退団が決定しているグリーズマンは有終の美を飾れるか。(C)Getty Images

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「我々にはタイトルが必要だ」――。ディエゴ・シメオネはここ数か月、公式会見の場でも、そして記者とのオフレコの場においても、そう繰り返してきた。だからこそ、レアル・ソシエダとのコパ・デル・レイ決勝後、ラ・カルトゥーハの会見場に現れた指揮官は、敗北(2−2、PK3−4)の痛みを飲み込みながら冷徹にこう言い放った。

「ファンが必要としているのはメッセージではない。勝利だ」

 アトレティコにとって今回のコパ決勝は、2020-21シーズンにラ・リーガを制覇して以来、5年近く続く無冠の沈黙を破る最大のチャンスだった。チャンピオンズリーグ(CL)でバルセロナのような巨人を倒すことは多額の分配金と名声をもたらすが、クラブが全階層を挙げて切望していたのは、何よりも「タイトル」という形のある証だった。

 シメオネ政権下でこれほど長く栄冠から遠ざかったことは一度もない。国内リーグの優勝争いからとっくの昔に転落した彼らに残されたカードは、CLという名のたった一発の予備弾倉のみだ。しかし、準決勝の相手はアーセナルであり、その先にもバイエルンやパリ・サンジェルマンといった強豪が控える現状、その道のりの険しさは今後一層高まることは明白だ。

 昨シーズン、CLラウンド16でフリアン・アルバレスの“ダブルタッチ”PKによるゴール取り消しが決定打となり、レアル・マドリーに敗れた(2−2、PK2−4)ショックから立ち直れず、その後のわずか3週間でラ・リーガとコパ、残るすべての希望を失った「失敗の記憶」が今、再びチームの脳裏をよぎる。
 
 決勝の内容を精査すれば、後半から延長にかけてはアトレティコが攻勢を強め、バエナやジョニー・カルドーゾが終盤の決定機を活かしていれば、あるいはフリアン・アルバレスの豪快な一撃がバーを叩かずに吸い込まれていれば、ソシエダを退けていた可能性は十分にあった。

 しかし、シメオネや選手たちの心にあるのは、そのような「たられば」よりも、あまりに不甲斐なかった前半のパフォーマンスへの拭い去れない憤りだ。マルコス・ジョレンテが「前半をゴミ箱に捨ててしまった」と断じたが、とりわけ今シーズンのアトレティコを象徴する守備の不安定さという持病が、最も重要な舞台で再発した形となった。

 ナウエル・モリーナとジュリアーノの連係ミスを突かれ、ロングパス一本でサイドを破られコパ決勝史上最速の開始14秒に喫した先制点。そして、守護神フアン・ムッソの不用意な飛び出しから招いたPKによる2点目。これらはシメオネ自身が「今は守備より攻撃の方が機能している」と認めざるを得ないほど、かつての堅守アトレティコの面影を奪い去っている。

 この痛恨の敗戦という深い傷から立ち直るため、コケ、ジョレンテ、そしてアントワーヌ・グリーズマンといった重鎮たちは、SNSを通じて沈み込むファンとチームを鼓舞し続けている。

 今シーズンのアトレティコの命運は今、CLという欧州最高峰の戦いにおいて、剝き出しの「オール・オア・ナッシング」の淵にある。

文●ラディスラオ・ハビエル・モニーノ(エル・パイス紙アトレティコ・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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