障害高齢者の日常生活自立度|ランクの一覧や状態の目安、介護保険に与える影響とは

高齢の方の介護や支援を考えるうえで、現在の身体機能や生活のしやすさをどのように把握するかはとても重要です。その際に用いられる指標のひとつが、障害高齢者の日常生活自立度です。これは、移動や起き上がりの状態を中心に、日常生活のなかでどの程度自立しているか、どの程度介助が必要かを整理するための指標で、現場では「寝たきり度」と呼ばれることもあります。本人の状態を客観的に共有しやすくなることで、要介護認定やケアプランの作成、施設入所の検討などにも役立ちます。この記事では、障害高齢者の日常生活自立度の意味や評価方法、各ランクの目安に加え、介護保険サービスとの関わりや、状態が悪化したときに家族が取るべき対応までを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)

・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

障害高齢者の日常生活自立度とは?

障害高齢者の日常生活自立度は、高齢者の日常生活における自立の程度を把握するための指標です。ここでは、この指標が何のために使われるのか、寝たきり度と呼ばれる理由、どのように評価するのか、そして認知症高齢者の日常生活自立度との違いについて解説します。

日常生活自立度の目的

障害高齢者の日常生活自立度とは、何らかの障害を有する方について、日常生活の自立の程度を客観的かつ短時間に判定するための指標です。判定基準では、地域や施設などの現場で活用することを目的としており、特に移動に関わる状態像に着目して、自立の程度をランク分けします。健常高齢者を評価対象にするものではなく、すでに何らかの障害がある方の生活状況を把握するための指標として用いられます。

日常生活自立度が寝たきり度と呼ばれる理由

この指標の目的は、高齢の方の状態を共通のものさしで把握し、介護や支援の必要性を整理しやすくすることです。判定基準は、保健・医療・福祉の関係者が広く活用することを想定して作成されており、支援方針の検討や情報共有の場面で役立ちます。評価の中心は何ができるかという能力そのものではなく、実際にどのような状態で生活しているかという点にあります。

日常生活自立度の評価方法

障害高齢者の日常生活自立度は、ランクJ、A、B、Cの4段階で評価されます。評価の中心になるのは、移動や起き上がりの状態、そして日常生活のなかでどの程度介助が必要かという点です。単に病気や障害の重さを見るのではなく、実際の生活の様子に着目して判定することが特徴です。具体的なイメージは下記のとおりです。

ランク 状態の目安 具体的なイメージ

ランクJ 生活自立 何らかの障害があっても、ほぼ自立し、独力で外出できる

ランクA 準寝たきり 屋内生活はおおむね自立しているが、介助なしでは外出しない

ランクB 寝たきり 屋内生活に介助を要し、日中もベッド上での生活が主体だが座位は保てる

ランクC 寝たきり 1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替えに介助を要する

このように、ランクが進むほど日常生活における介助の必要性が高まります。なお、この判定を行う際には、補装具や自助具を使用した状態で評価して差し支えないとされています。つまり、杖や車いす、手すりなどを使って生活している場合には、それらを使った実際の生活状況をもとに判定します。

参照:『障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)』(厚生労働省)

認知症高齢者の日常生活自立度との違い

障害高齢者の日常生活自立度と、認知症高齢者の日常生活自立度は、評価の対象と視点が異なります。障害高齢者の日常生活自立度は、主に身体面、特に移動や起き上がりの状態をみる指標です。

一方、認知症高齢者の日常生活自立度は、意思疎通の程度や、症状・行動による日常生活への支障に着目して判定します。認知症高齢者の日常生活自立度は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Mを基本に、Ⅱa・Ⅱb、Ⅲa・Ⅲbのような区分を用い、家庭外での迷いや金銭管理のミス、服薬管理の困難、徘徊や失禁、大声などの症状・行動も判断材料にします。

参照:『日常生活の自立度』(北九州市)

障害高齢者の日常生活自立度の一覧と目安

障害高齢者の日常生活自立度は、移動や起き上がりの状態を中心に、高齢の方の日常生活上の自立の程度を把握するための指標です。大きくランクJ、A、B、Cに分けられ、数字や記号が上がるほど介助の必要性が高くなります。ここでは、それぞれのランクがどのような状態を示すのか、日常生活の目安とあわせて解説します。

ランクJ(生活自立)

