社長の平均年間報酬

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■社員の平均年収の8〜10倍が目安?

今回は経営者の役員報酬について、考えてみましょう。今はサラリーマンの人でも、将来経営者になる時が来るかもしれません。「自分なんて絶対ムリ」などと言わず、次の数値を見てください。

総務省発表の平成24年就業構造基本調査によると、全国の雇用者数5700万人のうち、役員等の人数は347万人。何と、16人に1人の割合、男性に限ると11人に1人の割合です。何となく、自分でもなれそうに思えてきたのではないでしょうか。もちろん大企業ではもっと狭き門ですが、関連会社での役員就任や起業する方法だってあります。ちなみに、この他に自営業主は600万人も存在します。

では、社長の給料って、どのくらいでしょうか。この表は、労務行政研究所が上場企業や有力非上場企業に対して調査・公表した、社長の平均年間報酬です。ザッと、社員の平均年収の8〜10倍程度といったところでしょうか。ちなみに、これは有力企業を中心とした調査ですので、中小・零細企業も含めた平均額では、この数値よりも大幅に下がると思います。

さて、ここからが本題です。社長の給料は何によって決まるか?

この問いに対して明確な回答はありませんが、概ね次のような要素で決定されていると考えます。

(1)企業規模
(2)世間相場
(3)オーナーか否か
(4)経営者としての功績
(5)企業業績

■1億円以上は上場企業役員のわずか10%

(1)企業規模

たとえば、社員数10人の会社と1万人の会社では、経営者として責任の大きさが異なります。先ほどの平均報酬データでも、社員数300人未満企業の社長を1.0として、1000人以上の会社では1.8倍になっていました。

現在、上場企業では、1億円以上の役員報酬には公表が義務付けられています。昨年度で、400人以上の1億円プレーヤーが出ていますが、退職慰労金を除くと、この人数よりも減少します。多いと思うかもしれませんが、上場企業数3500社程度から見ると10%程度、上場企業の役員数約4万人からは1%。すなわち、日本では上場企業の役員になっても、100人に1人しか1億円プレーヤーにはなれません。「欧米の企業と比べると、日本の社長の給料は安い」というのは、あながち間違いではないのです。

その意味では、「企業規模は影響するものの、日本ではその傾向は緩やか」ということになるでしょう。

(2)世間相場

たいていの社長は、役員報酬を自分で決めることができます。社内では、おそらく最高額となりますので、参考にするのは、先ほど見たような平均相場の金額。あるいは、税理士や経営者仲間からの話を参考にしながら「ウチくらいの会社なら、◯千万円程度が妥当だろう」といった感じです。また、日本では少ないですが、経営者を外部からスカウトする場合には、ヘッドハンティング会社などの情報を頼りに報酬額を設定することになります。

アップルジャパンから、マクドナルド、今年からはベネッセへ経営者として移籍した、原田泳幸氏のようなケースも出てきました。外国人経営者が、役員報酬ランキングの上位に名を連ねるのも、ヘッドハンティング市場の相場がダイレクトに影響するからです。

(3)オーナーか否か

オーナー(大株主)か否かは、社員から見ればあまり関係ないように思えますが、経営者側から見れば極めて大きな要素です。サラリーマン社長であれば、会社が傾いても、減給や最悪クビになるだけです。しかし、オーナー経営者、特に創業者であれば、私財を投じて会社を起こし、銀行借り入れに個人保証を付けられ、多大なリスクを背負いこみます。現在の貢献というだけでなく、このリスクテイク料が加わると考えれば分かりやすいと思います。

ただし、上場企業か非上場企業かで、実際の報酬設定は異なります。本来、株主としてのリスクは、配当として受け取ればよいのですが、税制上、あらかじめ役員報酬として支給された方が、法人税を含めた節税になりやすく、非上場企業のオーナー経営者の多くはこちらを選択します。

一方、上場企業では不特定多数の株主に配当を払わないといけませんので、結果としてオーナー経営者にも相当額の配当金が支払われることになります。日本有数の資産家と言われるソフトバンクの孫社長やファーストリテイリングの柳井社長は、多額の配当金を受け取りますので、役員報酬自体はその実績に比較し明らかに少ない金額設定となっています。

■高給経営者は「創業者」「スカウト」「外国人」

(4)経営者としての功績

就任後、どれだけ企業価値向上に功績があったか、ということです。

例えば、信越化学工業の金川千尋会長は、日本経済のバブル崩壊後も、着実に業績を伸ばし、高収益企業としての地位を揺るぎないものとしました。また、富士フイルムHDの古森重隆会長も、写真フィルム市場が急速に縮小する中、デジタル化、更には医療分野への大胆な事業転換により、会社をピンチから救った立役者です。お二人とも、創業者でも大株主でもありませんが、現代の名経営者として、会社に多大な貢献を果たしてこられました。

中小企業でも、就任後に業績を大幅アップさせたり、企業危機から立て直しを実現したような経営者は少なくありません。

このように経営者として、就任後どのくらいの功績を残したかという点は、非常に重要です。ただし、日本の場合、功績=報酬に直結しない会社が多いことも、事実です。実績の伴わない高給経営者がいる反面、高い実績を実現しているにもかかわらず、社内の序列に阻まれ低報酬に据え置かれる役員も少なくないのです。

(5)企業業績

一般の人から見れば、「企業業績」は最も理解しやすい要素ではないでしょうか。会社の業績が良ければ、報酬を支払うための原資が豊富ということですし、株主や周囲からの納得も得やすいでしょう。

しかしながら、(4)の「経営者としての功績」同様、意外と逆の現象が見られます。日産のカルロス・ゴーン社長が、トヨタの豊田章男社長の数倍の役員報酬というのは、有名な話です。また、赤字続きの会社であっても、高給を取り続ける経営者は少なからず存在します。

このように見てくると、「企業規模」「企業業績」「経営者としての貢献」といった、誰が見ても納得しやすい要素は、役員報酬決定の条件としては有効なものの、それ以外の要素も大きく影響していることが分かります。

「オーナーか否か」「内部昇格か外部からの招聘か」といった要素のほか、「経営者(決定権者)の役員報酬に対する考え方」によって左右されているのです。特に上場企業においては、「創業者(もしくはオーナー)」「スカウト」「外国人」というのが、高給経営者の3要素といえるでしょうか。

(新経営サービス 常務取締役 人事戦略研究所所長 山口俊一=文)