一般社団法人栃木県猟友会の公式Xより

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北海道砂川市で2018年8月、銃刀法違反などの疑いで書類送検された道猟友会砂川支部長の池上治男氏が7年の時を経て、最高裁で勝訴した。池上氏は当時、ヒグマ出現の知らせを受けた砂川市の要請を受けて現場に出動。市職員から駆除を依頼され、ライフル銃を1発発射してヒグマに命中させた。建物に向けて発射したとの理由で道公安委員会に銃所持許可を取り消されたが、取り消しは違法だとして池上氏は道を相手取り、処分の取り消しを求めていた。

池上氏はヒグマを仕留めたその後、砂川署(現・滝川署)から銃刀法違反などの疑いで書類送検されたが、不起訴処分となった。しかし、道公安委は2019年4月、銃弾が到達する可能性のある場所に建物があったとして、銃所持の許可を取り消した。この処分を不服として札幌地裁に提訴し、一審では実質全面勝訴の判決が言い渡され、処分の撤回が命じられた。

しかし、公安委の控訴で争いは札幌高裁へ移り、二審は一転して原告敗訴。これを受けて、池上氏は最高裁に上告せざるを得なくなる。そして先月27日、札幌地裁は「著しく妥当性を欠くもので違法だ」として公安委の処分を取り消した。

完全勝利の判決後、会見に応じた池上氏は「裁判長が私の気持ちを全面的に代弁してくれた」と安どの胸をなでおろした。猟友会砂川支部では、この件を境に駆除を自粛するムードが広がり、これまで銃によるヒグマ駆除は行われていなかったことについて「自治体や警察と連携して地域のために活動してきたのに、不当に処分を受けた。全国の猟友会の今後にも関わると思って裁判を起こした」と説明。敗訴が確定した北海道公安委員会は同日、初めて公式なコメントを出し、謝罪の意を示した。

戻らぬ猟銃

ところが喜びも束の間、思いもよらぬ展開で再び池上氏は奈落の底に突き落とされる。押収されていた猟銃のうち、ヒグマ駆除に使用され、許可取り消しのきっかけともなった銃が、あろうことか捜査機関に「廃棄」されていたというのだ。この事実を知らされた今月中旬、池上氏は「検察が銃を廃棄してたと。理由は、私が廃棄に同意したからだって。何をか言わんやだ。一貫して『銃を返してくれ』と言い続けて裁判まで起こした人間が、廃棄に同意なんてするわけないでしょう。終わってるよ、警察も検察も」と怒りをぶちまけた。

実はその銃こそ、池上氏にとって特別な意味を持つ銃だった。2017年春、若くして亡くなった登山家であり猟師の知人から託されたライフルだという。病床の友が最後の面会時に「使ってくれないか」と託され、「人のために役立たせてもらう」と約束を交わした“魂の銃”だといい、返還が全てであった。

銃を保管しているという札幌地検によると、廃棄の理由は「所有権放棄書へ署名をもらった」ためと回答。これに、池上氏の代理人弁護士が「所有権放棄書」の閲覧を求めると、「不起訴記録なので閲覧・謄写はできません」とし、池上さんが放棄に同意した時期や実際に破棄された日付については「お答えできない」としている。

今月、この経緯を伝えたニュースサイト「弁護士ニュースドットコム」のコメント欄にはあまりにも理不尽な警察の対応に怒りの声が寄せられた。また、行政訴訟の代理人・中村憲昭弁護士は「警察の異常な処罰感情」を指摘し、「捜査機関の『絶対に返さないぞ』という強い意志が垣間見えるようだ」と同サイトは報じている。

近年、全国各地でクマの出没が相次ぎ、ハンター不足が問題となっている。人々の安全のためにクマを駆除しても“言いがかり”を付けられ“ワッパ”をかけられてはたまったものではない。廃棄した銃については詳細を明らかにし、不当な処分とともに相応の補償をするべきである。