ランクJは、何らかの障害があっても、日常生活の多くを自立して送ることができる状態です。屋外への外出も自分で行えるレベルであり、生活全体としての自立度は高いといえます。介助がまったく不要とは限りませんが、少なくとも移動や基本的な生活動作については、自力で行えることが多い状態です。

このランクには、交通機関を利用して外出できる場合と、隣近所への外出程度は自立している場合が含まれます。日常生活の中心は自立しており、いわゆる寝たきりの状態とは大きく異なります。支援が必要になるとしても、一部の見守りや軽い援助にとどまることが多い段階です。

ランクA(準寝たきり)

ランクAは、屋内での生活はおおむね自立しているものの、外出には介助を必要とする状態です。日中は離床して過ごすことができても、行動範囲は屋内が中心となり、外に出る場面では支えが必要です。

準寝たきりと呼ばれるのは、ベッド上だけで生活しているわけではないものの、活動範囲が狭くなり、自立度が低下しているためです。例えば、食事や排泄などはある程度自分でできても、外出や移動に不安があり、家族や介護者の支援を受ける場面が増えている状態がこれにあたります。日常生活は維持できていても、身体機能の低下が進みつつある段階といえます。

ランクB(寝たきり)

ランクBは、屋内での生活にも介助を必要とし、日中もベッド上で過ごす時間が多い状態です。ただし、まったく寝たきりというわけではなく、介助があれば車いすに移る、ベッドから離れて座位を保つといったことが可能な場合が含まれます。

この段階になると、移動や起き上がりに介助が必要となり、生活の多くの場面で支援を受けながら過ごします。ベッド上中心の生活ではあるものの、座ることはできるため、食事や短時間の離床が可能なケースもあります。介護負担はランクAより大きくなり、見守りではなく実際の介助が日常的に必要になる状態です。

ランクC(寝たきり)

ランクCは、1日中ベッド上で過ごしており、食事、排泄、着替えなど日常生活全般に介助を要する状態です。自力で起き上がることや移動することが難しく、介護なしでは生活が成り立ちにくい段階です。

このランクでは、身体機能の低下がかなり進んでおり、全面的な介助が必要になることが多くなります。ベッド上での体位変換、排泄介助、食事介助、清潔ケアなど、多くの場面で継続的な支援が求められます。いわゆる寝たきりという言葉から多くの人がイメージする状態に近いのが、このランクCです。

高齢者の日常生活自立度が介護保険サービスに与える影響

高齢の方の日常生活自立度は、本人の身体状況や生活上の介助の必要性を整理する指標であり、介護保険サービスのさまざまな場面で参考にされます。要介護認定そのものを単独で決める指標ではありませんが、認定調査結果の一部として扱われ、ケアプランの作成や施設入所の検討でも状態像を共有するために使います。ここでは、要介護認定の一次判定、ケアプラン策定時のアセスメント、施設入所の優先度判定という3つの場面から解説します。

要介護認定での一次判定への組み込まれ方

要介護認定では、認定調査の結果をもとにコンピュータによる一次判定が行われます。一次判定は基本調査74項目などから要介護認定等基準時間を推計する仕組みで、日常生活自立度そのものだけで要介護度が決まるわけではありません。ただし、審査会資料には認定調査結果として日常生活自立度が表示され、状態像を把握する情報のひとつとして扱われています。

つまり、障害高齢者の日常生活自立度は、一次判定の計算式にそのまま独立して当てはめる数値というより、認定調査で把握された身体状況や生活状況を理解する材料として位置付けられます。移動や起き上がりの状態、介助の必要性といった情報を整理することで、認定調査全体の内容を読み解きやすくし、審査会での判断材料のひとつです。

ケアプラン策定時のアセスメントへの活用

ケアプランを作成する際には、本人の生活機能や介助の必要度を把握するためにアセスメントが行われます。そのなかで、障害高齢者の日常生活自立度は、移動能力や離床の状況、日中の過ごし方などを整理するために用いられます。予防給付のアセスメント様式でも、障害高齢者の日常生活自立度や認知症高齢者の日常生活自立度が記載項目に含まれており、支援の必要性を多面的にとらえる材料のひとつになっています。

また、ケアプランでは単に介助量を増やすことだけでなく、本人の自立した日常生活をどう支えるかが重視されます。日常生活自立度を確認することで、現在どの程度の移動や生活動作が可能なのか、どの場面で見守りや介助が必要なのかを整理しやすくなり、サービス内容や支援目標を考えるうえで役立ちます。

