アジアの海峡、海賊による凶悪犯罪が減少 ドローン、サイバー攻撃が新たな脅威に

アジアの海域で海賊による船舶ハイジャックや乗組員への傷害といった凶悪犯罪が減少している。日本が主導し発効から2026年で20年のアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有や、関係国の取り締まり強化が背景にある。一方でドローンやサイバー攻撃といった新たな脅威への警戒が必要となっている。(共同通信シンガポール支局=本間麻衣)
シンガポールから南方の海を眺めると、大小無数の船が水平線のかなたまで続いている。インドネシアとの間に挟まれたシンガポール海峡。北西にはマラッカ海峡が続く。シーレーン(海上交通路)の要衝だ。中東から日本へ原油を運ぶタンカーの多くも両海峡を抜ける。イランによる事実上の封鎖が問題となったホルムズ海峡を通過し、インド洋を横断した後の最短航路となる。
シンガポールに拠点を置くReCAAP情報共有センター(ISC)によると、アジアの海域で2025年に起きた海賊事案や強盗は未遂も含め132件。2024年から23%増えたが、乗組員を負傷させるような凶悪犯罪は少なく、エンジン部品の窃盗などが多かった。大半がシンガポール、マラッカ海峡で発生した。
両海峡には小さな島々が点在、船舶が針路変更のため速度を落とす場所があり、かつては海賊多発地帯として知られた。2000年には300件以上が確認された。1999年に日本人船長らの貨物船が襲撃されたほか、2005年には日本船籍のタグボートの船長ら日本人2人を含む乗組員が一時、連れ去られる事件もあった。
日本が2001年、海賊対策で地域協力を促進する法的枠組み策定を提案し、2006年に協定が発効した。船舶が被害に遭った場合にISCを中心に関係国や船会社と情報を共有する仕組み構築や、関係国の法執行能力向上の面で連携を強化してきた。
船舶のハイジャックなどISCが最も深刻とする区分は2021年以降2件のみ。あるISC職員は「危険度は下がった」と分析する。協定参加国はアジアにとどまらず米国、オーストラリア、英国など21カ国に拡大した。
ISCのオランダ代表マルタ氏はシンガポールで2026年3月中旬に開かれた協定発効20年記念シンポジウムで、ドローンやサイバー攻撃を活用して船の航行を妨げる新たな犯罪が発生する恐れを指摘。「これらは今後、より大きな脅威となってくるだろう」と対策強化を訴えた。



