藤井聡太名人はなぜ「面白い将棋」を目指す?“名人に定跡なし”トップランナーが目指す王者の像

将棋の藤井聡太名人(竜王、王位、棋聖、棋王、王将、23)が糸谷哲郎九段(37)をストレートで下し、防衛4連覇を果たした第84期名人戦七番勝負。激闘の末の防衛から間もない藤井名人が記者会見に応じ、穏やかな笑顔を見せながら今シリーズの総括と自身の思い描く将棋観について語った。
【映像】どうした!? 藤井名人、対局中の“可愛い動き”(実際の映像)
決着局となった第4局は1日目から前例がなくなるなど、力戦が続いた今シリーズ。4連覇を果たした率直な心境を問われると、藤井名人は「急所が掴むのがむずかしい将棋で、苦しくしてしまった場面が多かった。感想戦が終わったばかりで、まだ自分の気持ちの上でも対局の振り返りが少し中心になってはいます」と、勝ってなお盤上に思考を巡らせていることを明かした。その上で、「シリーズとして、序盤から未知の展開になって、その中で一手一手考えるというのは自分にとっても非常に新鮮でもありました。本局でやっぱりちょっと苦しい将棋もありつつ、4連覇という結果を出せたということは素直に嬉しく感じています」と喜びを噛み締めた。
今シリーズは、挑戦者の糸谷九段が序盤から独自の構想をぶつけ、定跡から大きく外れる斬新な展開が続いた。藤井名人は局後に「面白いと感じる将棋だった」と語っていたが、その真意について次のように振り返る。
「最近はやはり定跡系の将棋ですと、駒がぶつかって中盤戦に入ってから考えるということも多いですし、序盤でどういう形で駒がぶつかって戦いが始まるかという点については、ある程度パターン化されている形も多くあります。今回のシリーズに関しては、どういう形で戦いに持ち込むかというところから、そういう構想をどう立てるかというところから一手一手考えるような将棋になったので、やはりその点は新鮮でもあり、またそういった将棋を長い持ち時間の中で考えられるというのは、自分にとっても非常に意義深いことでもあったかなと感じています」

絶対王者として将棋界の最前線を走り続ける中で、最近は再三にわたり「面白い将棋」という言葉を口にしている。理想とする将棋観の変化について問われると、名人の口からは将棋というゲームの奥深さを探求する求道者としての思いが溢れ出た。
「対局はどういう展開になるかというのは当然始まってみないとわからないものですし、どういう展開であっても、やっぱり必ずどこかで未知の展開に入っていくということになります。その中で、自分なりにしっかりと考えていって、将棋の持つ難しさであったり、面白さというのを対局において引き出せたらという気持ちで、最近は臨んでいます」
来期はいよいよ5連覇、つまり通算5期の獲得で得られる「永世名人(二十世名人)」の称号が懸かる大勝負となる。「今までその段階にはない」と語ってきた藤井名人だが、あと1期に迫った現在の心境を問われると、穏やかな表情の中にトップランナーとしての矜持と謙虚さをのぞかせた。
「やはり永世名人は重みのある称号だと感じているので、それを目指すという形にできたので、それまでに少しでも実力を高めていければと思っています。『名人に定跡なし』という言葉もありますけれど、今回シリーズでそこまで力戦形の将棋を指して、自分はまだそういった域ではないかなというのも正直感じたところもあるので、やはり、より少しでも今より強くなって、また来期臨めたらなと思っています」
盤上の未知なる世界を楽しみ、将棋の面白さを引き出す。偉大な記録の数々を打ち立ててもなお「まだその域ではない」とさらなる高みを目指す藤井名人の瞳には、すでに次なる進化の青写真が映っているのかもしれない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