施設入所の優先度判定

施設入所の場面でも、日常生活自立度は参考情報として扱われます。特に、入所者や申し込み者の状態把握に要介護度とあわせて、認知症高齢者・障害高齢者の日常生活自立度は、入所の必要性や生活上の困難さをみるうえで、身体面の自立度を把握する指標として用いられていることがわかります。

ただし、施設入所の優先度は日常生活自立度だけで決まるわけではありません。在宅生活の継続がどの程度難しいか、介護する家族の状況、認知症の症状、医療ニーズなども含めて総合的に判断されます。そのため、日常生活自立度は「入所の可否を単独で決める基準」ではなく、本人の状態像を示す重要な参考情報のひとつと考えるのが適切です。

状態が悪化したときに家族がすべきこと

高齢の方の状態が悪化したときは、今の要介護度のままでは必要なサービス量や支援内容が合わなくなることがあります。歩行や移動が難しくなった、排泄や食事の介助が増えた、認知症の症状が進んだ、医療的な対応が増えたといった変化がみられる場合は、要介護認定の区分変更申請を検討することが大切です。区分変更が認められると、状態に合った介護保険サービスを受けやすくなり、本人の生活を支えやすくなります。ここでは、区分変更申請のタイミングと手続きについて解説します。

区分変更申請のタイミング

区分変更申請を考えるタイミングは、心身の状態が変わり、現在の要介護度では実際の生活状況に合わなくなってきたときです。例えば、立ち上がりや移動に新たな介助が必要になった、在宅生活で見守りでは足りず介助の場面が増えた、退院後に状態が変化した、がんなどで短期間に心身の状態が悪化したといった場合は、区分変更申請を検討しやすい場面です。特に、がんなどで状態が急速に変化する方については、区分変更申請が提出された場合に速やかな変更認定が行われるよう周知されています。

また、家族だけで判断するのではなく、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、主治医、入所中の施設職員などに相談し、今の状態が区分変更申請にあたるかを確認することが大切です。要介護認定の申請や区分変更申請は、本人だけでなく、地域包括支援センター、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設などによる申請代行も広く行われています。

区分申請変更の手続き

区分変更申請は、市区町村に対して行います。厚生労働省の事務処理要領では、要介護状態区分または要支援状態区分の変更認定を受けようとする被保険者は、所定の申請書に被保険者証を添付して市町村へ申請するとされています。申請後は、通常の認定申請と同じく、認定調査員による訪問調査と主治医意見書の取得が行われ、その結果をもとに一次判定、介護認定審査会での審査を経て、新たな要介護度が決まります。

手順 内容

手順1:相談 ケアマネジャー、地域包括支援センター、主治医、施設職員などに状態悪化を相談する

手順2:申請 市区町村に区分変更申請を行う

手順3:認定調査 認定調査員が本人の状態を確認する

手順4:主治医意見書 市区町村が主治医意見書を取得する

手順5:審査判定 一次判定と介護認定審査会の審査を経て、新たな要介護度が決まる

申請の際には、最近できなくなったこと、介助が増えた場面、日中や夜間の困りごと、医療的な対応の増加などを具体的に伝えることが重要です。認定調査では、その時点の様子だけでなく、普段の状態を正確に伝えることが認定結果に影響します。

まとめ

障害高齢者の日常生活自立度は、高齢の方の身体機能や介助の必要性を整理するための指標であり、介護の現場では本人の状態を共有するうえで重要な役割を果たしています。ランクJからCまでの区分を見ることで、どの程度自立して生活できているのか、どこに介助が必要なのかを把握しやすくなります。

また、この指標は要介護認定やケアプランの作成、施設入所の検討などにも活用されており、介護保険サービスを考えるうえでも無関係ではありません。状態が変われば、必要な支援の内容も変わるため、日常生活自立度の変化に気付くことはとても大切です。歩行や移動が難しくなった、介助が増えたといった変化がみられたときは、家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや主治医、市区町村の窓口に相談し、必要に応じて区分変更申請も検討しましょう。

参考文献

『障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)』(厚生労働省)

『要介護認定はどのように行われるか』(厚生労働省)

『新予防給付の実施等に向けた準備について』(厚生労働省)

『がん等の方に対する速やかな 介護サービスの提供について』(厚生労働省)

『「要介護認定等の実施について」の一部改正について』(厚生労働省)

『日常生活の自立度』(北九州市)