行うことが困難であり、物理学の観点から計算されて作成されたモデルの画像のみで見ることができます。そのブラックホールの魅力に取りつかれたRiccardo Antonelliさんは、自分で理論的な計算を基にしてシミュレーション画像およびリアルタイムシミュレーションムービーを作成し公開しており、物理学が一切分からなくてもブラックホールがどのような形状をしているのか理解できる内容になっています。

Schwarzschild Black Hole

http://spiro.fisica.unipd.it/~antonell/schwarzschild/

Raytracing a Black Hole

http://rantonels.github.io/starless/

Antonelliさんが作成したブラックホールのリアルタイムシミュレーションのムービーは下記から確認可能です。

ブラックホールのリアルタイムシミュレーション(背景:天の川) - YouTube

Antonelliさんが作成したシュヴァルツシルト・ブラックホールの画像がこれ。ブラックホールは物質だけでなく光でさえも吸い込んでしまうほどの重力を持つ天体です。中心にある黒い円は、事象の地平面(シュバルツシルト面)という部分で、シュヴァルツシルト半径より内側になると、抜け出すために必要な速度が光速を超えるため、光子でさえ事象の地平面から抜け出すことはできません。光子を含む全ての物質が抜け出せないことから、事象の地平面は真っ暗。事象の地平面の周囲には光るリングのような物体がありますが、これは重力によってねじ曲げられている光になります。



では、Antonelliさんは一体どうやってブラックホールを視覚化したのかというと、「レイトレーシング」という3次元の画像を計算する技術を使ったとのこと。実世界では、太陽やライトの光が物体に反射して人間の目に入り、人間はモノを見ることができますが、レイトレーシングは人間がモノを見るときに起こっているのと逆、つまり、人間の目から出た視線が伸びて物体に当たり、「物体が人間を見ている」という考え方に基づいた計算方法です。目に飛び込んでくる光を逆方向にたどり、、物体の表面の色や輝度を計算して描画するレイトレーシングを使ってAntonelliさんは、画像やリアルタイムシミュレーションを作ったというわけ。

作成途中では真っ暗である事象の地平面をグリッド化し、どの場所から見ても、事象の地平面が視覚できることを確かめる必要がありました。その時に作成されたのが下記の画像で、一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式の解の1つであるシュヴァルツシルトの解に基づいて事象の地平面をグリッドで表現しています。



映画「インターステラー」でも描かれた、白い降着円盤を持つブラックホールの画像。ブラックホールにおける降着円盤とは、同天体に吸い込まれるガスやちりが形成する円盤のことで、連星系を形成するブラックホールが形成することがあります。ただし、Antonelliさんによると下記のような画像は、観測対象からの光のスペクトルが赤色に偏る赤方偏移といった天文学的要素が考慮されていないとのこと。



Antonelliさんが作成した降着円盤がコレ。降着円盤の色は大部分が白ですが、外側の縁にいくとオレンジがかっているのがわかります。しかし、降着円盤の光がまぶしすぎて、色の変化はうっすらとしかわからないレベル。



ということで光の強さを弱めたのが下記の画像です。外側がオレンジ色になっている他、内側も青白く変化している部分があります。



正面からブラックホールを見るとこんな感じです。



という具合にして多数のモデルとレイトレーシングを使って作成されたブラックホールのリアルタイムシミュレーションムービーは下記URLから確認できます。ただし、赤方偏移による色の変化は省いてあるとのことです。

Schwarzschild Black Hole

http://spiro.fisica.unipd.it/~antonell/schwarzschild/live/

上記URLを開くと表示される、ブラックホールの背景がバルマー系列Hα線にあったシミュレーションムービーは下記から確認できます。

ブラックホールのリアルタイムシミュレーション(背景:Hα線) - YouTube

背景が緯度経度のグリッドなら下記ムービーのようになります。

ブラックホールのリアルタイムシミュレーション(背景:緯度経度のグリッド) - YouTube

家が写っている写真を背景にブラックホールが登場すると、下記ムービーのようにすさまじいことになります。

ブラックホールのリアルタイムシミュレーション(背景:写真) - YouTube

なお、Antonelliさんが自ら開発したリアルタイムトレーシングのソフトウェアはソースがGithubで公開されており、誰でもダウンロードすることが可能になっています。

rantonels/starless · GitHub

https://github.com/rantonels/starless