海自もホルムズ海峡へ?「機雷の除去」じつは“無人化”が進行中 見直される“一網打尽”方式とは?
ホルムズ海峡に機雷、海自派遣を本格検討か
2026年4月24日付の時事通信は、日本政府と政府与党が、海上自衛隊の機雷掃海部隊を派遣することが可能かどうか、本格的な検討に入ったと報じました。
【もちろん無人】これが最新の「対機雷戦」です!(画像で見る)
2月28日にアメリカとイスラエルがイランを攻撃したことから、イランは対抗措置として原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖。アメリカも対抗措置としてイランの港湾封鎖を実施した、中東から日本を含めたアジア太平洋への原油輸送には滞りが生じており、私たちの生活も支障を来しつつあります。
アメリカのニュースサイト「アクシオス」は4月23日、アメリカ当局者らの話として、イランの革命防衛隊が今週に入って海峡に新たに20基以上の機雷を敷設したと報じています。明確にはなっていないものの、おそらくイランは数十基以上の機雷を、ホルムズ海峡に敷設しているものと考えられます。
そこで、アメリカ海軍は佐世保海軍基地に配備しているアベンジャー級掃海艇2隻を中東に派遣しましたが、本格的な対機雷戦能力を持つアベンジャー級は、佐世保から中東に出動した2隻を含めて4隻しかなく、アベンジャー級の後継と目されていたLCS(沿海域戦闘艦)に搭載する対機雷戦パッケージは、本格的な対機雷戦を行うには能力が不足しています。
高市早苗首相は3月25日に行われた参議院予算委員会で、「交戦中の機雷除去は機雷敷設国(この場合はイラン)に対する戦闘行為とみなされるため、できない」と説明しており、「現時点では何も決まっておらず、今後は法律にのっとり判断し、決めていく」と述べています。
ただ、前に述べたアメリカ海軍の対機雷戦能力や、日本の中東原油への依存度などを鑑みると、戦闘終結後のホルムズ海峡における機雷除去のために、海上自衛隊の機雷掃海部隊を派遣する必要は高いと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
「掃海」と「掃討」どう違う? 再認識される“一網打尽”手法
海上自衛隊は最近まで「掃海」という言葉を使用していたため、日本では報道やニュースでは機雷除去の意味で「掃海」とよく用いられますが、外国では「対機雷戦」(Mine Counter Measure)と呼ばれています。

「MINESWEEP GATHERING 2026」で行われた「掃海器材無人展開システム」のデモンストレーション(画像:ヘンリクセン)
対機雷戦には「機雷掃討」(Mine Hunter)と「機雷掃海」(Mine Sweeping)という2つの手法があります。前者は、ソナーや水中航走機雷検知機を用いて機雷をひとつひとつ探知し、水中機雷処分機や水中処分隊員により爆破するものです。後者は、敷設された係維機雷のワイヤーを切断し浮上させて機銃などで爆破したり、船舶の磁気や音響などに反応する感応機雷に対し磁気や音響、水圧などを模擬するシステムを使用して誘爆させる方法です。
海上自衛隊は第二次世界大戦時に敷設された機雷を処理した経験が豊富なため、特に後者(掃海)の技術には定評があるのですが、近年は敷設される機雷の高性能化と、それに対抗するため開発された高性能水中航走機雷探知機や自走式機雷処分用爆雷などの無人プラットフォームを用いた機雷探知、処分能力の向上と普及により、機雷掃討システムの優先度が高まっています。
一方、機雷掃海システムは機雷除去の確実性が低いと考えられるようになったため、多くの海軍において関心が低下していました。しかしながら、この傾向にも変化が生じつつあるようです。
ひとつは近年、機雷掃海の各構成品の性能が大きく向上したことが挙げられます。また機雷を一つずつ除去する機雷掃討は広範囲で機雷数が不明な機雷原の場合、無力化に時間がかかることから、機雷掃海を併用する重要性が再認識されつつあります。
2026年4月22日と23日の両日、ノルウェーで対機雷戦装備を手がけるヘンリクセンと、ノルウェー防衛研究所、そしてフィンランドのパトリアが主催する対機雷戦国際会議「MINESWEEP GATHERING 2026」が開催され、実際に機雷掃海システムを運用している国々の海軍関係者などが集まりました。この会議でも無人化を含む近年の機雷掃海システムの能力向上や、機雷掃海の将来にわたる有効性が改めて確認されました。
「無人掃海システム」という選択肢
現状ではイラン紛争終結後、海上自衛隊の対機雷戦部隊がホルムズ海峡に派遣される可能性が高いと思われますが、これは法的制約の面を除いても簡単なことではありません。
海上自衛隊は2026年4月現在、掃海艇を13隻、掃海艇より大型の掃海艦を4隻保有しています。ただ掃海艇、掃海艦ともソマリア沖で海賊対処を行っている護衛艦に比べて小型で速力も低く、展開までに時間を要しますし、展開後に過酷な環境で任務を果たすことは、艦艇にも乗員にも大きな負担を強います。
前に述べたMINESWEEP GATHERING 2026では、EU(ヨーロッパ連合)が開発資金の一部を負担し、10か国以上の国の企業が参加して2029年末の完成を目指す自律型無人掃海システム「ユーロスウィープ」(Eurosweep)が紹介されています。
今回のホルムズ海峡危機には間に合わないかもしれませんが、日本はホルムズ海峡などにも近いアフリカのジブチに、半恒久的な基地を置いています。ユーロスウィープのような無人掃海システムを日本が導入してジブチに配備し、海上自衛隊や同盟国・同志国が共同利用できる仕組みを構築することができれば、日本国の存立安全性が高まるだけでなく、国際的なプレゼンスも高まるのではないかと思います。
